今回はある友人の能力が発覚します。
ヒント、ヤの付く人です。
友人の能力
side Toya
「......暇だな」
「平和でいいじゃないですか。ご主人様」
紫は昨日の説教で拗ねてしまい、幻想郷へ帰っている。藍の話によれば自己嫌悪しているらしい。レミリアとフラン、咲夜は屋敷が心配ならしいので帰しておいた。そういうわけで式のアマノと何をするでもなくダラダラとした時間をすごしている。
「それはそうなんだが、暇な時間は嫌いでな。じっとしていると落ち着かない」
小さい頃からの労働生活で構成されたこの性格。どのような時間であっても、何もせずにすごすのは勿体無いと思ってしまう。だが、今日はバーゲンセールもやってないので出歩こうとは思わない。
「貧乏性ですね」
「金ならあるんだがな」
少なくとも俺は貧乏ではないと思う。親の残した保険金がほぼ手付かずで口座に眠っている。
「性格がですよ。ご主人様はもう少しお休みになられたほうがいいと思います」
「そういうことか。休みならしっかり取ってるだろう」
一日の内、3時間は自分の時間を確保してある。平日であってもだ。休日でも四人の相手がほとんどだが。
「だから違いますって。偶の一人の時間なんですから、どこか遊びに出かけてはどうです、という事を言いたいんです」
...どこかに遊びに、か。考えたこともなかったな。
「そうは言っても、どこか行くアテがあるか?」
友人と言っても、涼子、隆二、藤原の三人だけだ。涼子は歩いて数分とかからない近所だが、家が少し近寄りがたい雰囲気だから却下。隆二はこの上ないトラブルメーカーだから自分から近寄ろうとは思わない。藤原は家が遠いので面倒くさい。買い物もしばらく行く予定はない。
「藤原さんと美鈴さんの様子を見てきたらどうでしょうか」
「いや、下手に俺が介入して紫の思うとおりの実験データが取れなければ困るだろ」
第一、見ようと思えばここでスキマを開いていつでも見れる。わざわざあいつの家に出向くなんて非効率的なことはしたくない。月に一度の楽しみの焼き鳥は以前バーゲンセールのついでに買ったので来月まで買わない。
「では、涼子さんの家に行くというのはどうでしょう。きっとにぎやかで楽しいと思いますよ?」
「却下だ」
一番行きたくないところを提案するな。それでも俺の式か。
「もう遅いです」
「やっほー! 遅いからこっちから迎えに来たよー!!」
玄関から聞こえてきたのは涼子の声。
「......アマノ」
「はい、なんでしょう」
能力を使って家具と自分をを固定。
「鳥になって来い」
「え? どういう」
スキマを開いて上空8000mに直接繋げる。気圧の差で空気がかなりの勢いで吸い込まれ、悲鳴を上げる暇すらなくアマノも一緒に吸い込まれていった。
「お嬢がわざわざ迎えに来たってのに待たせてんじゃねえ!」
玄関から威勢のいい声が聞こえてくる。これだから行きたくなかったのに。アマノの阿呆め。
「あ~、今出ますよ」
居間を出て玄関へと向かう。予想したとおり、やはり涼子と軍人のような鍛えられた肉体が特徴の辻組の組員が居た。
「あれ? アマノちゃんは?」
「上空8000mからのフリーフォールを楽しんでる」
あの馬鹿が勝手なことをしてくれたせいで、俺にとっては鬼門の辻家へ出向かないといけなくなった。戻ってきたらどうしてやろうか...
「それじゃ、黒やん、私の家に行こうか」
「そうだな」
大人しく涼子の後ろをついていく。前に一度逃げたことがあるが、そのときには翌日家の前に黒塗りのベンツが止まって涼子が組員を何人も連れて遊びに来た。恐ろしかった。あれはトラウマだ。
「おいガキ。お嬢に手ぇ出したら指詰めるから覚悟しとけよ」
サングラスを少しずらして睨んでくる。俺はそんなに女誑しに見えるのか?
「出す分けないだろ」
俺は婚約者がいるし、もし居なくても手は出せない。俺以外でも恐ろしくて誘われても手を出さないだろ。
「左野、黒やんには婚約者がいるからその心配は要らないよ」
「お嬢がそう言うなら...」
屈強そうな男を一発で黙らせるなんて......お前はどれだけ発言力が強いんだ。
「一応言っとくけど、私は一般人だからね~」
俺の先を歩く涼子が振り向きながら言う。極道の娘なのに一般人を自称するか。常識外れにもほどがあるぞ。
「高校卒業して父さんから組を継ぐまでは一般人だよ」
「そうです。お嬢は学校を卒業し、頭から正式に襲名なされるまでは、完璧な! 『一般人』なので「待て、どこが完璧な一般人だ」
一般人じゃなくてアウトローだろう。何処からどう見ても完璧なアウトローだろう。一体何処に一般人らしさがある。
「お嬢の言うことに納得できねえってのか? あ?」
「できるわけがないだろ」
真正面から睨みあう。俺は自分の納得できないことはとことん否定する人間だ。
「上等。だったら戦争じゃボケ」
白昼の公道で堂々と長ドスを抜いて構える左野という男。一般人...ではないが、堅気にそんなもの向けるか普通。
「黒やん、族を一人で潰すような奴堅気とは言わないよ」
「そうか?」
三歩の距離を一歩で詰め、ドスを振られるよりも早く拳を腹にめり込ませる。武器を持った相手への必勝法は、敵の得物が最も苦手とする間合いに一瞬で入り込み、一撃で急所を抉ることだ。
「グホ...」
気絶した左野さんを肩に担ぎ、ドスを鞘にしまって涼子の方を向く。
「涼子、自分のところの組員くらい躾けしておけ。堅気に刀を向けさせるな」
「だって黒やん堅気じゃないって教えてあるし」
あっさり言うな。それ以前に教えるな。
「妖怪と吸血鬼とメイドを婚約者にしてる時点で一般人じゃないし、それ以前にドスを持った相手に怯まずに一撃で仕留める堅気なんてどこにも居ない」
「裏社会に手を染めてない奴を堅気というんじゃないのか?」
俺は少なくとも法に触れるようなことはしていない。つまり堅気といってもいいはずだ。
「黒やん。一つだけ警告しとく」
涼子がいつになく真剣な表情でこちらに声をかけてきた。
「妖怪や吸血鬼なんて裏社会のさらに裏側なんだよ。もしも法王庁や悪い裏の奴らにばれて、そういうの専門の退治屋が動いたら確実にこの町が戦場になる。私はこの街の裏を束ねる家の娘。この街がバラバラになるのは避けたいのよ」
「お前がそんなことを知っているとは、驚きだ」
確かにそういう機関があることは知っている。だが、涼子が知っているとは思わなかった。流石、かなりの規模で裏に進出しているだけある。
「陰陽師はともかくヴァチカンには絶対にばれないように。妖怪とかはともかく吸血鬼にはかなり敏感らしいから」
「その心配はしなくてもいい。手なら既に打ってある」
既に町のあちこちに紫と協力して、能力をフル活用した絶対の認識の拒絶の術式の基点を設置してある。幻想を保護するのではなく、あるのにないと認識を強制的にずらす術式だ。最上級の術師でもない限り見つけることは不可能。
「なるほど、学校に設置してあったのがその手ってわけ?」
「.....」
能力をフルに使用して作り上げた、あの紫ですら注意しなければ見落とすほどの完成度の術なのに、それを見つけるなんて...化け物か。
「まあ、このまま立って話をするのもなんだし、中に入ろう」
「そうだな」
左野さんを下ろして門を潜り、広大な敷地の中に存在する純和風の巨大な屋敷へと入る。玄関を通り抜け、中の客間へと案内される。
「とりあえず、なんで私が術を発見できたかを教えてあげようじゃないの」
急にそんな事をのたまった涼子。たしかに興味はあるな。
「まあ、説明は面倒くさいから飛ばすよ。術を見つけれたのは、『何か』を『見る程度の能力』のおかげ」
「いつ能力が発動した」
「幻想郷に行った時に魔法の森に落とされたでしょ? その時に森の空気に中てられて気絶。んで、アリスちゃんの治療の魔法のおかげで回復。森の空気とアリスちゃんの魔力が体の中でみょんな反応を起こして、眠ってた能力の素質が刺激されて、帰ってきたらやたらとものがよく見えるようになった。それだけだよん」
...見る程度の能力か。透視能力か千里眼か。そのほかにもあるが、いったい何だ。
「ちょっと使ってみてくれ」
「ん、いいよ」
涼子が一度目を閉じて開くと、そこには元の茶色っぽい黒の瞳ではなく、空の蒼よりもさらに深い色の蒼があった。
「魔眼の類だな。悪いが知識がないからどういう種類かは言えない。パチュリーに聞いてみればわかると思うが、制御はできるな?」
もしも制御ができないのなら、俺が手を加えないといけない。魔眼の封印方法は知らないんだがな...
「任意でオンオフはできるよ」
「ならいい。どんなものがどういう風に見えるか教えてくれ。あと見たときにどんな反動があるかもできる限り詳しく」
色だけで判別ができるのなら楽そのもの。視界に入れたものに何らかの影響を及ぼすものであったり、見えるものに触れることで効果を発揮したり、魔眼の種類は本当に様々なのもがある。らしい。
「う~ん...薄ぼんやりと色が見える。なんかこう、オーラみたいなの? 黒やんは奇麗に紅、紫、青、黒に分かれてる。湖面みたいな静けさがあるようなオーラ。あと副作用とかはない」
......オーラ? 霊力とかそういうものか?
「わかった。今度戻った時にパチュリーに聞いておく」
俺も少し気になる。自分で探すのもいいかもしれない。
side out
~没ネタ~
「どんなものがどういう風に見えるか教えてくれ。あと見たときにどんな反動があるかもできる限り詳しく」
「う~ん...黒い線と点があちこちに見える。黒やんは極端に薄くて少ないけど、それでも何本かある。あと、床にも壁にも天井にも。見てるとものすごく頭が痛いし、気持ち悪い。吐き気と割れるような頭痛だね」
「......涼子、少し心当たりがある。最悪の魔眼だ」
「どんなの?」
「パロールの魔眼。別名、直死の魔眼」
「マジ?」
「マジだ」