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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
幻想郷ツアー 涼子の場合
 今日は午後から個人行動ということで、図書館でいろいろな本を読ませてもらうことにした。でも、とてつもなく広い図書館なので迷ってしまった。
 
「ん~...よいしょ」

 本棚の上のほうにあった本を一冊抜き出す。

「そこの本棚にあるのは読んだら呪われるわよ。本のページになりたいのなら止めないけど」
「え゛!?」

 後ろから声をかけられて、本を開きかけた手を止める。さすが吸血鬼の館。呪われた本の一冊や二冊や百冊程度あっても可笑しくはないか。

「そういえば見ない顔ね。新しく雇われたメイド?」
「えっと、一応お客さんとして招かれたはずなんだけど...」
「客?...ああ、そういえばレミィが言ってたわね」

 レミィ?ああ、レミリアちゃんね。う~ん、それにしても、この子、なんか不思議な感じがするな...

「本を読むならあっちに小悪魔がいるからそれに頼みなさい」
「小悪魔って...」

 悪魔って言うと、やっぱり聖書に出てくるような、いかにもな感じのしか思い浮かばない...

「そういえば、刀弥が新しい本を持ってくるって言ってたのに...全然来ないわね。あなた、何か預かってない?」

 本から目を離さずにこちらに尋ねる薄紫のネグリジェを着た少女。なぜか紫もやしという言葉が頭に浮かんだ。

「あ、そうそう。ここに残るなら紫色の服を着た魔女に本を渡しといてくれって言われたんだった。これかな?」

 かばんに入れてある、私には読めない文字で書かれた本を渡す。少なくとも英語ではないはず。

「...古代ギリシャの文字で書かれた魔道書...なんでこんな貴重品が彼の家にあるのかしら」

 古代文字...どうりで読めないわけだ。


「あの、ちょっと迷っちゃったんだけど、出口はどこか教えてもらえない?」
「あっち」

 そう言って一つの方向を指差す紫もやしちゃん。...もうちょっと言いようがあるでしょうに...

「まあ、ありがとう」

 一応お礼を言っておく。助けられたことには変わりないし...

「用が済んだなら早く行ったらどう?出口の場所がわからなくなるわよ」
「...」

 なんだか、失礼だけどすっごく無愛想ね...

「パチュリー様はあまり人と接することがないので仕方がないんです。毎日毎日引きこもって本ばかり読んでますから」

 なるほど、引きこもりなら仕方がないか。うん、もやしっ子だから仕方がないのね。

「あ、もしかしてあなたが小悪魔さん?」

 後ろを向くと、赤い髪をして、羽を生やした私と同じくらいに見える少女がいた。

「はい、そうです。どうかしましたか?」

 うわ~、考えてたのと全然違う。むっちゃ可愛い...

「図書館の出口まで案内してほしいんだけど、いいかな?」
「お安い御用です。というわけでパチュリー様、失礼します」
「ええ、お願い」

 ...あ、この本面白そう。一冊もらっていこっと。

「持っていかないで」

 服の袖をつかまれた。

「げ、バレた?」
「毎回持っていくのがいるから嫌でも気がつくようになってるの」

 そーなのかー。仕方がない、置いて行こう。
 かばんに入れた本を本棚に戻す。

「それではこちらです」
「うん。ありがと」

 少女移動中...

 十分ほど子悪魔さんについていくと、ようやく出口が見えてきた。

「おお、外の光だ~!」
「図書館は広いですから迷いやすいんですよ。次からは気をつけてくださいね」

 そーなのかー

「うん、心に刻んどく」
「それでは私はこれで」

 一礼して去っていった小悪魔さん。とても悪魔には見えなかったな。

「う~、これからどうしようか...」

 この館は図書館よりも何倍も広いし、下手に動いても迷うだけ。となると案内役が必要だ。

「あ、そうだ。さっきゅんに頼もう」

 え~っと、確かベルを鳴らせば来るはず...

「呼んだ?」
「まだ鳴らしてないんだけど...」
「最近出番が少ないような気がしたからずっと待ってたのよ」

 ...メタ発言キター。

「あ、そうだ。門まで連れて行ってくれない?」
「いいけど、行っても門番と花畑程度しかないわよ?」
「うん、だからその門番を見に」

 幻想郷一名前で呼ばれない人(妖怪)。そんな彼女に興味があるからだ。

「気にしない気にしない。さ、案内してちょうだい」
「...ずいぶんと酔狂ね」
「よく言われるわ」
「...こっちよ」

 歩き出した方向へと着いていく。

「着いたわ」
「え?もう!?早!!」
「時間を止めたのよ。わざわざ時間をかけて目的地まで行く必要も無いわ」
「便利だね、その能力」
「よく言われますわ。それでは失礼します」

 一礼したと思ったら、次の瞬間にはもう消えていた。便利でいいな~...私も何か能力欲しいな~...あ、能力あったら帰れないんだ。

「そういえば、刀弥って能力持ってるのに普通に外で暮らしてるけど、あれはどうなんだろう...」
「彼は自力で出入りしてるから問題ありませんわ」

 ...この声は、ゆかりんだな。声はしても姿は見えず。スキマに隠れてる?

「ふ~ん、そういえば、刀弥って能力持ってるらしいけど、なんて能力?」
「教えて欲しい?」
「もちろん」
「そうねえ...ヒントだけ教えてあげる。全ての事象の始まりから終わりまで。そしてその終わりを自由に操れる能力よ」

 始まりから終わり?その終わり?
 
「わかりにくかったかしら?」
「うん。何か身近なのに例えてくれたらわかると思う」
「強いて言うなら...テストがあるとするでしょう?」
「あるわね」
「いい点を取ろうとする努力と、返ってきたテストの点ね」

 努力?点数?

「ゴメン、全然わかんない。そういうわけで答え教えて」
「...人間は考える葦って言葉知ってる?」
「知らない」
「比喩表現は?」
「知らない」
「...それでよく学年三位になれたわね」
「だって高校でそんなに難しい言葉使わないもん」
「中学校で習う分野だと思うんだけど?」
「え?」

 そうだったの!?

「そうよ」
「まあそれは置いといて、さっさと答え教えて」
「...ハァ、過程と結果を操る程度の能力。過程を省いて結果を得る程度の能力。これが彼の能力よ」

 ...どんな能力が飛び出すかと思ったけど、とんだチート能力ね。プロア○ションリプレイも真っ青じゃない。

「それじゃ私はこれで失礼するわ。ゆっくり楽しみなさい」
「ん、ありがと」

 ゆかりん、よくわかんない妖怪だけど、少なくとも悪い妖怪じゃないんだよね~。
 そうして門へと歩き出す私。お花がきれいだな~。

「...もう食べれませんよ咲夜さ~ん...」

 なんてテンプレートな寝言...さすがは中国。居眠り常習犯なだけあって一味違う!

「それはどうでもいいか。起きて~中国さ~ん」

 頬をペチペチと叩いて起こそうとする。

「ハッ!?わ、私は寝てたわけではありませんよ!!」
「さっきまで思い切り寝言言ってたじゃない」
 
 地面にシートまで敷いて枕使って横になってて寝言まで言って...せめて仕事をするフリくらいしててもいいんじゃないの?

「中国?」
「ヒィ!咲夜さん!?」
「あ、さっきゅん」

 中国がやけに怯えていると思ったら、後ろには般若のお面をかぶったさっきゅんが居た。ナイフを持って...

「あなたは何度仕事をサボれば気が済むの!」
「キャウ!」

 ザクっと気持ちのいい音を立てておでこにナイフが突き刺さった。血がたくさん流れているが、いつもの事らしいので心配はしない。

「やっぱりここに来たからには一度は見ておきたい光景よね~」

 目的のものも見れて私は満足だ。