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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
 
幻想郷ツアー 初日之一
一夜明け、紅魔館での仕事を一通り終わらせたあと人里へ向かう。
 時刻は腕時計で確認した。大体午前六時。人里へは普通に飛んでいれば一時間はかかるので丁度いい位だろう。

「人間!今日こそさいきょーの名をかけて勝負だ!!」

 霧の立ち込める湖の上、寒さが一気に厳しくなったと思うと、毎度おなじみの⑨が現れた。
 なんというか...こいつには学習能力がないのか?毎度毎度勝負しろと襲い掛かってくるが、そのたびに軽くあしらってやってるのに。
 ちなみに、少しは進展があるかと思えばそうでもなく、毎回スペルの一枚も使わずに撃退される⑨である。

「用事があるからまた今度」
「いっけー!!」
「…少しは人のいう事を聞いたらどうだ?」

 鋭い氷柱が飛んでくるが、側面を叩いて逸らす。

「惜しい!!」
「ちっとも惜しくない。不意打ちをするなら背後か頭上から黙ってしろ」

 そんなだから⑨って言われるんだ。ちょっとは頭を使え。上位妖精。

「よ〜し、もう一発!」

 大量の氷柱が先ほどの数倍のスピードで飛んでくるが、銃弾よりも遅い直射弾に当たるような間抜けでもないので真横に動いて難なくかわす。

「しかし...」

 以前はもっと遅い弾幕だったが、今度はスピード重視の直射に変えてきた。前言は撤回しよう。少しは成長したようだ。だが...

「まだ及第点はやれないな」

 ナイフを一本、弾幕の隙間を縫うように投擲する。まあ、いくら馬鹿といっても自分めがけて飛んでくる物体に反応できないということもないだろう。
 
「ふん!さいきょーのあたいにこんなものあたるもんか!」
「やっぱり馬鹿は馬鹿か」

 わざと聞こえるようにつぶやく。

「なんだと!」
「くやしかったら俺に一発でも当ててみろ」

 安っぽい挑発。だが、馬鹿相手にはこれで充分。

「言ったな!雹符『ヘイルスト「減点一」⑨~!」

 ナイフの飛翔過程を反転させ、通った道筋をそのまま返ってこさせる。ちょうど頭がナイフの通り道にあったので、柄が直撃して気絶。そのまま落ちて行った。

「あう~...また負けた~」
「どんな時でも冷静に、且つ周囲に気を配ること。これができないと最強なんかには絶対になれないぞ」 

 だが、少しは成長したというのは大きな事実だ。これであれが⑨と呼ばれなくなることもそう遠くはないはず。

「ほら、大ちゃんが待ってるぞ。早く行ってこい」

 軽く頭をなでて帰す。基本的に子供には優しいのが俺。妖精だから外見=年齢というのは当てはまらないのだろうが、精神的には完全に子供だ。

「うう~...」

 タイムロスは、まあ予測の範囲内。十分予定時刻には間に合う。軽く飛ばして人里への空路を取り始める。


 side Hujiwara

 ちゃぶ台を囲んで涼子、隆二と顔を合わせる。これから話すことは非常に重要なことだ。

「さて、これよりリア充殲滅作戦を開始する。異議は無いな?」

 隆二の顔を見ながらいう。

「当然だ。あいつは俺達彼女いない歴=年齢を差し置いてきれいな奥さんとキャッキャウフフな生活を送っている。裏切り者は粛清しないとな」

 クックと黒い笑みを浮かべる隆二。さすがは我が盟友。考えることも一緒か。

「私は傍観に徹するよ。その方が面白そうだし」 
「「なぁにいぃ!?」」
「だって私女だし。あんたらの考えることはわからんでもないけど~...あいつ怒らしたら怖いよ?マジで。命の保証はできない位に」

 苦笑いをしながら話す涼子。嘘を言っているようには見えない。ムゥ...だとすると、下手な作戦はこっちの命が危ないということか...
 
「そういうこと。よくおわかりで」
「まあ、刀弥があなたたち相手に本気で切れるなんてことはまず無いでしょうけど」
「「「〜!?」」」

全員揃って声の聞こえた方へ振り向く。そこには、昨日も見たスキマ妖怪が凛とした佇まいで上半身のみをスキマから出してお茶を啜っていた。

「お茶菓子は貰って行くわ」

と思ったらお茶菓子を持ってすぐに引っ込んでいった。

「何だったんだ今の…」
「さあ…私にもさっぱり」
「えっと、今のは確か…」

八雲紫、永い年月を生きる幻想郷の大妖怪。博麗大結界を張った張本人で、幻想郷では間違いなく最強クラスに入る。絶対に言ってはいけない言葉がある。

「ババ...ッアーーーーー!!!」

隆二が禁句を口にした瞬間、パックリと開いたスキマに落ちていった。

「「隆二イィィーーー!!!!」」
「ギャアァァァァァ〜!!蛾は嫌い毛虫もイヤ蜘蛛も蟷螂も百足も!虫は嫌だあぁぁぁぁぁっぁあぁぁ!!!!」

……隆二、君の事は一生忘れておくよ。俺も蟲は大の苦手なんだ。

数分後…

「フフ…次は蟲で済むといいわね」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイモウシナイカラユルシテクダサイオネガイシマス…」

うわ…軽く精神崩壊起こしてるよ…さすがはゆかりん。やることが違う。

「コホン、それでは先程の続きといこう。まず、黒羽は確実にこの部屋に来る。だから入り口に金だらいを吊るしておいて、入って来たらそれが頭に降ってくるという仕掛けだ」
「あんまりに幼稚すぎないか?」
「だからこそ見ていてスッキリするのだ」
「そうだな。しかし、人間卒業したから落ち込んでいるかと心配していたが…無用だったな」

背後から聞きなれた声がする。そして振り向く。あっれ〜?なんでこんな所にお前がいるんだ?

「紫に送ってもらった。それはともかく、準備はもう済んでるみたいだな」
「ん?まあな」

えっと、着替えもした掃除もした布団もたたんだ顔も洗った。

「準備も掃除も済んでる。早く行こうぜ」
「まあ、少しだけ待て。紫がもうすぐ案内役を連れて来るはずだ」

 案内役?誰だいったい...藍様か?それとも橙?意表をついて脇巫女というのも...