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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
ある平和な一日
side Hujiwara

「朝よ。さっさと起きなさい」

 目が覚めるとそこには、少しご機嫌斜めな様子の幽香様がいた。しかも冥土服を着て。

「...夢だな。もう一度寝よう」

 こんなのはありえない。あのUSCがメイド?ありえない。絶対にありえない。あの幽香様がメイド服を着て俺を起こしに来るはずがない。そういうわけでこれは夢だ。夢に決まってる。

「永遠に眠らせて欲しいならそのまま寝なさい」
「申し訳ありませんでした!」

 布団を跳ね除けて飛び上がってそのまま床に土下座する。流石の俺も死にたくは無い。それが例え夢であろうとも。

「...調子狂うわね。私はメイドであなたが主人って話なのに」
「俺にそんな器量は無い!」
「そういう事は自分で言うものじゃないと思うわよ?確かにその通りだけど」

 流石は幽香様、言葉責めまでマスターしていらっしゃるとは。しかも持ち上げて落とすだなんて高等な技までマスターしているとは。

「とりあえず、朝食は作ってあるからさっさと下りて食べなさい」
「...ああ、なんてすばらしい悪夢だろう。さっさと覚めて欲しいぜ」

 冷や汗が滝のように流れる。日常生活の上でこんな経験をすることなんてまず無いだろう。

「痛い痛い痛い!やめてくれ頼むから!」
「わかったかしら?これは夢じゃなくて現実よ」

 ゲシゲシと踏みにじられる。なんで俺ばっかりこんな目に...てか現実だって事はわかってたよ。受け入れることを拒否してただけだ畜生。

「冷めない内に食べてきなさい」
「へ~い...」

 朝から精神的ダメージが大だぜ...黒羽、恨んでやるぞ畜生。でも、今思えばかなり役得じゃね?あの風見幽香様をメイドにできるだなんて、他人に大いに自慢できることだ。

「妬ましい。俺と変われ!」
「神妖混合『マスタースパーク』」

 どこからか侵入してきた変態(隆二)を全力で消し飛ばした俺は悪くないはず。精神的プレッシャーが恐ろしいほどあるが、そこだけ我慢すれば美人メイドを侍らせるという立場になる。こんな美味しい立場を渡してたまるか。さっさと一階に下りる。食堂はどこだったか...まだ住んでから一日もたっていないから場所も頭に入りきってない。

「自分の家(仮)で迷うとか洒落にならんシナリオは避けたいな」

 後で地図でももらっとくか。

side out

side Toya

「なるほど...式は延期か。残念だったな刀弥君」
「本当に...まさかこんな時期に異変が起きるだなんて全く思ってませんでしたから」

 天魔から式の延期を宣告されたので人里で肩を落としながら歩いていると、慧音さんに目をつけられて話を聞かせてくれ、と。まあこの人なら愚痴の一つ程度言っても快く聞いてくれそうだと思い、茶屋でのんびりと過ごしている。

「延期とはいっても、どの程度になるんだ?」
「神社の復興が完了し、最低でも一年。長くて五年。天魔の話によれば、山の天狗が異変のせいで気が立っているらしく...それが冷めるまで。という話です」

 はぁ...もう一度あの天人をボコボコにしてやりたいところだが、そんなことをすれば余計に神社の復興が遅れる。紅魔館に帰ったらサンドバッグでも殴っておこう。ああ、腹立たしい。

「...落ち込んでいるところ悪いのだが、また寺子屋に顔を出してくれないか?」
「ええ、出しますよ。出しますとも。適当に生徒に色々と教えますよ。一時間でフェルマーの最終定理を解けるように叩き込んであげますよ」
「い、いや...そこまでしなくても...」
「いいんですよ。どうせ暇ですし式が延期になるだなんて全く思ってませんでしたし丁度妖怪の山を核弾頭でぶっ飛ばしてやろうかと思ったりしてたんで」

 ダメだ。思考が完璧に暴走してる。自分でもわかる。冷静な部分がほとんど無い。

「ちょっと待ってくれ、あんまりに考えが物騒だぞ」
「冗談ですよ。そんなことするわけ無いじゃないですか。できるけど」
「さらっと恐ろしいこと吐いた!」

 あわてる慧音さん。珍しいな。教師なんてしてればいくらでも驚くことはあるだろうに。

「いやいや、君ならやりそうだから問題なんだ」
「やる気はありませんよ。できるだけで」

 別に妖怪の山を守矢の神社ごと抹消しようなんて考えたことは無い。実行するための能力ならあるが。

「まあ、それはともかく、お団子ありがとうございました。美味しかったです」

 軽く腹も膨れたし、偶には妖怪退治にでも出かけよう。最近神社が壊れたせいで調子に乗っているザコ妖怪が大量発生しているそうだ。人も二、三人ほど襲われたとかなんとか。食後の運動に少し動くとするか。
 店を出て、人里の境界線である関所まで向かう。

「あ、久しぶりだな」

 関所を出ると、丁度大きな袋の、ものの入りすぎて開いている口から大量の本を除かせている魔理沙とはち合わせした。

「...魔理沙、その本はどうした」
「いつもの通り借りてきただけだぜ」
「パチュリーの同意は?」
「今回はきちんと許可をもらったから問題ないぜ」

 ...嘘か本当かは知らんが、まあ放っておこう。面倒だ。俺は勤務時間外で働くほどワーカーホリックではない。

「そうか。じゃあな」
「おう、じゃあな」

 今日も天気は曇り。雨ではなく晴れでもない。つまり、中立の天気。紫によると俺の気質を表した天気という話だ。

「降るか晴れるか、どっちにしろ蒸し暑いから雨の方がいいな」

 そんなことを呟いてスペカを構える。

「超電磁砲『レールガン』」

 近くにあった小石を蹴り飛ばし、存在結果の上書きで鉄球に変えて電撃で打ち出す。

「ん、これでしばらくは持つか」

 森に刻まれた一筋の道を見て満足する。ザコ妖怪が今や今かと様子を伺っていたので適当に散らしておいた。

「ああ、そういえば新しいスペルカードもそろそろ作っとくか。レミリアが槍作れって言ってたしな。パチュリーに相談するか」

 にしても、槍か。ゲイボルグじゃダメだのか?やはり地味なのはダメなのか?俺としては見た目よりもいかにローコストで高い性能を出すか。それを追求してるんだが...戻ったときに適当に探しとくか。