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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
三名様スキマツアーへご案内 中之二
side Hujiwara

「いやいや、マジですか?」

現在、手術も終わり医者の永琳さんからの説明を聞いているところだ。で、手術のことだが結論から言えば手術は失敗らしい。

 どうも妖怪の血肉というのは強弱に関係無く、例外無く人間には強烈すぎる毒であり、ほんの少し体に入るだけで抵抗力のない者は死んでしまうらしい。で、俺は運よく助かったのはいいが、いろいろと問題が起きてしまったらしい。

なんで失敗したのに俺が生きているのかと言うと、死にかけで生存本能が全開になり強制的に霊力っぽいものを解放。そのおかげで抵抗力が増し、なんと運良く適合してしまったらしい。やはり人間というのは素晴らしい。
あともう一つ。普通の妖怪の血液に適合したら少しだけ妖怪への耐性が付くだけで済むらしいが、俺の場合はまったく別。俺が飲んだのは大妖怪の血液。一滴といえどもかなりの力が溶けている。おまけにその血液に適合してしまったので…

「まあ、いろいろと省くけど、ごめんなさい。それと人間卒業おめでとう」

赤青の服を着た女性が拍手を送ってくる。

「わーいうれしいな〜。ってんなわけねえだろ!!俺はまだ高校も卒業してないんだぞ!?童◯卒業もしてないんだぞ!?親の店すら継いでないのにそれより早く人間卒業してどうすんだよ!!」
「それについては問題無いわ「どこがだよ!」別にそのままでも寿命、身体能力、霊力魔力が上がるだけで日常生活を送る上では特に問題は無いわ」

ぜってー何か重要な所隠してる。さっきの説明の通りだとするともっと何か重要な事を隠してるに違いない。第一寿命が伸びるってどの位だよ。数百年規模とか言わないよな?

「師匠、あまり要点をぼかして説明するのはあまり良くないのでは?」

 襖を開いて出てきたウサ耳の少女、確か名前は...かなり変な名前だということしか覚えてないな。

「...そうね。はっきり言うわ。さっきも言った通り、このままでは身体能力、寿命、霊力などが飛躍的に上昇するわ。特に身体能力と寿命がね...今は薬で抑えているけど、切れたらすぐに妖怪化が進行するわ」
「さいですか...」

 漫画とかでよく人間卒業する場面とかがあるが、そういう奴の気持ちってのはちょうど今の俺みたいなもんなのかねぇ...

「それで、俺の親友は?」
「あなたを痛めつけた妖怪を退治しに行ったわ。あれで人間を名乗ってるんだから驚きよ」
「わーお、あいつスゲェ」

 あの大妖怪を退治できるって、スゲェなマジで。流石はうちの常連だけある。

「退治するって言っても殺すわけじゃない。軽く痛めつけて後悔させただけだ」
「ますますスゲー」

 とことん人外だな。そりゃ族も一人で潰せるのも納得だ。大妖怪とタメ張れる実力があるなら人間なんてゴミみたいなもんだよなぁ。流石は黒羽。うちの常連なだけある。

「てか戻ってくるの早くね?そしていつ入ってきた」
「もう二、三時間は経ってる。入ってきたのはついさっきだ。聞いたぞ、手術は失敗らしいな」

 暗い顔をして正面に座る刀弥。顔は暗いが、いつもよりも肌がツヤツヤしているような気がする。

「ああ、人間卒業おめでとうって言われちまったよ」


side out

side Toya
 
 俺は部屋の外で入るタイミングを見計らっていた。藤原がああなった原因の一部。ごく一部だが俺にも責任はある。そういうわけで入るタイミングを考えていた。
 友人が人間卒業ともなると、やはりいつもとは違う感覚になるものだ。いつもなら何食わぬ顔で出て行くのだが...

「退治するといっても殺すわけじゃない。軽く痛めつけて後悔させただけだ」

 覚悟を決めて部屋へ入る。殴られようと文句は言わない。避けはするが...

「ますますスゲー」

 感心したかのように口を開く藤原だが、コイツには危機感というものが無いのだろうか?いつもと変わらない、不安定な雰囲気だ。

「てか戻ってくるの早くね?」
「もう二、三時間は経ってる。聞いたぞ、手術は失敗らしいな」

 もう少し気の利いた言葉を投げかけてやりたいところだが、残念ながら俺には思い浮かばない。

「ああ、人間卒業おめでとうって言われちまったよ」
「そうか。だが、それにしてはやけ軽いな」

 死刑宣告を受けるよりは遥かにマシだろうが、普通そこまで冷静でいられるわけがない。

「よくそこまで冷静でいられるな」

 ため息がこぼれる。俺の心配は一体なんだったんだ?

「いやいや、人間混乱が有頂天に達すると逆に冷静になれるのを今身を以って体感しているところだよホント」
「まあ、混乱されるよりも説明がしやすい。これから言うことをよく聞け。そして答えろ」
「ん~、まあわかった」

 藤原を正面に見据えてしっかりと言葉を発する。

「まずはここがどこか。それは言わなくてもわかるな?」
「幻想郷」
「正解」

 状況の認識はできているようだ。落ち着かせる必要は無いな。

「自分の名前は?」
藤原流斗ふじわらりゅうと名前がわからなかったら困るだろ」
「いや、これは俺がお前の下の名前を知らなかったから聞いただけ」

 場を和ませるために軽い冗談を言っておく。
「チョイ待てやコラ!友人の名前知らんてどうなんだそれ!」

 こちらに飛び掛ってくるが、横に移動して避ける。反応はなかなかのものだ。慣れない冗談を言った甲斐があった。
 
「次、これからどうする?半妖として幻想郷で生きるか、ある程度薬で抑えて外での生活を続けるか。後者の場合、定期的に薬の調整にこちらに来る必要はあるがな」
「イテテテ...後者で頼む」

 俺が避けたせいで壁にぶつかった頭をさすりながら答える藤原。

「俺としてもその方が嬉しい。お前の焼き鳥が食えないのは結構な痛手だからな」
「事情はよくわからないけど、八雲紫がどう言うかわからないわよ?」

 永琳が疑問を口に出す。それは至極当然の事だ。幻想が外の世界に漏れ出す。それは幻想郷と外の世界を隔離する結界、博麗大結界の役目、常識と非常識を分け境界が意味を成さなくなる可能性のある危険な行為。

「紫は俺が何とかして説得する。妖怪化もお前の薬でどうにかする。問題はほぼ解決しているようなものだ」
「あ~、ちょっといいか?」

 藤原が口を挟む。

「なんだ」
「俺って幻想郷に観光をしに来たわけだよな?」
「そうだ。こっちの不手際で一日目は完全につぶれたがな」

 はぁ...紫...遊ぶのもほどほどにして欲しいものだ...おかげで苦労が増えた...

「というわけで、紫」

 背後にいつの間にか開いていたスキマに手を突っ込んで、中にいる紫を引っぱり出す。俺が気付かないとでも思ってたのか?

「呼んだ?」
「呼んだ?じゃない。どうして藤原をあそこに落とした」

 恐らく面白そうだったからと答えるつもりだろう。こいつの考えていることは案外わかりにくいようでわかりやすい。

「そんなの決まってるでしょう。面白そうだったから」

 やっぱりか...最初は紫の考えが読めなかったが、最近になってようやくわかるようになってきた。やはり紫は性格が悪い。
 迷惑をかけるのは一向にかまわないが、こういうのは勘弁して欲しい。

「そんな理由で俺は...」
「あら、ごめんなさいね。まさか反撃するとは私も思わなかったの。死ぬ一歩手前になってから助けるつもりでしたのに、出るタイミングを逃してしまいましたの」  

 相変わらず扇子で口元を隠しながら笑う紫。哀れ藤原。

「紫はこういう性格だ。気にしたところで始まらない」
「それはどういうことかしら?」

 目の前にスキマが開き、顔だけ出して聞いてくる。目と鼻の先だ。少し顔を前に出せばキスできるくらいの近さだ。

「つまり、お前は魅力的ってことだ」
「...ありがとう」

 頬を紅く染めながら返す紫。やっぱり紫は「甘ったるい雰囲気をかもし出しているところ悪いんだけど、この外来人の処置はどうするの?」悪いと思うなら突っ込まないで欲しいのだが...

「さて、紫、こいつを外の世界に戻すのは問題ないよな?」

 もし断ったら...そうだな、どうしようか?

「ええ。元はといえば私が幽香を止めなかったのが悪いんだし、やったことに対して責任は持たないとダメよね」
「だ、そうだ。よかったな」

 なにやらへこんでいる藤原だが、このまま幻想郷に永住するよりは遥かにマシだろう。

「ふぅ...一時はどうなるかと思ったが...あんがとな」

 こいつが楽観主義者で助かった。それはともかく...

「予定が狂った。早いところ涼子を拾って人里に行くぞ」
「え~?もうちょいここで「俺の予定では日が落ちる前に全員集めて人里の宿に放り込む予定だった。それが紫のせいでちょっと狂った。場所はわかるからそこまで時間はとらせない。観光はまた明日だ。行くぞ」ちょ、ま!」

 幽香を縛った縄で藤原を縛る。そして縄の端を持って飛び上がる。飛んでからしばらくは暴れていたが、

「うっかり手が滑って縄を手放してしまいそうだ。そうなったら...潰れたトマトの出来上がりだな」

 と説明したらすぐに大人しくなった。理解が早くて助かるよホント。

「お前さ~、もうちょっとマシな運び方ないのか?」
「でかい鳥篭に入れられた状態で空を飛ぶのと、人里まで秒速千キロで投げられるのと、どっちがいいんだ?」

 前者はかなり激しく揺れるので酔ってゲロすること間違いなし。後者は...言わずもがな。

「サーセン。今のでいいです」
「わかればいいんだ」

 さ、魔法の森へ行ってあいつを拾うか。アリスには礼を言わないとな。 
 え~、気がつけばアクセスが百五十万をとっくに越えていて、百六十万を突破。感想の数も五十を突破。正直ビビリました。
 いろいろと注意されたりすることもありますが、これからも頑張って読者の皆様のご期待に沿えるようにして行こうと思います。では、まだまだ人に誇れるような物ではない駄文でございますが、これからもよろしくお願いします。