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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
今回からはしばらく外の話が続きます。オリジナルキャラだけでなく、もちろん幻想郷のキャラ達も出します。
今回は奥さんズ以外は出ませんが、次回からは...
学校 文化祭準備編
side Toya

 今日は土曜日。いつもなら幻想郷でゆっくり過ごしている曜日だが、今日は少し文化祭のことで集まりがある。ただ集まるだけなら別に俺一人程度サボってもどうという事はないのだが、残念なことに先週テストが終わってさっさと帰ったときにいつの間にか俺が実行委員長に決定されていた。しかも同意無しで。

「そんな顔すんなよ。さっさと決めれば役割からも開放されるんだ。頑張れリア充負けるなリア充」
「隆二、俺は別に嫌とは言ってない」

 嫌ではないのだが良くもない。せめて俺の同意を得てからという考えはなかったのだろうか。

「去年も一昨年も本人の同意無しで決めてたんだ。今更文句言うなよ」
「文句は言ってない。それじゃ始めるからとりあえず席につけ」

 俺の目の前をフラフラと動き回る隆二を席に戻させる。

「不本意だが実行委員長になった黒羽だ。とりあえず本来なら色々と挨拶すべきなんだろうが面倒だから省略する。わかっているとは思うが、学校生活最後の文化祭だ。各自心残りのないように取り組め。ただし先生に注意されない程度に限る」

 俺が前に立つと全員が静まり返るのはどうにかしてほしい。慣れてはいるがあまり気分のいいものではないからな。

「とりあえず、今年やる事についてだが、なにか新しい事をしたいとかどれをどうすればもっと良くなるとか、そういった意見があれば遠慮せずに言え」

 と、言って毎年手を挙げるのが数名いる。なので近い場所から当てていくことにする。

「七市」

 教卓の丁度正面に座っている髪を茶色に染めてワックスで立て、制服を着崩している不良を指名する。どうせ言う事はわかってる。

「バンドの時間を長くして欲しいッス」
「却下。バンドの時間については毎年生徒総会にも出ているが必ず却下されている」
「ッチ......」

 舌打ちをして明らかに不機嫌そうな態度を取るが、まあどうせ先生にも同じ態度を取っているし、無視しよう。

「次、藤田さん」

 七市の右となりに座っている女子生徒。まあごく普通の女子。特筆すべき点はなし。

「えっと、皆で描いた絵の展示とかはどうかな...?」

 絵の展示。美術部が毎回やっているが、それではダメなのか?

「美術部が毎年やっていますが、それとはまた別に、ということでしょうか」
「そうです」
「では先生方に提出しておきます。通ればまたアンケート用紙を配りって全員の意見を取り、採用か不採用かを決定します。それでよろしいですか?」
「はい」

 絵画ね......紫、フラン、咲夜はともかく、レミリアがカリスマを発揮しようとして失敗しないかどうか心配だ。

「他に意見は......無いな。それじゃこれで「ちょっと待てゐ!」どうした隆二」

 いきなり机の上に立つという奇行をしてみせた隆二に視線を向ける。

「俺が手を挙げていただろう!」

 どうせ碌なことじゃないから無視してたが、一応聞いてみるか。

「じゃあ言ってみろ」
「メイド喫茶。に対抗して執事喫茶」

 隆二にしては......意外と、まとも。なのか?

「それは学年の出し物としてまた後で聞く」
「うーい」
「他にはいませんか」

 ざっとクラスを見渡したところ、挙手をしている者は一人もいない。まあこんなものだろう。

「それではクラスの出し物に移ります。とりあえず隆二」
「メイド喫茶に対抗して執事喫茶」
「ざけんなゴラー!」「メイドだろjk」「執事とかダリーよ」

 等々、次々とクラスの男子からブーイングが飛ぶ。まあ、女子を目当てにしている輩も少なくはないだろうし、それは当然の反応といえばそうなる。実際俺もフランとレミリア、紫のメイド服姿を密かに楽しみにしてたりもする。咲夜のメイド服姿は見慣れている。というかそれ以外の服装を外以外で見たことがない。とりあえず二番目の奴。それは死語だ。

「何に対抗しているのかが全く理解できんが、とりあえず案の一つとしては保留にしておく。他に意見がある人は挙手をお願いします」
「はい」
「岡野さん」

 ごく普通の何処にでも居る、顔は少しいいが体形が非常に残念な女子生徒。もっとも、いくら体形がよかろうと紫達には敵わんが。

「去年と同じでメイド喫茶」
「メイドさん萌え......」
「とりあえず黙れ隆二。そしてピナツボ火山の火口に投身自殺してくれればなおよしだ。では岡野さん、それも案として取っておきます。他には......面倒くさいからこれで締め切る」

 先生もいないので多少の無茶は許されるだろう。どうせ他の意見は出たとしても落とされるだろうし、俺の独断で行う。

「他に意見は無いようなのでこれでお終いにする。それでは次に移る」

 決定する内容をメモしてある紙を見る。書かれている内容によると、次は文化祭のメインイベントとも言える各学年による劇。その劇を作る人の決定だ。それなりに責任感のある奴を選びたいところだが...残念ながらこのクラスは揃いも揃って微妙な奴ばかりだ。だがまあ一応聞かなければならないので、聞いておく。

「劇の責任者、やりたい人は挙手をお願いします。居ない場合は私が推薦するので」

 まあ、聞いても居るわけはないので......

「咲夜、頼む」
「わかったわ」

 とりあえず大抵のことは咲夜に任せておけば安心だ。出来ないことを数えるほうが早いほど優秀なメイドとしての一面もあるしな。

(以下略......)

「さて、今年の文化祭はこれでいいでしょうか。意義のある人は挙手願います」

 学年での出し物は、クラスの過半数を占める女子の賛成多数によって執事喫茶。とりあえずどこかから隆二の監視役を引っ張ってこないといけない。あいつを放っておけば客が減る。その他は、責任者を適当に決定して終了。

「それでは、今日は解散。起立、礼」

 挨拶をするとクラスの雰囲気が一気に緩むのはいつものこと。さあ、家に帰るとしよう。帰ったらまずは掃除と洗濯か?

side out

side Hujiwara

 俺は今、非常に困惑している。なぜかというと、俺の下駄箱の中にかわいらしい封筒が入っていたからだ。

「これなんてテンプレ?」

 とりあえず裏を見るが、To Hujiwaraとだけ書かれていて差出人は不明。ちなみにこの学校で藤原の苗字は俺だけだ。人違いではないのだろう。表をもう一度見るが、やはり何も書いていない。誰かのイタズラだろうか。だが、イタズラにしては色々と不自然な点がある。まず、鼻腔をくすぐる甘い香水の香り。そういったことには詳しくはないが、明らかに女物の香水の香りだ。男物の香水はもっとこう、なんというか下品な甘ったるさが感じられるのだが、これにはそれがない。ついでにいうと結構上等な香水だろう。

「ムムム......とりあえず開けてみるか」

 もしかしたら名前を書き忘れただけかもしれないし、何が目的で手紙を放り込んだのかもわかるはず。

『屋上に来なさい』

 ......この角の取れた丸い字は、明らかに女の筆跡だよなぁ......そうなると俺に何かしらの用がある女子が屋上で待っていると?

「結局名前は書いてないのな。ま、いいか。行きゃわかるよな」

 とりあえずブスでないことを祈ろう。どんな用事であろうとブスとの接触は嫌だ。できることなら可愛い子がいい。そうでなくとも普通の子であることを祈ろう。

 そんな感じで屋上を目指して階段を上る。そして、カギのかかっているはずのドアを開いて屋上へ出る。

「あ、やっと来ましたね」
「......」

 よし、俺は何も見ていない。ドブスの顔など見ていない。妖怪のほうがまだマシな、非常に形容しがたい醜悪きわまる顔など見ていない。さあ、家に帰って焼き鳥を作ろう。
 そんな感じでドアを閉めて立ち去ろうとしたその瞬間!

「待ってくださいよ」

 妖怪もびっくりなスピードでこちらに迫ってきたドブス。とりあえず今すぐにこの場から逃げ去りたい。

「な、何のようだ?」
「何のようか?決まってるじゃないですか先輩。屋上にあこがれの先輩を呼び出してすることなんて一つだけですよ」

 ...非常に恐ろしい事になりそうだ。こんなドブスに告白なんてされたら、ゲシュタルト崩壊を起こして廃人になる。そんなのは御免だクソッタレ。

「御柱」

 小さく呟いてバット程度の大きさの御柱を作り出してスイングの体勢に入る。

「すk「ホームラーン!!」嗚呼...星が見える」

 二文字目は言わせねえ。そんな強固な意志を持ってフルスイングされたバットは、見事にドブス女子の顔面に直撃し、その女子生徒を晴天の星に変えた。そんな俺は悪くない。決して悪くない。正当防衛だ。あと何か妙なセリフを吐いたような気がしたが、気にしないで置こう。 

「ナイス俺としか言いようがないな。流石俺だ」

 本当は『汚物は消毒だー!』ってやりたかったんだけど、流石にマスパはダメだよな。跡形もなく消し飛ぶし。

「さあ、家に帰って焼き鳥を作ろう」

 藤原流斗の平穏な生活はとうの昔に壊れているが、新しい平穏を求めてもいいよな。

side out