いやー、仕事が忙しく、なかなか執筆に取り掛かれないんですよ。
というわけで遅くなりました。今回から少し連続した話が続きます。
宴会 準備編 前編
「刀弥君、久しぶりですね」
「異変が終わってからほんの二週間程度だろう。日にして十四日、時間にして三百三十六時間。分にして二万百六十分。秒にして「もういいです。それで、今日は私に愛を伝えに来てくれたんですか?」妄想もほどほどにしておけ」
外の世界にいたときにはもう少し控えめな性格だったと思うが、まあ環境が変われば性格も変わる。ということにしておこう。
「む~、ちょっとくらい夢を見させてくれてもいいじゃないですか」
「現実は甘くない。甘い夢を見ても辛い現実に絶望するだけだ」
親が死んでからの一時期は、両親と一緒に過ごした夢を毎日のように見た。見ているときは幸せだったが、起きてからは絶望した。
「はあ、遠まわしに夢なんか見るなって言いたいんですね?」
「その通り。神奈子か諏訪子はいるか?」
「諏訪子様は少し出ていますが、神奈子様ならいらっしゃいます」
居るのはわかっている。なんせお前のすぐ後ろに箒を持った見慣れた神様がいるからな。
「おや、あんたが来るとは珍しいね。参拝かい?」
「あんたが掃除とは珍しいな。明日は槍が降るか?」
二箇所に積み上げられた落ち葉を見て、皮肉のつもりで呟く。
「う~ん、大雪なら降らせることができるけど、槍は流石に無理だね」
「それはそうだ。槍が降ったら血の川ができる。で、今日はレミリアからの伝言を伝えに来た」
「ほほう、吸血鬼からの伝言か…宣戦布告かい?」
何をどう捉えたらそうなるのか、ぜひともご教授願いたいものだ。
「まずはそのいかれた思考回路をどうにかすべきだと思う。頭を吹っ飛ばせば治るか?」
「冗談だよ。で、その内容は?」
レミリアから渡された羊皮紙を広げる。長ったらしく書いてあるが、面倒なので…
「前略、宴会するから参加しろ。ディナーもあるよ、以下略」
「大・歓・迎!早苗、いいよね?ダメとは言わせないよ!」
両手を叩いて飛び跳ねる神奈子。神の威厳など微塵も感じられない。お前は本当に神なのか?
「神奈子様?まさかとは思いますが、境内の掃除を放り出していくつもりではありませんよね?」
「ギクゥ!ソ、ソンナワケアリマセンヨ?」
「へぇ……」
東風谷が暗い笑みで神奈子の後ろに回り込み、羽交い絞めにする。そして何をするかと思えば…
「ひ、ヒャッ!早苗!いきなり何するんだい!?」
神奈子の耳をぺろりと舐めた。いきなり何をするのやら…
「私ね…人が本当のことを言ってるかどうかわかるんです。いやまあ…ほぼ間違いありませんね。顔の皮膚を見ればわかるんです。汗とかでテカリますよね>その感じでわかるんです。汗の味を舐めればもっと確実にわかるかな。
この味は…嘘をついている味ですね……八坂神奈子」
冷や汗をダラダラと流しながらじりじりと後ろに下がる神奈子。もう逃げられないな。後ろは木だし、前には東風谷、いない方向には俺がいる。
「東風谷、ところでお前はいつからブチャ○ティになった」
「え?いつからでしょうか…まあいいでしょう。掃除は終わらせてから行きましょうね?」
「ううぅ…早苗がいじめるよ~…」
「お前はどこの小学生だ。手伝って欲しけりゃそう言え「手伝って」だが断る」
「ヒドッ!!」
「俺の最も好きなことは、絶望しかけの奴に対して淡い希望を抱かせ、そこから一気に絶望のどん底へと叩き落すことだ」
「鬼だよあんた」
失礼だな。俺は一応人間だ。一応。
「というのは冗談で、手伝ってやるよ。40秒で終わらすから待ってろ」
「あんがとねー」
感謝の気持ちの欠片もこもってない礼だが、無いよりはマシだろう。落ち葉を風の魔法で集めて、火の魔法で一気に焼却。
「落ち葉なら東風谷が風で集めればいいだけの話じゃないのか?」
「面倒ですし、仕事をしないのに信仰を求めてばかりの馬鹿神様にもちょっとは仕事をしてもらおうと思いまして」
「だとさ。巫女にまで見捨てられるとは、哀れだな」
「だったら信仰しておくれよ~…」
「嫌」
「頼むからさ~…今なら東風谷もついてくるよ?」
「神奈子様、私が刀弥君に貰われるのは決定事項ですから意味がありません」
他にいい奴がいると思ったが、完全に俺以外は眼中にないようだ。喜べばいいのか悲しめばいいのか…
「くっそ~…」
「あれ?刀弥じゃん。一体どうしたのかな?やっぱり参拝?」
「お前もそこの馬鹿と一緒か」
「ひどいねー。私は神奈子とは違うよ。崇神だし」
「あっそう。諏訪子、紅魔館で宴会があるんだが、来るか?」
「「もちろん!」」
いま、余分な声が一つ聞こえたような…
「おい萃香、なぜお前がここにいる」
「宴会と聞いてやって来ましたが、なにか?」
「……人数が増えたな。まあいい。何とかしよう」
メモ帳から一ページ破って、一文だけ書き込む。『鬼が参加』そして紙飛行機に折って、投げる。風に乗って飛んでいく紙飛行機、紅魔館に辿り着いたという結果を付与してあるので確実に届くはずだ。烏天狗に拾われない限りは…
「あ、文だ」
いきなり拾われた。相変わらず暇な奴だ。
「そうだな」
もう一枚書いて、飛ばす。今度はうまく風に乗って飛んでいった。
「それじゃ、明日の子の刻に紅魔館に集合。西瓜、この紙に書いてあるやつのところへ行って宴会に出るかどうか聞いて来い。参加費だ」
「私は西瓜じゃなくて萃香だよ!やってあげない」
「……」
いい使い走りになると思ったんだが、期待はずれだな。
鳥居をくぐり、飛ぶ前に一言。
「ロリ鬼、ツルペタ、幼女、ナイチチ、絶壁」
空に飛び上がる前に呟く。もちろん聞こえるように、だ。
「ウガー!待てー!!」
「待たない」
さて、次は……幽香か…今の時期は、秋の花の畑に行けばいるか。どこにあったか…
「私を探してるの?」
「ああ、そっちから出てきてくれるとは、これまた予想外だ。前略、宴会を開くから参加しろ。以下略」
「いいわよ。でもその前に、一戦願えるかしら?」
「お断りだ」
まだ仕事がある。仕事がなくても勘弁して欲しいが。
「やっと追いついたよ!」
「いい所に来た」
後ろを向くと、息を切らした萃香がいた。俺はまだ仕事がある。こいつに相手させよう。
「俺はまた今度にしてくれ。まだ仕事があるからな。今日はこいつが変わりに相手してくれるそうだ」
「ひょえ?うひゃー!!」
腕を掴み、幽香の方へ投げる。悪いな萃香、参加費は無料じゃないんだ。
「鬼が相手、相手としては不足無しね」
「え!?ちょ、待ってよー!」
「ご冥福をお祈りします」
捨て台詞を残して、その場を後にする。直後に閃光がほとばしるが、振り返りはしない。それをした瞬間消し飛ぶから。
「次は妹紅だな。慧音さんの家にいればいいが…」
メモ帳で呼ぶ相手を確認していると、かなり向こう、竹林の方向で火の鳥が舞っていた。妹紅とぐーやの殺し合いか。
「あっちか」
ちょうどいい、永遠亭の薬師と兎も呼ぶ予定だったしな。
「しかし、いつ見ても派手だな」
火の鳥が空を舞っている姿は、美しくも雄雄しくある。まあ、どれだけ綺麗でも殺し合いには変わりないが。
そうだ、アレがどのくらいの温度なのか、今度聞いてみよう。
「死ねや腐れニートオオォォ!!」
「あんたが死になさいよ!この焼き鳥!!」
殺し合いに巻き込まれないように遠くから観戦する。下手に手を出せば俺が死ぬ。竹林に火が回るが、それは兎たちが片っ端から消し止めている。偉い偉い。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアァァァァァ!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄アァァァァァ!!!」
おお、ラッシュの嵐。ラッシュでラッシュを迎撃するとは、曲芸師でも難しいだろう。
もはや弾幕ごっこじゃないな。完全な喧嘩だ。
「見ている分には面白いし、飽きるまで放っておこう」
喧嘩と火事は江戸の華とも言うし、何事も傍観が一番。ゆっくり楽しんでから用事を果たそう。
「見てないで止めてくれると嬉しいんですが…それとここは江戸ではありません」
ずいぶんと上から声が聞こえてきたので、上を向くと鈴仙が降りてきていた。
「止めたら止めたで矛先が俺に向くからな。不利益を被るのはごめんだ」
「そこを何とかして欲しいんですが...」
「他を当たれ」
俺は霊力はたくさんあるが、能力で馬鹿食いするから使えない。ついでに言うとニートとはあまり関わりあいたくない。主に永琳が理由だ。
「あの二人の殺し合いを止められる人物はあなた以外にこの場にいないから頼んでるんですよ?」
「慧音さんと永琳、俺が行くよりもずっといいストッパーがいると思うんだが?」
「師匠は人里の寺子屋へ健康診断に行ってるので今はいません」
そういえば、慧音さんが前に言ってたな…健康診断をするって…
「だったらてゐとお前で行けばいいじゃないか」
「いや、死にますから」
「俺だって死ぬ」
「あなたは殺しても死なないでしょう」
「いやいや、蓬莱人じゃないんだから流石に死ぬでしょ」
今度は後ろから。友人である兎詐欺の声がした。それには激しく同意だ。手足が千切れただけなら能力で何とかできるが、一瞬で全身消し炭にされればどうにもならない。
「その通りだてゐ。さっさと幸せにしてくれ。でないと用事が果たせない」
今この場での幸運は、『用事を果たすこと』これが現在の俺にとって一番の幸せだ。
「はいは~い、で、報酬は?」
「紅魔館での宴会にご招待」
「おk!」
その後一分と立たないうちに、二人のラッシュの打ち合いは終焉に達していた。
「ハァ、ハァ…」
「フゥ…自宅の…警備、ばかりしてたから…体力が…」
どうやらニートが劣勢のようだ。だが、直後に二人ともスペルカードを取り出して宣言した。
「神宝『蓬莱の玉の枝-夢色の郷-』!」
「蓬莱『凱風-フジヤマヴォルケイノ-』!」
あのカードじゃあ、ここも焼け野原だな。
「よし、逃げるぞ」
「「賛成!!」」
一気に背を向けて、全力で逃げる。直後、轟音が鳴り響き、強烈な衝撃波で辺り一帯は吹き飛び、爆風と熱風がそこらを焼き尽くす。
「ふ、ふふ、ふふふ…ヨッシャー!久々の白星達成!!十三連敗の汚名返上よー!!!」
「くそ…負けた…」
勝負はニートの勝ちとなったが…この掃除は誰がするのやら……
「全部私たちです」
「まあ、一週間も放っておけば直るんだけどね」
「……まあいい。鈴仙、紅魔館で明日の子の刻から宴会をすると永琳さんに伝えておいてくれ。参加は自由。お前も来てもいいから、好きにしてくれ」
「ちょっと、さっき私も招待したよね?どういうこと?」
顔をかなり近づけて話す兎。すこし近いぞ。もう少し放せ。
「VIP待遇だ。文句があるなら来なくていいぞ」
「まさか、喜んで行かせて貰うよ」
満足そうに頷いた。まあ、VIPと言っても他とそう大した変わりはない。強いて言えば、後でいろいろと持って帰れるくらいだ。
「鈴仙は?」
「私は、そうね。師匠が行くなら一緒に行かせて貰うわ」
「人数は多ければ多いほどいいと言ってたからな。ぜひ来てくれ。歓迎する」
それだけ言うと、今度はクレーターの真ん中で倒れている焼き鳥屋に話しかける。
「大丈夫か?」
「あのね、私に対してそれは意味のない質問だと思うわよ?」
「社交辞令だ」
「……まあ、それよりも、ちょっと恥ずかしいんだけど?」
「安心しろ。何も見ていない」
一度体が消し飛ぶほどの威力の弾幕だ。それを全身に受ければ、わかるだろう。当然服も消し飛ぶ。
まあ、つまり…目の前にいるのは全裸の女性なのだ。眼のやり所に困るので、とりあえず眼をつぶっておく。
「それは女として見られていないという意味かな?」
「文字通り見ていないという意味だ」
「……まあ、見られてないならいいわよ。で、なんでこっちに来たの?」
「明日の子の刻に紅魔館で宴会があるから来てくれ。それと、目を開けたらどうなる?」
「その場で消し炭」
まあ、当然だな。とりあえず、服を着てもらわないと話もできない。いつも妹紅の着ている服を、そこにあるという結果のみを出して、存在させる。
「とりあえず着ろ。着終わったら言ってくれ」
「どっから出したの?」
「何もないところから」
出した服を渡す。夜によく聞く衣擦れの音が聞こえるが、抑える。ここでうっかり目を開けば、その場で消し炭になるのは確定事項だ。
「…まあいいわ。着終わったからもう目を開いてもいいわよ」
「で、返答は?」
「遠慮させてもらうわ」
「残念。慧音さんも呼ぼうと思ってたんだが?」
「前言撤回、喜んで行かせて貰います」
身代わり早いな。まあ、これで竹林の客は全員招待した。よし、次行くか。
「魔法の森?誰かいたか…ああ、アリスと魔理沙か」
でも、あそこはキノコの胞子が多いからできれば行きたくない。だが行かないわけにもいかない。紙飛行機で伝えようにも場所がわからないんじゃどうしようもない。
「仕方ない。行くか……」
パチュリーに渡された地図を頼りに飛んでいく。兎詐欺は残念ながら
青年飛行中……
魔法の森上空に到着したのはいいが、木が生い茂っていて地上が全く見えない。吹き飛ばせば楽に見つけれるんだが、残念ながらここのキノコは良い実験材料になる。なので荒らすわけには行かない。
「っと、魔理沙―」
偶然、少し低空飛行している魔理沙を見つけて、声をかける。
「ん?なんだぜ?」
「宴会だ。明日の子の刻、紅魔館集合」
「当然参加するぜ!」
まあ、当然だろうな。ん?魔理沙ならアリスの家を知ってるかも…
「ああ、アリスの家知ってるか?知ってたら案内してくれ」
「わかったぜ!案内するからついてくるんだぜ!」
「できれば飛ばさずに安全飛行で頼む」
コイツのスピードは、能力を連続使用しなきゃ付いていけない。今日は掃除してから来たので、霊力はそんなに残っていない。
「お前なら大丈夫「じゃない。霊力も残り少ないから落ちる」お前って案外霊力少ないのか?」
「かなり多いほうだが、能力の燃費が最高に悪い」
いくら燃料を入れようと、それがあっという間になくなるのではあまり意味がない。燃費が好くてたくさん入るほうが良いに決まってる。
「霊夢が羨ましい…」
あれだけバカスカ霊弾を撃っているのに霊力が切れないのは、効率が良いからだ。俺と比べると違いがはっきりとわかる。例えるならば、F-1カーと一般乗用車のような物だ。F-1(俺)はトップスピード(最大火力)は高いが、長続きしない。一般乗用車(霊夢)はスピードはそこまでではないが、長距離を走れる。
「そう言うなって、能力の強さならお前が幻想郷で一番だろ?」
「使い勝手が悪い。燃費が悪い。強すぎて弾幕ごっこに使えない。役立たずもいいとこだ」
絶対に回避不可能の弾幕は使うな。と紫に釘を刺された。俺は弾幕未修得だから魔法と格闘と銃撃戦以外でどうにかするしかない。
「格闘や魔法ならともかく、銃だと弾丸が見えないのはかなり良いんだが、銃口の角度で弾道を予測されたら簡単に避けられる。それをカバーするために結果を作ってから撃って絶対に避けられない攻撃をするのに、それが禁止されたらどうしようもない」
過程を弄ればルールには適応されるんだが、亜音速で飛ぶ(種類に寄るが)小さな弾丸の過程を弄るのはかなり疲れるし、集中する必要がある。
「今日はよく喋るな。いつものイメージと違うんだぜ」
「俺だって何か話したくなるときくらいある」
もう自力で飛ぶのも面倒になったので、魔理沙の箒にぶら下がっている。握力は身体強化でどうにかしているので問題ない。
「そうか。意外だぜ」
「何がだ?」
「お前にもそんなときがあるんだなーって。いつもはもう少し冷静なイメージがあるからな」
……冷静なのは確かだな。昔のサバイバル生活のせいで話すのは苦手だし、人と接するくらいなら本を読むほうが好きだ。少し前まではここまで人と話すことはしなかった。
それが最近は、よく人と話すようになったような気がする。
「俺もずいぶんと変わったな。こっちに来てから」
「変化は人間の象徴だぜ」
「ほう、偶にはいいことを言うな」
「私はいつもいいことしか言わないんだぜ」
「嘘をつくな」
「嘘じゃないんだぜ」
さて、大分飛んだし、そろそろ着くか?