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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
今回は、相変わらず東風谷さんが崩壊しています。そして藤原君が若干変態...いや、むしろ正常です。
風祝 赤目の兎
side Toya

「ん?急に晴れたな...さっきまで曇りだったのに」

 雨が降りそうだったので急いで山の頂を目指して飛んでいたのだが...さきほどとは天気が一変して、急に晴れた。

「ようやく来ましたね」

 ニコニコしながら立ちふさがる東風谷。こいつだけは俺の唯一と言っていい天敵だ。

「...東風谷か」

 さっきまでは順調そのものだったのに、どうしてこうなった。

「うふふ、刀弥君の事ですからきっとこの道を通ると思ってましたよ。やっぱり、これが運命なんですね!」
「それはないだろ...」

 運命だとするなら、レミリアが勝手にどうにかしてくれる。頼まなくてもな。だが、こいつが俺の前に出てくるような運命にはしないだろう。

「さあ、私へのラブコールを詠ってください!そして今すぐに式を挙げましょう!当然守矢神社で」

 ハァ...小春日和だから脳みそまで春真っ最中か。春告精が飛んでるぞ。どうにかならないものか...

「春ですよ~」
「残念だが、またの機会にしてくれ。俺は忙しいんだ」
「まったく、刀弥君たら恥ずかしがり屋なんだから...素直に受け止めてくれればいいじゃないですか」

 ダメだこいつ、早く何とかしないと...。

「なあ東風谷、脳に腫瘍でもできたのか?永遠亭に行って診てもらったらどうだ?」
「私の頭の中は刀弥君への愛でいっぱいでガン細胞が蔓延るような場所はありません。さあ、二人きりで愛の巣を作りましょう!」

 ...どうしたものか。元同級生に手を挙げるのも気が引ける。かといってこのまま放っておけば紫かレミリア、咲夜あたりに粛清されるのは目に見えている。しかしこれに付き合うというのも面倒だ。というか無理。

「ああもう...面倒だ!」

 さっさと天界に行って異変の犯人を引きずり落として刻んで幽香に引き渡してヤツメウナギの養殖場に放り込んでやらなきゃならないのに、時間は有限なのに、こんなところで足止めを食らうわけにはいかない。

「護身...ん?」

  ポケットに手を入れ、スペルカードを取り出そうとしたが、その手は何も掴まずに終わった。ああ、そういえばスタングレネードは藤原に渡したままだったな。しまった...もう一枚予備を作っておくべきだったか...

「うふ、うふふ...うフフフ腑ふふ不負ふふふふふ腐ふふふふふふふ...」

 よだれを垂らし、血走った目をしながらこちらに徐々に寄ってくる東風谷。あれがなければ無傷で沈静化させるのは難しい。スペルカードはどれも威力が高すぎて無傷では...

「...三十六計逃げるにしかずとも言うしな」

 背中を向けて全力で飛ぶ。戦略的撤退だ。

「あ!待ってください!!」

 残念ながら、待てばその場で恐ろしい目にあうことは間違いないので待たない。というか待てと言われて待つ奴がいるのかどうかわからん。

「じゃあな」

 一分ほど飛んで、スキマを俺の前に開き、さきほど東風谷とエンカウントした場所に繋げる。一分で数キロは飛んだからな...目視はできないだろう。

「さてと、それじゃあ行くか。天界へ」
「逃がしませんよ?」

 ガシリ、と肩を掴まれる。おかしいな...スキマは閉じたはず...しかも結構な距離を移動したはず。それなのに、なんでお前が居る?

「私の能力は『奇跡を起こす程度の能力』時間の能力者でもない限りあの距離を一瞬で移動するのは限りなく不可能に近い。ですが、そういった限りなく不可能に近いことを行うのが奇跡というものです。九割は愛のパワーですけど」
「なんという能力の無駄遣い」
「目的のためなら手段を選ぶな。すばらしい言葉ですよね。さあ、結婚初夜といきましょう」
「だが断る!」

 『自分はCQCを使用できる』という結果を出し、東風谷の腕を掴んで地面に叩きつけるようにして投げる。だが、そこそこ高度もあるためにすぐに復帰してくるのは目に見えている。追撃ではないが、スキマを開いて東風谷の口の中に直接繋げ、そこに永遠亭から拝借した即効性の睡眠薬を一瓶丸ごと放り込む。

「っァ...」

 ...しまった、一瓶丸ごとはやりすぎだ。地面に下ろしてから気付く。
 ...現人神だから大丈夫か。多分。一応神様(予定)なんだし、この程度ならどうってことはないだろう。

「さてと、神様がどうにかしてくれるだろ」

 すやすやと寝息を立てている東風谷をスキマで守矢神社へ送る。さて、今日は久々に本気で暴れさせてもらうとしよう。日那々居...えっと、てんこだったか?まあいい。名前からして女だろうが、容赦はしない。気の晴れるまでボコボコにさせてもらう。

side out

side Hujiwara

「なあ、鈴仙さん」
「鈴仙でいいですよ。敬称付けて呼ばれるのは慣れていないので」

 ...会ったばかりの女性を呼び捨てするのって...どうよ。まあいいけど。

「どうして迷わずに竹林を歩けるんだ?」

 こんなどこまで行っても同じ景色の中を迷いもせずまっすぐ目的地へ向かうなんて...耳がいいのか?兎なだけに。

「慣れですよ。何度も何度も人里まで往復していると自然と頭に「ストップ」...どうしました?」

 先を歩いていた鈴仙さんを呼び止める。上手く隠してあるが、地面に掘り返した跡がある。たぶん落とし穴だろう。

「う~ん、五十点だな。出来はいいんだが、もう少し工夫がほしかった」
「あ、落とし穴ですか。てゐったらまたこんな物を...」

 途端にぶつぶつ言い出す鈴仙さん。余程恨みがあるのだろう。

「さあて、中にはどんなものがあったんでしょうか。ご開帳~」

 ちょっと大きめの石を落とし穴の上に投げる。すると、土が落ちて、落とし穴の中には透き通った水が...なるほど、落ちてあられもない姿となったところを撮影するのか。噂に違わぬせこさだ。

「キャア!!」

 悲鳴が上がったのですぐに横を見ると、一本の丸太がしなった竹に飛ばされて、こちらに飛んできていた。もちろん鈴仙さんは直撃で、その直線状にいた俺も当然...

「グェ!」

 なすすべもなく丸太に叩かれ、そのまま二人で落とし穴の中へ...水が予想外に冷たくてうざったい。おまけに丸太の直撃をくらった腹が、結構痛い。骨も折れていないのは人外化のおかげだろう。それにしても、落とし穴に連動した竹のしなりを利用した丸太トラップ。作動音は土が落ちる音のせいで気づかない、と。なるほど、落とし穴に注意を向けさせて丸太のトラップの存在を隠すとは。点数アップだ。八十点をやろう兎詐欺。

「イタタタタ...お怪我はありませんか?」

 どうやら鈴仙さんも同じく落とされたらしい。

「!!」

 しかも俺の上に覆いかぶさるような形で...。ブラウスが水に塗れて、中に着ている白と、肌の色が透けて見える。腰まで届くロングの銀に近い白い髪も濡れ、さらに扇情的な光景を作り出す。とてもすばらしい眺めだ。この世に二つとない光景だ。この光景の素晴らしさを表現するには絶景という言葉でもまだ足りん。そして性欲を持て余す。兎詐欺よ...いいセンスだ。満点の十倍、一千点をやろうではないか...

「まったくてゐったら...またこんな物を仕掛けて...」

 ラッキーなことに彼女は服が透けていることに気づいていない。そのまま落とし穴から飛んで出る彼女。しかし、俺は飛べないし結構な深さもあるのでそのまま。そして、彼女が上に飛ぶことによって見える更なる絶景を、涙を流しながら楽しんだ。生まれてきてよかった...

「...どうしました?出ないんですか?」

 感動して涙を流しているところに声をかけられ、ハッと我に返る。

「恥ずかしながら飛べないんですよ。俺」
 
 穴の直径は一メートルほどだが、深さは三メートル以上ある。俺に一体どうしろと?

「飛べないならジャンプすればいいんじゃないですか?半分妖怪ですし、そのくらいならできると思うんですが」
「ジャンプしろって、無茶だろ...」
「何事もやらなければ始まりませんよ」
 
 むぅ...そう言われても...でもまあ、だめもとでやってみるか。
 膝を曲げ、全身をばねのようにして、全力で跳躍。

「うおぉ!?」

 これは予想外。一メートルも飛べないだろうと思っていたのだが、軽く四メートルは跳んでしまった。俺すげぇ...

「やればできるじゃないですか。ほら、行きましょう。師匠がお待ちです」

 師匠というと...あのマッドさんね...黒羽は気をつけろって言ってたが、気をつけてどうにかなるとも思えわん。相手は天才俺凡人。口八丁で乗せられて実験台にされるんですね。わかります。

「師匠はそんなにひどい方ではありませんよ。(多分...)」
「今多分って小さく言ったよね!言ったよね!?」

 一瞬でも安堵した自分が馬鹿だった!絶望した!!この世の理不尽さに絶望した!!

「落ち着いてください」
「ああ、俺は冷静だ。とっても冷静だ。頭がこの上なく冷え切って冴え渡ってる。今ならフェルマーの最終定理の新しい解も十秒で求めれそうだ」
「いやいや、全然落ち着いてるように見えないんですけど」
「人間極限状態になると逆に不自然なまでに落ち着くもんなんだよ。あ、俺人間じゃねーや。アハハハハハ~」

 とりあえず踵を返して人里への道を逆戻り。薬は後で持ってきてもらえばいいや。

「行きますよ!」

 腕を引っ張られるが、全力で抵抗する。俺はまだ死ぬわけにはいかない!

「いいから、行きますよ!」
「やめてくれ!死にたくない!!死にたくなーい!!!」
「うるさいです!」

 そして座薬で頭を撃たれ、そのまま意識は闇に落ちた。