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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
番外編 其の四
 徐々に意識が覚醒する。夢の中から、現実へ引き戻される。目が覚める予兆だな。

「ぐっどもおにんぐ!」

 目が覚めると、言葉で表すのが不可能な(自称)人間がいた。

「それを言うならBad morning.最悪な朝だ」

 目が覚めて最初に見たのが、愛しい妻の顔ではなく男の面というのはなんとも微妙なものだ。

「まあまあ、そう言うなって」
「霊力切れと妖力切れを同時に起こさせた本人が何を言うか。刻むぞ」

 能力をそのまま加工せずに凝縮した、指向性のない霊弾をいくつか宙に浮かせる。あとはこれに何らかの概念を追加するだけで発動できる。

「スペカも無いのに?」
「能力の発動にはスペルカードは必要ない」

 スペルカードは気分で持ってるだけで、技は無くても使える。というかこの能力の戦闘においての使用法は一撃必殺なのだから、弾幕においては邪魔なだけ。

「おい零、その位にしとけ」

 襖を足で開いて紅さんが入ってきた。マナー違反だぞそれは。

「え~、こいつ弄ったら楽しいぜ?」
「店を分子単位まで刻まれるのはごめんだ。もし刻まれたらお前に責任とってもらうからな」
「うげ、そりゃ勘弁」

 もしかして、この店での階級制は紅>零なのか?やけに零がおとなしいような...

「む、俺も紅もどっちが上とは定めてないが?」
「そーだな」
「というわけだ。二日は寝てたから腹も減ってるだろう。食え」

 そういって差し出されたのは、湯気を立てているお粥。確かに腹は減っているが、なんだか本能がこれを食うなと警告してくる。

「なにも変なものは入ってないぞ?」
「入れてたら俺が半殺しにして庭に埋める」

 ...どうやら俺の思い過ごしだったようだ。失礼だったな。

「なら安心だな。いただきます」

 レンゲを持って、粥を口に運ぶ。...かなり辛いな...常軌を逸する辛さだ。レミリアの全てにおいて真っ赤な手料理に慣れてない俺以外だったら確実に卒倒するぞ。

「辛いな。こういうものなのか?」
「...おい零、俺は唐辛子とかの香辛料は入れてないはずだが?」
「さあ、なんのことやら」

 粥の現在の存在結果から、調理から今に至るまでの過程をさかのぼる。俺の能力をもってすれば、結果から過程を逆算すること程度朝飯前だ。

「なるほど、能力を使って無色透明無臭にしたカプサイシンを大量にぶち込んだか」
「あ~、何でバレた?」
「ヒント、俺の能力」 
「...なるほど、そういうことか。物質の『過去』から『今』という結果に至るまでの過程を逆算した。そんなとこだろう?」
「紅さん正解」

 クラッカーをそこに存在するという結果のみを創造。過程は省く。そして盛大に鳴らす。火薬の量を大幅にいじってあり、スタングレネードの大体三倍程度の爆音が響き渡る。ちなみに耳栓は装備済みだ。

「何しやがる!!」
「さっきの意趣返しだ。やるからにはやり返される覚悟をしているというのも当然だろう?」
「まあ確かに刀弥の言うとおり、今回は全面的にお前が悪いな」

 紅さんも同意してくれているようだ。やったらやり返されるというのは世の常だし、やられたからにはやり返すのが礼儀というもの。

「...クク、クックック...やっぱりお前は見込み通りのやつだ!紫に気に入られるだけある!」

 バシバシと肩を叩いてくる零だが、ものすごく一撃が重くて痛い。

「肩の骨が砕けるからやめてくれ」

 眉間にジャッカルを突き付けて止めさせる。それと同時にピタリと手が止まる。

「あ~...本物?」
「Yes.純銀製マケドニウム加工弾殻に法儀式済水銀弾頭装薬にマーベルス化学薬NNA9を用いた専用の13mm炸裂撤鋼弾を使用している。これを食らって無事でいられる化け物はいない。無論人間もな」

 ついでに言うと、朝一番の食事で不快な思いをさせられたのでものすごく頭にきている。今すぐにでも引き金を引きたいところだ。

「店の中でそんなものを出すな。しまえ。そいつは庭に埋めるからそれで許してやってくれ」
「...今すぐ俺の手で土葬したいところだが、店主がそういうなら大人しくそうしよう」

 ジャッカルの存在結果を抹消する。

「じゃあ零、しばらく土の中で反省してろ」
「え!?チョッ」

 一瞬で消えた。空間を操る程度の能力だったから...空間の位相をずらして転移させたか。

「どこに飛ばした?」
「地下二千メートルってところだ。いくらあいつでもしばらくは脱出できないだろう」

 ...もしかすると、こっちのほうが本気を出せば強いのでは?そんな事を思ったり、思わなかったり...どっちにしろ戦いたくはない相手だ。 

「そう警戒するな。こっちも手を出されない限りは何もしない」
「ならいい。それよりあいつの性格はどうにかならないのか?」
「ならんな。気を取り直して朝飯にするぞ。さっきは零のせいで台無しになったからな」
「ああ、助かる」

 そう言って紅さんの後をついて行く。なぜさん付けか?なんとなくだ。