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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
今回は、出番の少ない友人方に出てもらいました。
三名様スキマツアーへご案内 上
 今日は学校。ではなく、普通の休日。部活には一応美術部に所属しているものの、月に一度集まり、作品を提出するだけで終わる。
 今は家に居て、涼子、隆二、藤原を招待している。

「今日お前らに集まってもらったのは、以前から計画している旅行についてだ」

 二年に進級してから計画は立てていたものの、一度も集合する機会が無かったため、こんな時期にまで延びてしまった。

「で〜?結局どこへ行くんだ?俺たちの泣け無しの金で行けるところなんてたかが知れてるぞ?」
「そうそう、隆二の言う通りだ。店の金持って来いとか言うなよ?」

 隆二と藤原の言う通り、たかが学生の持つ金では行けるところも限られる。

「行くところは既に決まってる。隆二、お前、この前どこへ行きたいって言ってた?」
「ん?ああ、でもあれはフィクションだろ?」
「いいから言え」
「幻想郷」

 気まずそうに呟く隆二。

「「ダメだこいつ、早く何とかしないと…」」

 藤原と涼子の鋭いツッコミ。この二人は冗談だと思っているようだが、少くとも本人は行きたい本気で願っている。

「まあ二人とも、こいつが馬鹿なのは前からわかりきったことだ。存在しないとされる場所へ旅行に行きたいなんて言い出すなんて、気が狂ってるとしか思えない」
「「デスヨネー」」

 それにしても、本当にお前ら息ピッタリだな。

「だが、存在する場所となれば話は別。それは正気となる」
「「「は?」」」

  全員の動きがぴたりと静止する。
 そんな事は気にも止めずに立ち上がり、全員にナイフと護符の入ったお守りを渡す。ナイフは俺が能力を使用して強化したもので、普通に妖怪の攻撃を食らっても刃こぼれ一つない特注品だ。
 森で引っこ抜いたマンドラゴラを煮詰めたエキスも塗ってあるから妖怪にも効く。

「おい!」
「それって、まさか!」
「お前、ほんと何でもありだな…」

 隆二、涼子、藤原、それぞれで反応は違うが、もう決定事項だ。

「しっかり楽しめ。普通ならいくら金を積もうと行けない場所だ」
「そして、ようこそ幻想郷へ。歓迎しますわ、私の夫の友人方」

 紫の澄んだ声が部屋に響き渡る。それと同時に、三人が姿を消す。

「それじゃ、俺も行くとするか」

 三人が消えた後、目の前に開いたスキマに飛び込む。



side Ryuji

は?ちょっと待て、ちょっと待ってくれ!まだ心の準備が〜!ってかババアマジで居たの?信じられねえ!

「ウヒャー!俺やべえ!!マジで幻想入り!?スッゲー!!」

 っと、ふざけんのはここまでにして、と。いやしかし、ゆかりんのスキマを実際に見ると…

「すごく…悪趣味です……」

 それは置いといて、問題は幻想郷に付いたらどうなるかなんだよな〜…そしてどこへ落ちるか。幻想入りしていきなり『あなたは食べてもいい人類?』なんて言われたら逃げ切れる自信がねぇ!つーかその場で食われる。そして死ねる。
 向日葵畑に落とされればその瞬間発狂するぜ。念願の幽香様の足で踏まれるなんて、嬉しすぎる!

「おっと、もう出口かよ。もうちょっと考える時間くらいくれよな〜」

 色々と考えていると、もうスキマ空間の終わりのようだ。出口が開いて外が見える。

「うーむ、残念人里か」

 眼下に広がる景色は、森でもなく向日葵畑でもなく、人里。完全な人里。The人里。

「しかし〜…」

 俺は今、空を飛んでいる!!ではなく落ちている。それはもうかなり高い所から。

「ノーロープノーネットバンジーはイヤーーーーーッ!!!
 ヘルプミー!ヘルプミーエーリーーーーン!!!」

 という願いも虚しく、そのまま地面に叩きつけられる。おかしいな、あんまし痛くない。

「は!もしや俺にも何か能力が!?」
「おい!大丈夫か!?」

 俺の目が声のする方へ動く。ザ・ワールド!
 
「もこたんインしたお〜!」

 ホップステップジャーンプ!ではなくいきなりのジャンプで飛びかかる。憧れのもこたんが目の前にいるのだ。飛び掛からないほうがおかしい。

「あれ?ペッタンコ」

 抱きついたのはいいが、予想以上に小さい胸部のせいで感動も半減してしまった。

「ッツ!!!!」

 周りから人が居なくなったかと思うと、目の前には炎を纏った少女がいた。

 
 side tōya

 スキマから外へ出ると、視界いっぱいに青空が広がる。

「現在落下中、だな」

 体を反転させ、下を見る。風圧と眼下に迫ってくる地上のおかげで結構スピードが出ていることに気が付く。

 とりあえず風を起こして落下速度を緩める。体制を整えなければ着地もできやしない。
 ふわりと地面に降りる。通りの中心だが、まあいつものことなので慧音さんも許してくれるだろう。

「さてと、探すか」

 紫のことだから、多分全員別々の場所へ飛ばされているはず。護符のおかげで弱い妖怪には出会わないはずなので、今日一日程度ならなんとかなるだろう。サバイバルナイフも渡したし。

「あ!黒羽さん!!」
「阿求ちゃん?どうしたそんなに慌てて」
「外来人の方と妹紅さんが!!ともかく来てください!!」
「ああ、わかった」

 尋常ではない様子に思わず何も聞かずに着いて行く。何があったのだろうか...あの妹紅が輝夜以外と争うなんて...

「フジヤマヴォルケイノ!!」
「ちょっと待て!!いきなりそれはないだろ!!」
「うるさい!!黙って焼かれろ変態!!」

 ...目を擦る。もう一度目を開く。目の前には、必死の表情で弾幕を避ける隆二と、視線で射殺さんばかりの妹紅が...

「阿求ちゃん、幻覚が見えるから永遠亭に行って薬もらってくる」

 妹紅があんな恐ろしい表情をするはずがない。していたとしても慧音さんが止めるはずだ。

「現実から目をそむけないでください。知り合いなんですよね?」
「断じて違う」
「いや、さっきからあなたの名前を連呼してますけど...」
「断じて違う」
「だから「違う」いいから助けてあげてください」

 阿求ちゃんに背中を押される。はぁ...仕方ない...話を聞くだけ聞いてから決めよう。

「ちょっと止まれ」
「おお!マイフレンド!!ピンチの俺を助けに来てくれたのか!?さすがは「ちょっと黙れ」ヒデェ!」

 地面に倒れこむ隆二の頭を踏みにじりながら妹紅の方に顔を向ける。

「で、どうしてこいつを襲ったんだ?」
「私はどちらかといえば襲われた側だ」

 顔を赤くしながら答える妹紅。まあ、大体事情は察した。ようするにこいつが悪いのだろう。

「......わかった。こいつは煮るなり焼くなり好きにしていい」

 少し考えてから処刑の許可を出す。こいつならあり得るからな。

「俺を見捨てる気かー!!!」

 地面に転がる隆二をゴミを見るような眼で見下したあと、

「Yes」
「じゃあ改めて、フジヤマヴォルケイノ」
「NOoooooooooo~!!」

 背を向ける。背後で大きな爆発が起きたが気にしない。熱風が吹くが気にしない。
 あいつなら大丈夫だろう。多分...

「フゥ…死ぬかと思ったZE!」

 爆発が納まってやたらと威勢のいい声が聞こえてきたので振り向く。そこに立っていたのは無傷の隆二だった。普通死ぬだろ...

「今更だが、お前本当に人間か?」

 ジト目で睨む。目に霊力を込めて隆二を見るが、やはり人間そのもの。

「当然だ」
「一回死んでみてくれ。でないと確認できない」

 疑問に思い、ナイフを首に当てる。普通に血は流れるな...

「ちょっと待て!!」
「おかしいな...」

 ナイフの刃は通るのに妹紅の弾幕は通らないはずがない...実に不思議だ...

「熱っち~!!!」

 考え事をしていると、隆二の悲鳴が聞こえた。御守りから火が燃え移って頭が大炎上している。面白いからもっとやれという野次馬達の歓声が聞こえてくる。

「ああ、そういえば身代わりの護符渡したな」
「なるほど、それじゃあ護符が無いなら、今度はきちんと消し炭にできるな...」

 これで納得がいった。しかし、妹紅の弾幕に耐えるとは...さすがメイドインパチュリー。めんどくさがりの霊夢とは仕事の出来が違う。

「あの、黒羽さん?助けなくていいんですか?」

 阿求ちゃんに袖を引かれる。どうやらあの⑨のことを心配しているようだが、残念ながらあいつは馬鹿だからどんなことをされても大丈夫だ。復活する。

「保証はないが大丈夫だ」
「そうなんですか...」

 心配そうに呟く隣の少女。心配する必要は無いと言ってるのに...

「そういえば...妹紅の苗字は藤原だったな...案外あいつの先祖、いや、それは無いか」

 同じ名字を持ってる赤の他人なんて、星の数ほどいるしな。可能性はゼロでこそないが、かなり低い。まあ、焼き鳥屋つながりであるかもしれないが...会わせない方がいいか?

「なぜ助けない!」
「必要がないから。それじゃ阿求ちゃん、慧音さんは寺子屋か?」
「そうですね」
「無視するなー!」

 無視するな、そう言われて無視しない奴はいない。そういうわけで無視して寺子屋へ足を向ける。悲鳴が聞こえるが気にしない。

「さっきから外が騒がしいが、どうかしたのか?」
「いえ、野良犬がちょっと暴れたので躾をされているところです。問題ありません」
「そうか。君がそう言うなら そうなんだろうが...で、今日はどうしたんだ?」

 質問されて思い出す。

「そうでした、宿の手配をお願いします。三人分」
「どうしてまた急に」
「友人を連れてきたんですよ。さすがに野宿させるのは危ないでしょうし」

 隆二は別にいいとして、ほかの二人は少しまずい。特に対抗する手段を持たないあの二人は妖怪に食われる可能性が非常に高い。

「そういうわけでお願いします」
「ちょっと待ってくれ。その友人は、もしかして外の人間か?」

 少し考えてから口を開く慧音さん。その顔には戸惑いが感じられる。

「その通りです」
「大丈夫なのか?外の人間を勝手に連れてきて」
「きちんと相手の親も同意の上です。友人たちも契約書にサインしてますし」

 学校に提出するプリントだと騙してサインさせた契約書を慧音さんに見せる。

「ふむ、一つずつ筆跡も異なるし、お互い合意の上で...というのはわかった。だが八雲紫がどういうか」
「その紫が連れてきたのでそれも問題ありません」
「ならいいか。では日頃のお礼も兼ねて、喜んで引き受けよう」
「ありがとうございます」

 軽く礼をして外へ出る。
 さあ、宿のことはこれで問題ない。⑨の死体を引き取りに行こう。

「この!変態ッ!どうしようもない屑!!畜生にすら劣るぞ!!」
「……」
「いいぞー、もっとやれ~」

 俗に言うヘヴン状態の隆二と、それをひたすらに足蹴にする妹紅。そしてそれを肴に酒を飲む萃香。
 こんな状況でよく酒が飲めるな… 

「まあいい。放っておこう。触らぬ神に祟りなしとも言うしな」
「あんたの友人だろ?止めなくていいのかい?」

 他の奴らを探しに行こうと思っていると、萃香に止められた。

「大丈夫だ。あいつは殺して死ぬような奴じゃない」
「それじゃ問題ないか。んじゃ、頑張ってね~」

 酒を飲む暇があるのなら止めるか俺の手伝いをしてほしいところだが...こいつにそんなことを願っても無駄か。

「射命丸辺りが一番役に立ちそうだな」

 どこに落としたか、紫なら知ってるだろうが...
『面白そうだからしばらくこのままにしておきましょう』と言うのが目に見えている。それなら幻想郷を飛び回っている烏天狗の方が教えてくれる可能性は高い。というかあいつに拒否権はない。
 あいつはこの時間は大抵人里の上空に居る。というか居なきゃ困る。
 視力を強化して上を向く。一キロ先のコインの柄もわかる位まで強化された視力で空を探す。

「居た」

 かなり上空だが、空を飛ぶ黒い物体を見つけた。
 地面を蹴って飛び上がる。向こうもこちらに気がついたのか、高度を下げて近寄ってくる。お互いの高度が同じになったところで上昇をやめる。

「あやや、本日はどのような御用で?」
「俺と似たような恰好の外来人を探している。こんな奴らだが...知らないか?」

 あらかじめ用意しておいた写真を見せる。藤原と涼子の写真だ。

「ん~...男性の方はわかりませんが、女性の方は魔法の森で見ましたね。アリスさんが保護してました」
「さすが幻想郷最速。情報の収集速度も幻想郷一だな」
「お褒めの言葉ありがとうございます。ではこれを機に文々。新聞を「また今度」そんなこと言わずに契約してくださいよ~」
「そんなボロイ紙切れをもらってどうするんだ?」
「む、失礼ですね。ボロイ紙切れではなく、れっきとした新聞です」
「どこからどう見てもボロい紙切れだろう。それと、契約してなくても勝手に放り込んでくるだろ。咲夜が怒ってたぞ?ゴミが増えて処分に困るって」

 窓拭きに利用するにしても限界があるし、毎回窓をぶち破って投げ込んでくるので後処理が大変だ。

「新聞は窓ふきではありません!偉い人にはそれがわからんのです!」
「だから仮にも新聞って名前をつけるんだったら毎日発行。もしくは定期発行しろ。でないと購読する気にならん。あと新聞は窓を拭くときにインクがワックス代わりになるから便利でいいんだ」
 
 節約になるから別にいいんだが...

「というわけでがんばってネタを探せ」

 魔法を切って落下する。本日二度目のノーロープバンジーだが、しつこい天狗から逃げるのには不意を打つのが一番だ。

「ところで~、ネタの匂いがしますね。さっきの話、もー少し詳しく教えていただけませんか?」
「...ッチ」

 やっぱり逃げられないか。

「今夜紅魔館に来い。話なら夜してやる。今は適当にネタ探しに奔走してろ」
「わかりました。では今夜お伺いしますね〜」

 素早くメモをして飛び去る黒い羽根を持った天狗。やけに機嫌が良さそうだったのは気のせいだろう。

「さて、まず探すべきなのは藤原だな」

 優先順位はこれで決まった。涼子はアリスに保護してもらっているので今のところは大丈夫。しかし、どこに落ちたかわからない隆二は別。少くとも冥界と彼岸一帯はまず無いだろう。いくら紫でも、そこに落とすとは思えない。
 しかし、そこ以外のどこに落ちたか。それが問題。迷いの竹林であれば、余程不幸でない限りは持っている護符の力で気づいてもらえるので問題は無い。
 魔法の森はまず無い。アリスが保護したのは涼子一人だけ。
 妖怪の山、お守りの中に俺からの紹介状が入っているので守屋の神社には連れて行ってもらえるから問題無し。
再思の道、これなら小町が人里まで連れてきてくれるからこれも無い。
 丘の上にある鈴蘭畑…ちょっとマズイな。護符は毒までカバーしてはくれない。
 太陽の畑、これは一番マズイな…幽香に見つかれば確実に花の肥料にされる。

「行きたくないが、友人に死なれるのは嫌だしな…仕方ない。行くか…」

 ため息をつき、太陽の畑に向けて飛ぶ。どちらかが居なければいいんだが…こういう時に限って二人鉢合わせしてたりして…
 
 やめよう。嫌なことばかり考えるとそれが現実になりそうだ…


 

なんとなくやってみた。この友人を幻想入りさせるというネタは、コロンブスの鶏様からお借りしました。許可はとってあります。