今回は、以前投稿した「番外編 其の一」の続きで、コロンブスの鶏様の「平凡少年が幻想入り」とのクロスオーバーとなっております。もちろん許可は頂いております。
番外編 其の二
〜前回のあらすじ〜
昨日、紫に過去へと連れてこられた主人公、妖獣を軽く蹴散らしその後色々と紆余曲折はあったものの、チート能力持ちの二人の店に泊まる事に。
「うん、美味い」
朝食として出された焼き魚、漬物、味噌汁。それと白ごはんに舌鼓を打ちながら朝の空気を楽しむ。
そういえば、紅の姿が見えない。厨房で料理でもしているのだろうか?
「紅の奴なら店の準備をしている」
「こんな早くからか。仕事熱心だな」
考えている事を読んだかのように疑問に答えられた。会話がしやすいからいいか…
「ご馳走様」
「美味かったか?」
「ああ」
文句の付けようのない完璧な味付けだったが、やはり...
「それでも母と妻のには少し劣るな」
「それなら仕方が無い。お袋の味と愛妻料理に勝るものなんて無いからな」
「違いない」
箸を置き、軽く笑い合ってから立ち上がる。
「あ、持って行かなくていいぞ。客にそんなことをさせるわけにはいかない」
「いいんだ。ジッとしてるのは好きじゃなくてな。それと、客の事を根掘り葉掘り聞くのはどうなんだ?」
「いーんだよ!」
いいのかよ…声には出さずに心の中でツッコミを入れる。
「グ◯ーンダヨ。とでも言えばいいのか?」
朝から妙に高いテンションを保つ零だが、正直ついて行けない。低血圧なので朝は苦手なのだが…
「はい正解いぃ!」
「射名丸〜↓」
内心でため息をつく。なぜ自分はこんなどうでもいい事に付き合っているのか、自分でも不思議で仕方がない」
「まあふざけるのはここまでにして、今日はどうするつもりだ?」
急に態度を変え、これからの予定を聞いてくる零。そうだな…
「昨日言ったように紫の家に行く。それからは決めてないな」
まあ、こっちの迷い家でのんびりと過ごす事になるだろう。食器を洗い場に運び零の方を向く。
「それじゃあ世話になった。こっちに居る間、気が向いたらまた来る」
そう言ってから荷物の入ったトランクを持ち上げ、店の出口まで歩いて行く。
「それじゃ、食後の運動に軽く走るか」
靴を履き、大体の方角を太陽の位置から割り出して地面を踏みしめる。
「食前の運動に人間でも狩りますか」
…嫌なセリフが聞こえてきた。背後に気配を感じたので、防御魔法を展開。相手は結構な手練と見て間違いないだろう。
「うぎゃっ!」
何かが防御魔法にぶつかり、弾かれる音が聞こえたので振り向く。ついでに手に持った軽く二十キロはあるトランクを振りかぶって...
「ちょっと待て!!冗談だ!!」
勢いよく振り降ろそうとして、止めた。そこに居たのは妖怪ではなく、この店の店主である零だったからだ。
「なんだ...心臓に悪い冗談はやめてくれ」
ホッと胸を撫で下ろす。危うく頭を叩き潰すところだった…
「いや、悪い悪い。つい出来心で...」
頭を掻きながら謝罪する零だが、あまり反省の色が見えない。本当に反省してるのか?
「もちろん。反省はしているが後悔は(ry」
「だろうと思った」
振り上げたままのトランクを、満身の力をこめて振り下ろす。辺りに鈍い音が響き渡り、鳥が一斉に飛び立つ。
「イテェ…」
「自業自得だろう」
頭に押さえて蹲っている零。哀れだとは思わないが、⑨に近い雰囲気を感じる。
「あのな、言っとくけど俺はお前よりもずいぶんと年上だぞ」
「精神的にはどうなのか気になるところだな。相方にも呆れられてるんじゃないか?」
地面におろしていたトランクを再び持ち上げて歩き出す。
「うぐ...最近気になりだしたことを...」
「なんだ、図星か」
懐から薬草煙草を取り出して火をつける。永琳特製の薬草百パーセントの煙草。体に害のある成分は一切含まれておらず、むしろ体に良い。市販の物と一緒なのは外観だけで、他は何もかもが違うため未成年の俺が吸っても問題無し。あと、味は特にないが、ハッカが混じっているおかげで喉がすっきりする。
吸い始めたきっかけは何となく様になるから。フランにもレミリアにも好評だったし、フラストレーションを発散するのにはなかなか役に立つ。
「ハー...」
煙を吐き出す。一酸化炭素、ニコチン、硫黄など、体に害のある物質は一切含まれておりません。
「薬草煙草か」
「一本いるか?」
「いや、俺は煙草の味よりもお前の実力が気になるんだが...」
この先に言われることはわかる。俺と闘え。熱血系少年漫画などではよくある展開だ。もちろん戦って勝てるわけもないし、こちらに利益があるわけでもないので断る。
「断る」
「そう言わずに。俺と戦わないことは『不可能』だ」
......忘れてた、こうされれば俺にはどうにもできない。
「はぁ...強引だな」
「この世界の紫と同一人物ではないとはいえ、紫が気に入った男だ。その実力が気になるのも当然だろう?」
全然理解できないのははたして俺だけだろうか?ああ、この身の不幸を呪いたい…
「ほら、ぼさっとしてると最悪死ぬぞ」
「残念だが、蛇符『お前に俺は殺せない』」
マスパとは違う、捩じれたレーザーによる弾幕。だが、全て俺には当たらずにすり抜ける。
「仕方ないか」
戦わないことが不可能なら、勝つことは能力的に論外。まあ、なんとかして負けないようにすればいい。最悪引き分けにでも持っていこう。
そんなことを頭の隅で考えながら、ナイフを一本取り出す。近接戦闘がどれだけ得意なのかは知らないが、まあ能力での真っ向勝負で負けるよりはマシ。
「当たらない?能力か...」
「正解っだ!」
接近する過程を短縮、右手に持ったナイフを、最小限の動きで突き出す。
「おっと」
危なげもなく上半身を逸らして回避される。だが、ナイフの利点は軽く、軌道の修正が容易なこと。一瞬で逆手に持ち直し、ナイフを逸らされた上体に向けて振り下ろす。殺すつもりでいかないと、一瞬で負ける。
「ッチ」
ナイフを持った右手を振り下ろす直前で掴まれる。だが、まだ左が空いている。
「死んでも怨むなよ」
「マジで?」
「本気と書いてマジと読む」
腰の後ろにあるホルスターからナイフを逆手で引き抜き、首を狙ってナイフを振るう。完全に読まれていたようで、後ろに下がって避けられた。
「危ないな、避けなきゃ首と胴体が泣き別れしてたぞ」
「避けれたから問題ないだろう」
右手を振ってナイフを投げる。狙いは額の中心。さらに空いた右手に愛銃であるP90を出現させ、フルオートでぶっ放す
「おいおい、銃まで使うか」
一瞬で接近され、銃を落とされる。予想以上に早い。普通の銃撃なら当たらないか...
「スピードには慣れてるからな」
「なるほど。ならこれならどうだ?」
惨劇『串刺公』
ナイフならちょうどたくさんある。トランクを蹴り上げ、中に入っているナイフを空中にばらまく。その全てに命中した結果を付与することで...
「イッテー!!」
ナイフが刺さったのに痛いで済ませるか?化け物だな...
俺はナイフをしまう。反撃が来なかった所を見ると、相手は俺の実力を知りたいだけで別に戦おうとは考えていないようだ。
「お?ナイフは使わないのか」
若干警戒の色を濃くする零。ナイフをしまったことに疑問に思っているようだ。
「いや、気が変わった」
戦う気のない相手に本気を出すのは無理。
「は?」
「やる気がない相手に実力を出せ。と言われても無理だ」
トランクを拾い、背中を向ける。さっきのが戦いと呼べるかどうかは分からないが、少くとも一合はした。これで晴れて自由の身。元々こちらも乗り気ではなかったし、さっさと逃げよう。
「はぁ…俺がやったらすぐに終わるかと思ってやらなかったんだが?」
後ろから強烈な殺気が漂う。周りの空気が一変して冷えてゆく。
「加減を間違えるかもしれんが、勘弁してくれよ」
「それ勘弁してほしいな」
空気が震える。目の前から標的が消える。
こういうときは、大抵…
「後ろ」
人間の反応速度の限界は、およそ0.1秒と言われているが、能力と魔法によりその限界を引き上げる。
「ッツ!」
ナイフを振ると、僅かな手応え。
「浅いな…」
「いやいや、さっきのスピードに反応できるって、ドンダケー」
頬に一筋だけ傷の入った零が出て来た。首を撥ねるつもりなんだが、どうも視界に納めるのが限界なようだ。動きが追いつかない。
「結構強いな」
「そりゃどうも」
こっちの心境も知らずに…いや、知られたらマズイか…相手は少なくとも音速での移動が可能。しかも耐久力が美鈴並みときた。ああ、勝率が一気に下がったな...
「よそ見するのはいいが、気を散らしてると当たるぞ?」
顔を狙った右ストレート。単純な一撃なので避けるのはそう難しくない。顔を逸らして避けるが、次の瞬間、爆音が耳を劈く。
「文字通りマッハパンチかよ」
耳鳴りが酷い。まあ、音の壁を破った衝撃波だ。鼓膜が破れなかっただけマシか…
「伊達に鍛えてないからな」
「普通ならいくら鍛えても生身で音速突破は不可能だろ」
「はっは〜!鍛えれば誰でも「無理だろ」」
…セコイな。まあ、あちらも最初に能力を使ったことだし…
「俺が使っても問題無いな」
未完成で且つ一発使えば霊力がほとんどなくなる使い勝手の悪いスペルカードを構える。後の事を考えれば使わない方が無難だが…
「お、スペカか」
「下手すれば死ぬから気をつけろ『次元の刃-Easy-』」
体からごっそり霊力が持って行かれる。だが、その分威力は申し分ない。
「なんだ?何も起こらないが…不発か?」
金属同士が打ち合うような甲高い音が一度だけ響く。
剣の達人に鋭い刀で切られた場合、痛みもなくしばらく切られた事に気付かずに普通に動いている事があるらしいが、はたして上手く行っただろうか…
「な!?」
「外した?」
周りの木は全て切れている。だが、目の前の零は全く動かない…衣服も切れていないし...
「まさか、その能力がこんな恐ろしい攻撃に使えるとは思いもしなかった...死ぬかと思ったぞ」
どうやら外していたわけではなさそうだ。しかし、どうして普通に動いているのか…
「知りたいか?」
「いや、別にどうでもいい。俺の負けで頼む。霊力が切れてこれ以上の戦闘は無理だ」
霊力が切れた、というのは嘘。さっきのスペルが通じなかった時点で俺の負け。これ以上の戦闘に意味は無い。というわけで痛い目見る前に降参してみた。
しかし、本来なら絶対不可避の一撃必殺のはずなんだが...便利な能力で羨ましいね。
「ちょっと待て、俺まだほとんど何もしてないぞ!?」
「そんな事を言われても無理なのは無理。さっきのが通じなかった時点で俺の負けだし」
実力を測るという目的はまた今度。機会があれば…したくないな。
「俺は満足していない!もう一ラウンド付き合ってもらうぜ!」
「零」
背景にドドド…という奇妙な擬音を浮かべ、不満そうな顔をしている零の肩を無表情で掴む紅。一瞬で現れたのは、時間を止めたからだろう。
「ゲッ!紅!!」
「随分と帰りが遅いと思えば、こんな所で油売ってたのか。
で、覚悟はできてるだろうな」
「い、いやちょっと…」
冷や汗をダラダラと流す零。昨日とは力関係が逆転しているようにも見える。
「今ならオラオラと無駄無駄を選ばせてやる。どちらを選んでももれなくロードローラーが付いて来るぞ」
「いや、それはちょっと…」
「ザ・ワールド!時よ止まれ」
停止した時間の中でもきちんとした意識がある。おかしいな…
「じゃあ無駄無駄で決定な。
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄アァ!追加でロードローラーだ!
そして時は動き出す」
「なあ、一つ聞いていいか?」
「いいぞ」
時間も元に戻り、零も吹っ飛んで行った所で質問する。
「あのロードローラーどこから出した?」
「…細かい事は気にするな。迷い家になら送ってやる」
「感謝す「ザ・ワールド」る」
感謝を述べ終る前に周りの景色が一変する。時間を止めて送ってくれたのか...だが、それにしてもせっかちな奴だ。礼位聞いて行けばいいのに。
「紫様!知らないが人間が紛れ込んでいます!」
声が聞こえてきた方を向く。少し小さいが、独特の金色の九本の尻尾。藍だな。
「ん〜?ちょっと待って。その人間は客人よ」
隙間を開いて出てきたのは、こっちの紫。寝ぼけて目を擦っているのは向こうの紫と同じだ。
「フアァ…それじゃ改めて、ようこそ幻想郷へ。貴方の事を歓迎しますわ」
「本来ならもっとカリスマを感じるセリフだが、最初の欠伸のせいで台無しだな」
「放っておいて。藍、客室へ案内してあげて。私はもう一度寝て来るわ」
…なんというか、色々と台無しだな。最後の一言で。おかげでカリスマが微塵も感じられない。
「畏まりました。それではこちらだ。着いてこい」
「今日から短い間だがよろしくたのむ」
「短い間とはいえ、くれぐれも粗相の無いように。あった場合は即座に始末するからな」
こっちの藍もあまり変わらないな。
「まあ、迷惑の掛からない程度に楽しませてもらう」
「是非そうしてくれ。ただし、あまり調子に乗っていると...」
狐火を手の平に灯らせ、高圧的な態度で話す藍。感じる力はあっちの藍よりは幾分弱い。
「心配しなくても羽目は外さない」
さすがに命の危機が迫ったら...全力で抵抗させてもらうが。まあ人里をうろうろしてればそんなことはまずないだろう。
「ならいい。ゆっくりして行ってくれ」
「それじゃお言葉に甘えるとしよう」
藍に案内され、屋敷の中へ入り客室まで歩く。
あまり落ちつける雰囲気ではないが、まああと五日だ。我慢しよう。
番外編クロスはあと二、三話程度で終わりとします。何か次はこうしてほしいとか、あそこへ行ってほしいとかのご意見があれば遠慮なくどうぞ。