宴会 中編之2
「レミリアは霊夢のところへ行ったらしいし、フランは大ちゃんに預けた。パチュリーはアリスと一緒に魔理沙でお楽しみ中だし…美鈴と小悪魔さんはどこだ?」
守屋の神様のところから離れ、宴会場を酒を運びながら歩き回る。しかし、幽香の誘いを断ったのは少し残念だったな。全く…酒の魅力というのは恐ろしいものだ。
「その恐ろしい魅力の誘惑に負けず、方法はどうあれそれをきちんと拒否できるのはよいことです」
後ろから声がしたので振り向く。が、誰もいない。
「…?」
「下です下」
そう言われて下を向く。
…なんであなたがここにいるんでしょうかね。
「映姫様…」
「どうしました?なにか悩み事でもあるのでしたらどうぞ遠慮なく」
「いえ、悩み事でしたら天がどうにかしてくれます。私が聞きたいのは、なぜあなたがここにいるか。ということです」
「宴会の招待状が来たので仕事を終わらせて来たのですが、何か不都合でもありましたか?」
「いえ、何も問題ありませんね」
「ああ、そういえば…ふむふむ、きちんと日々善行を積んでいるようですね。感心です。ほぼ問題はありませんが、もう少し能動的に動いたほうがよいでしょう。あなたの場合、普通の人間よりも罪が大きいのですから」
……確かに人殺しだしな…正当防衛とはいえ、人を一人殺したのには変わりないし…ああ、久々に思い出して欝だ…
「まあそこまで深く考える必要はありません。あなたは罪から逃げず、真正面から受け止め、きちんと贖罪をしていますから。積んだ善行の数により、あなたの死後が寄り豊かなものとなります。頑張りなさい」
「わかりました」
「ならよろしい。これからもあなたがさらに善行を積むことを期待しています」
背を向けて歩き出そうとする小さな閻魔。
「映姫様、一つ聞きたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」
その背中に向けて声をかける。これから聞くことは、今年中に行なうあることだ。
「何でしょうか。言ってみなさい」
「私が人間のまま妖怪並み、それ以上の寿命を手に入れたら、それは罪となるのでしょうか」
「ええ、なりますね。あなたの考えていることはわかります。
老いという過程を経て死という結果が出る。なのでそれを捨てて悠久の時を過ごす者となる。人と呼べるかどうかも怪しいですが、蓬莱人のように薬を服用してなるわけではなく、かといって妖怪化や吸血鬼化というわけでもない。普通なら不可能なことですが、あなたの能力ならそれができる。ですが、それは本来あるべき存在を否定するのでかなり大きな罪となります。そしてその罪を消すには気の遠くなるような時間を必要とします。ついでに言わせて貰うと、あなたは幻想郷を支える一本の柱となる。
それを知った上での発言ですか?」
「地獄行きも承知の上です。人のままでいて早くに死んだら、妻を幸せにできない。幸せにできずに死を迎え、その死後が豊かになるのなら俺は死を捨て、妻を幸せにしてから地獄を選びます」
これだけはどうしても譲れない。価値のない俺だが、そんな俺を愛してくれる者を全力で幸せにする。それだけは絶対に譲れない。否定されてもかまわない。否定されてもその否定をさらに否定するだけだ。
「死んでから無間地獄に落ちたとしても?」
「覚悟の上です」
「輪廻の輪から外れ、永遠に苦しむことになっても?」
「かまいません」
「魂が完全に消え去ったとしても?」
「それも覚悟しています」
背伸びをしながらこちらをじっと見つめる小さな閻魔様相手に、真正面から言い切る。
「嘘ではないようですね」
「閻魔様相手に嘘をついても意味がないでしょう」
「それもそうですね。では、ありがたいお説教の時間としましょうか」
「それでは私はまだ仕事がありますので。お酒は大人になってからですよ」
軽い嫌味を言って離れる。まだ仕事があるから説教は勘弁して欲しい。
「私はあなたよりも圧倒的に年上です!!」
そんな子供のような声を背中に、また燕尾服で酒を運んで回る。
「待ちなさい。大体あなたは普段から婚約しているからといっていちゃつきすぎです。もう少し節度を持ちなさい」
「私は基本的に自分から求めたりはしませんよ」
軽く流しながら酒をまた運ぶ。あそこはつまみが切れてるな。後で持っていくか。
「求められたときにも断ることをしなさい」
「人目のつくところでは遠慮してますし、他人に迷惑のかからないところであれば大丈夫でしょう」
「むやみな姦淫はやめなさいと言っているのです」
「妻以外とは絶対にしないので問題ないかと。それに週に一度一人ずつ相手するにも四回はしなくてはいけませんし」
「相手に我慢してもらいなさい」
「はっきり言わせて貰いますと、それは無理です」
「何故ですか?」
「映姫さまが俺の立場だった場合、あの四人に対して我慢しろと正面から言えますか?」
まず無理だろうけど…
「……と、ともかく「あ、そうだ。先ほどむやみな姦淫と仰いましたが、なぜそう言い切れるほどの回数をしていると知っているのでしょうかね?」…~!!///」
顔を真っ赤にしてあたふたする映姫様、こうしてみると、小さい女の子にしか見えないな。
あと、浄瑠璃の鏡で人生を覗いたというのはわかっている。まあ、その人生の一部には当然夜の営みも含まれているわけで…見たんだろうな…全部…
「何をいまさら、死者の判決の際にその者の一生を見るんですから、たくさん見たんでしょう?今まで裁いた魂の数だけ」
「……」
さらに顔を真っ赤にしてその場に立ち竦む。こっちだって恥ずかしいんだ。夜の生活を全部見られたと思うと…
「そのくらいにしといてやってくれよ。いくら見慣れていても映姫さまは見た目どおりに初心なんだからさ」
「こっちだって夜の営みを全部見られたと思うとかなり恥ずかしいんだ。正当な仕返しだ」
「だからってあんまりいじめてるとその内手痛い反撃食らうから気をつけなよ。まあ、あたしも宴会場で説教はどうかと思うけどさ」
「なら止めてくれ」
「か~ッ!美味いねこの酒、人里の特級酒じゃないか」
無視かこのヤロウ。じゃない、アマ。
「招くなら最高のもてなしをする、とレミリアが言ってたからな。人里で軽い人助けをして譲ってもらった」
とは言っても子供を襲っている野犬を人里の外へ身体強化して投げ飛ばして、その子供を治療してやっただけだが。
「うんうん、人間も捨てたもんじゃないねぇ!酒も美味いしつまみも美味い!!」
「そうか。まあゆっくり楽しんでくれ」
追加の酒をテーブルに置き、空になった瓶を回収する。
「心配要らないよ。はじめからそのつもりだったからね。んで、あんたは飲まないのかい?」
「悪いな、酒は飲めない体質だ」
「ん~、そうか。なら仕方ないね。映姫さまが再起動するまで一人酒でもしておくよ。あんたの話を肴に飲むのもいいかもしれないけど、まだ仕事があるんだろう?」
「宴会がある間はずっとな」
「そうだね。それじゃ頑張りな。女誑しの刀弥君」
「少なくとも誑しではないぞ。妻以外には手は出さない」
「いやいや、美女を四人も侍らせておいてそれはないよ」
それを言われたらちょっと困るな。
「訂正しよう。そこまで節操無しではない」
「まあ、せいぜい頑張りな。夜のお相手大変だろう?」
「……まあ、な」
「あっはっは!恥ずかしがるこたあないよ。愛し合う男女が交わるのは当然のことだからね。で、どうなんだい?具合は」
「一発殴っていいか?」
小町の顎をアッパーカットで打ち抜いてから質問する。
「いたた…もう殴ったじゃないか…」
「あのな、俺が殴るって言葉を頭の中に思い浮かべた時にはもう相手を殴っているから意味がないんだ」
「ひどくないかい?」
「問題ない。それじゃまた」
今度は妖怪の山の面々のところへ酒を届けに行く。天狗は鬼の次に酒飲みだという話を風の噂で聞いたことがあるからな。
「文様!やめてくださいよ~!!」
「まだまだお楽しみはこれからですよ~椛~」
……見なかったことにしよう。烏天狗が白狼天狗の胸をもみ倒していたなんてことはない。ここから先はR指定になりかけるようなことになってなどいない。全くそんな事はない。
「おいにとり、見えてるぞ」
風呂敷型の光学迷彩で隠れているつもりだったのだろうが、足が見えているし、細かいところの色が微妙に違う。
「あちゃー、まだまだ改良の余地ありだね」
改良するしない以前に、風呂敷にするそのセンスをどうにかする必要があると思う。
「酒はどうだ?あまり進んでないようだが」
「そこまで酒飲みじゃないし、ちびちび味わいながら飲むのが性に合ってるんだ。刀弥、あんたはどうだい?」
「悪いな。行く先々で進められているが、行く先々で同じ回答をしてる」
「ああ、そういえばあんたは飲めないんだったね。こりゃ悪かった」
「気にするな。慣れてる」
「ところで、前に言ってた『MGS型光学迷彩』は完成した?」
「第一号は配線が電流に耐え切れずショートして没。二号は消費電力が大きすぎて実用性がないのと人間以外には通用しないから魔理沙に渡した。三号はラボにて製作中だ。基礎理論はできているんだが、霊力の変換機の方がうまくいかなくてな」
霊力や魔力をほかの物に変換するのはそう難しいことではないが、微妙な調節が難しい。能力で馬鹿食いするせいで適当に加減せずぶっ放すのは得意なんだが…
「いっそのこと霊力で直接動かせるように改造すればいいんじゃないかな?」
「一度やってみたが、回路が一発で消し飛んだ」
「う~ん、あとでちょいと設計図を見せてくれない?改良すべきところがあるような気がするんだ」
「宴会が終わったら図書館に来てくれ。そこで渡そう」
「ありがと。それじゃ、仕事頑張ってね~」
そう言ってまた酒を飲みだすにとり。少しずつとはいえ結構な量の酒を飲んでいるようだ。
…飲むだけ飲んで忘れて帰りそうだな…それでも問題はないからいいか。
「…?」
嫌な気配を首筋に感じたので振り向く。が、誰もいない。
「気のせい…?なわけないか。てゐ、人の作った道具でイタズラをするのはやめろ」
拳銃を懐から出して、何もない空間をにらむ。
「あはは~!やっぱばれてた?」
そう言いながら姿を徐々に現す人型、にうさ耳のついた少女。やっぱりてゐだったか。
「光学迷彩だからな。姿は隠せても妖気までは隠せない」
「なんだー、欠陥品か」
「普通の人間相手にはそれで十分だ」
ため息をつきながら銃をホルスターに戻す。
「というかなんでラボにあるはずの三号をお前が持ってるんだ?」
手に持っている機械にナンバースリーと刻印されている。ついさっきにとりと話していなければ忘れていただろう。
「ん~っとね、小悪魔っていうやつから盗ってきた」
「なるほど」
後でお仕置きでもしておこう。まあ、この兎詐欺は適当に…
「丸焼きと全身の皮を麻酔無しで剥ぎ取るのと、どっちがいい?」
料理しておこう。兎の肉は食うところは少ないが、味は悪くないしな。
右手にナイフを持ち、左手に等身大の火球を生み出して質問する。当然笑顔で。
「え~っと、両方とも拒否ってのは?」
「当然なしだ。答えないなら自動的に両方とも実行する」
「わ、わかった、ホラ返すから」
「よろしい。あとイタズラをするなら自分の物でしろ。人の物を使うな」
「はいはい。だってさ~、姫様はいつも通り喧嘩(殺し合い)してるし鈴仙はそれを必死になって止めようとしているし師匠はそれ見てニヤニヤしてるし、とにかく暇なんだよ」
「酒飲んで寝ろ」
「太るじゃない」
「薬の臨床実験でですぐにやせれるだろう」
まともな薬かやばい薬かどうかは本人の考え次第だが…
「そんなヤバイ痩せ方はしたくない」
「気にするな。ところで、そんなにイタズラがしたいのか?」
「もちろん」
即答か…さすが兎詐欺。純粋なう詐欺だな。
「そうだな…火はあるか?」
「持ってるよ。らいたーっていうんでしょ?これ」
「どこから…いや、愚問だったな。香霖堂から盗って来たか」
「失礼だね、ちょっと借りてるだけさ。死ぬまで」
「お前が死ぬまで後何千年あるのやら…」
「細かいことは気にしない。で、なにか火を使うイタズラがあるの?」
目を輝かせてこちらを見上げるう詐欺。使えば確実にぼこぼこにされるだろうが、責任は一切取らない。使うこいつが悪い。
「爆竹だ。導火線に火をつけて投げると音を立てて破裂する。これやるからどっか行け」
能力でそこにあるという結果を出して手のひらの上に出現させて渡す。
「へ~、んじゃありがたく貰っとくよ。あんがと」
「どういたしまして。ちなみにこれを使って起きた弊害については私は一切責任を負いません」
「いいって、自分でやったことには自分で責任を持つ。これ常識なり!」
やけに堂々と言い切ったが、いつもいつもいたずらをしてすぐに逃げていると思うのは俺だけか?
「それじゃあ早速…れーいせーん!!」
「ああもう!なによてゐ!!」
…にやりと深い笑みを浮かべるう詐欺、まあ面白そうだから止めるのは止そう。
「ちょ~っと付き合ってほしいことがあって…」
「そこはかとなく嫌な予感がするのは気のせいかしら?」
「うん、気のせい気のせい」
そういいながら後ろ手で導火線に火をつけるう詐欺。逃げろとは言わない。ただ、てゐ、あとで覚悟しておくことだ。
「本当?」
「本当…なわけないじゃん」
にやけ顔を上げ目の前にすっかり導火線の短くなった爆竹を放り投げる。
「キャッ!?」
「うわッ!!」
短く、大きな破裂音が連続で響き渡る。目の前で大きな音と共に破裂した爆竹に目を白黒させる鈴仙。あと予想以上の音にすっかり驚いているてゐ。二人とも驚いて固まっている。
「…こん…のクソ兎詐欺ー!!」
「うっぎゃ~!!」
出た、銃弾型弾幕。白いから座薬に見えないこともない、ものすごく微妙な弾幕。それを機関銃の如く零距離高速連射で叩き込む鈴仙。実にいい性格をしているな。
「大丈夫か?」
「そう見えるなら…師匠に診てもらい、なよ…」
「社交辞令みたいなもんだ。ずいぶんとボロボロにされたな」
「う、兎は耳がいいんだよ…ところで、あんたのせいでこんなにボロボロにされたんだよ?」
「責任取れ、とでも言うつもりか?前にも言っただろう。これを使って起きた弊害については私は一切責任を負いません。それとお前も自分でしたことには自分で全責任を負うって言っただろう」
ほんの一分前に言ったことも覚えてないのか?それともショックによる一時的な記憶喪失か?
「さあ?なんのことだったかさっぱり」
「丸焼きと麻酔無しで皮をはがれるの、どっちがいい?」
「すんません」
「わかればよろしい。まだ仕事があるからな」
「その割にはあちこち寄り道してるみたいだけど?」
「痛いところを突くな…」
「で、実際のところどうなんだい?誰か探してるのかな?」
ご名答。
「本当のところ、紫を探しているんだが見てないか?」
「残念ながら見てないよ。中国なら見たけどね」
「美鈴は…どうでもいいな」
だが、行ってみる価値はありそうだ。
「まあ、のんびり探すとしよう。動き回るのは得意だ」
「そっか。んじゃ頑張ってね。誑し君」
「刺身にするぞ?」
ナイフでなく、刺身包丁を構える。
「ごめんごめん、そこまで反応するとは思わなかったよ」
「はあ…俺がそれを気にしてるの知ってて言ってるだろ」
「もちろん」
「……」
本気で刺身にするか?いや、死ぬからやめよう。食中りになったら困る。
「…そろそろ行くか」
くだらない立ち話にも飽きてきた。というかコイツに付き合ってたらトラウマを抉られそうだ。
「刀弥、わらわに招待状が届いてなかったのは何故じゃ?」
…面倒なのが来たな。
「天、お前は人里で信仰を集めていればいいだろう」
「しばらくおぬしと会わんかったからの。消滅しそうなわらわを助けてくれたのにまだ一つもお礼をしておらぬ。というわけで飲め。神からの酌が「受けれん。未成年に酒を飲まそうとするな」っち…」
「大体、お前はどうしてお礼と称して迷惑なことばかり押し付けてくるんだ?」
「それがお礼だからじゃ」
「…映姫様、後は頼みます」
後ろで顔を赤くして立ち尽くしている映姫様の後ろに回り、ぽんと肩を叩いてからその場を離れる。天、お前は一度説教してもらえ。そしてお礼というものがどんなものか教えてもらえ。
「え?あ、はい。わかりました。では…神である天之巫女よ、あなたはもう少し神であるという自覚を持ちなさい」
「なんじゃ、貧乳。わらわに説教するつもりか?」
…ちょっと待て、悩みを抉るのは結構だが、相手を選べ。
「……………よろしい。ならば戦争です」
うつむいたまま拳を握り、それを震わせている。よほど怒っているようだ。
「小鳥の癖によく囀るのぉ」
「それは私の背が低い、と受け取ってかまいませんね?」
「小鳥の頭でよく理解した。といいたいところじゃが、せいぜい五十点じゃの」
「もういいです。あなたが泣いて懇願するまで殴るのをやめませんから」
-審判「ラストジャッジメント」-
いくらなんでもいきなりラストスペルはないと思うんだが?
「ぬるいわ」
-神樹「巫女の捧げられし大木」-
おお、いつの間にか弾幕を修得していたようだ。
弾幕を表現するなら、少しずつ先が細くなっていくマスタースパークから、大玉の弾幕高密度の弾幕が太い枝のように出ている。さらにその枝から小さな枝が伸びて、そこから葉が出て散るように一気に弾幕が放たれる。確かにこれは神樹と呼ぶにふさわしいな。
「しかし、閻魔様相手にはちょっと火力が足りないな」
はっきり言って格が違う。下位の神と、閻魔という最高ランクの神。どちらの方がより優勢かはわかりきっている。
「終わったな」
問答無用で叩き落された天。さあ、馬鹿は放っておいて美鈴を探そう。紫の居場所を聞けるかもしれないし。
ちなみに天の弾幕は、基本的にマスパと細いレーザーと大玉、小玉を組み合わせたものです。