EX 宵闇の妖怪 前編
今日は久々に博麗神社にお邪魔しようと思って飛行中のところ、いつか見た闇の塊が現れた。
「あなたは食べてもいい人類?」
「Noだ。帰れ」
わざわざ相手をするのも面倒なので軽くあしらうことにする。
「ダメなのか~?」
「ダメだ。わかったらさっさと帰れ」
「それじゃ力ずくで頂くのだ~!」
…無意味だったか…
「だから俺は食べられない人類だって」
懐からナイフを取り出して構える。向かってくるのは妖怪、手加減は不要。間合いを詰めて全力の蹴りを頭めがけて放つ。
「ッツ!」
「会心の一撃だったはずだが…」
直撃するかと思ったが、うまく避けられて頭についているリボンを落とす程度にとどまった。
「う…うあぁ…」
「ん?どうしたルーミア」
なにやら頭を抱えてその場にうずくまってしまった。しかも細々と苦しそうな声を上げている。
ふむ、ちょっとだけ痛い目見せるつもりだったのだが、どうしたものか…
「具合が悪いなら永遠t…ッ!!」
闇が収束し、形を持ち始める。妖気が当たりに充満し、濃密な闇があたりを包み込む
「うあああああぁぁぁぁぁぁぁー!!!!!」
まさかとは思うが、ルーミアってかなり強い妖怪だったのか?
しかし、以前はそこまで感じる妖力は強くなかったはず。しかし、今目の前にいるルーミアは大妖怪と言っても問題ないくらいの妖力を放出している。
「わざわざ封印を解いてくれてありがとう。感謝するわ」
口調も雰囲気も明らかに違う。別人格か?
「封印というと、あのリボンか?」
「その通り。あなたの蹴りで偶然に解けたの」
どうやらあのリボンで力を押さえ込んでいたようだ。それでルーミアが蹴りを回避して、偶然に蹴りがリボン(封印)に当たって解けてしまった。
元凶は俺か…
「で、君は誰かな?お嬢さん」
子供らしさは消え去り、若干大人びた雰囲気の少女に話しかける。
「私もルーミアよ」
「二重人格か?」
「似てるけど違うわね。さあ、お腹も減ったし、あなたを食べさせて頂戴」
「残念ながらそう簡単に食われる気は無い。第一、食ったら怖い妖怪と吸血鬼と人間がやってくるぞ?」
「そのときはそのときで返り討ちにするわ。あなたの肉は美味しいかしら?」
「美味いかどうかは知らないが、規則正しい生活を送っているのは確かだな」
「それじゃあきっと美味しいわね。いただきます」
「危ないな」
闇が収束して剣の形を持ち、それが弾幕となって飛んできた。弾幕ごっこで使用される優雅さを求めた弾幕とは違い、相手をしとめることだけを考えた、速度の速い弾幕。
(剣の飛んでくるスピードはかろうじて視認可能な範囲、神経の伝達の過程を縮めれば軽く避けれるな)
そんな事を考えながらも、飛んでくる剣は徐々にその数を増やし、避けにくくなっている。
(仕方ない…)
「蛇符『お前に俺は殺せない』」
剣の弾幕はすべて外れ、周りに突き刺さる
「ずるいわね…なんて能力なの?表では能力を使っているところを見たことがないみたいだし」
「手品の種じゃあるまいし、自分の命綱をそうそうたやすく手放すわけにはいかない」
「ふーん…まあいいいや。食べることには変わりないし」
「負ければ大人しく食べられよう。俺が勝てば、そうだな。見逃してくれればそれでいい」
少し興味がわいてきた。だが、興味がわいたからと言って断頭台に首を突っ込もうとは思わない。
「別にいいわよ。どうせあなたは負けるんだし、踊り食いがいいかしら?それとも刺身?活け作りって言うのもなかなかいいわね。シンプルに丸焼きも良いかも知れない。どれがお望み?」
……まあ、少なくとも話は通じるということでいいか。理性がある分ルーミア(表)より会話ができるからまだマシか?いや、理性がある分余計にたちが悪い。
しかし、延々と避け続けるのにも疲れた…かといって気絶させれば元に戻る可能性もあるからそれは避けたい。せっかく新しい相手に出会ったんだ。認識をせめて食糧から知り合い程度にはランクアップしてもらいたい。
「さて、一方的に避け続けるのにも少し疲れた。ここらであきらめてくれる気は「無いわ」そうか。それじゃ一発当てればこちらの勝ちでいいか?」
「そろそろ本気出すわよ」
「あれで本気…なわけないか」
一瞬で、世界が変わった。一切の光の届かない、深海のような暗さ。しかし、なぜか安心する闇に包まれた。
「外界と内側を完全に遮断する結界の内側に中に、さらに入った者を取り込む結界を同時に展開するで正しいかな?ルーミア」
「正解。でも表じゃないのに気軽に呼び捨てにしないで欲しいわね」
「気にしない。これが解けるまで逃げ切れたら俺の勝ちか、それとも一撃入れれば勝ちか、どっちにする?」
「どっちでもかまわないわ。どうせできっこないし。それじゃ改めていただきます」
質量を持った闇が、捕食対象を襲おうとザワザワと蠢いている。
「…ちなみに料理するなら一撃で苦しまないように頼むぞ?あと刺身希望」
「善処するわ」
瞬間、闇に襲われた。
「それじゃ、お刺身でいただこうかな?…キャ!!」
「ちなみにさっきのは冗談だ。俺の勝ち」
何が起こったか分からないような顔をしているルーミア、ちなみにさっきの小さな悲鳴は俺が頭を小突いたせいだ。
「一撃は一撃、勝ちだ」
「…わざわざそんなこと守るとでも?」
再度闇の触手が襲いかかるが、全てナイフで切りはらう。
「いい加減にあきらめて食べられたら?」
触手による攻撃が無意味と知ったのか、今度は剣の弾幕を放ってきた。
「お前があきらめろ」
剣の弾幕を新たに取り出したナイフで弾く。二刀流は刀なら扱いにくいが、ナイフのような短い獲物なら話は別。腕の振りと手首の返しだけで次々と襲いくる弾幕をひたすらはじく。暗くて目は見えないが、音と気配で動きはわかる。
「嫌よ。ここであきらめたら食べ物がなくなるもの」
「食べ物なら紅魔館で分けてやる」
「それでも嫌。やっぱり人間が一番よ。家畜や魚には飽きたわ」
「我慢しろ。せめて他を当たれ」
「目の前に極上の餌があるのに我慢しろ、なんて言われても無理。霊力も魔力もたくさん。最上級の妖力に神力まで保有している人間なんて他にいないわよ」
「それでも我慢しろ」
「だから無理」
剣を持って切りかかってくるが、剣術なら妖夢以下だ。それほど強いわけでもないし、剣が異常なまでの切れ味を誇っているとはいえ、当たらなければ意味がない。
袈裟がけに切りかかってくるのを半歩体をずらして避け、切り返しの逆袈裟も一歩下がることで避ける。右での突きはナイフで剣の腹を叩いて逸らす。
「それ!」
「残念」
空気を裂く音が聞こえたので咄嗟に後ろに跳躍、さっきまでいた場所に剣の山ができていた。
「おしいなぁ…もう少しだったのよ?」
「だから言っただろう。お前に俺は殺せない」
間合いも開き、完全に銃の間合い。両手に持ったナイフを衝撃が増すように投擲、下手をすれば死ぬかもしれないが、俺の知る銃器の中で最強の威力を誇る『バレットM82』を使うことにする。
「死ぬなよ?魔弾『アンチマテリアル』」
ジャッカルの存在結果を上書きして、その対物ライフルに変える。肩に担いで構え、狙いを定め、撃つ。マズルブレーキによる反動の軽減があるとはいえ、肩が砕けるかと思うほどの反動が肩から伝わる。次いで轟音。弾道は過程を捻じ曲げて背後から弾丸が襲うようにしてある。
鋼鉄同士がぶつかり合う鈍い音が鳴り響く。どう考えても肉を抉る音ではないことは確かだ。
「ちょっと焦ったわ。防いでなかったら死んでたわ」
どうやら闇を固めて防がれたらしい。
「さあ、食べられる覚悟はできたかしら?」
せっかく開いていた間合いを一瞬で詰められた。ルーミアの顔が目の前にある。
「油断しすぎだ阿呆」
もう一本のナイフに手をかけ、能力を発動。
「え?」
斬るという過程を省き、斬ったという結果のみを作り出す。
斬った場所は、喉、足、腕。切断はしていない。
さすがに少女を殺すのは気が引ける。本気で殺すと決めればためらわないが。
「うう…痛い…」
動脈と静脈を外すように斬ったが、血は流れている。闇の世界は晴れ、空がのぞいている。ルーミアは地面に落ちて、流れた血によってそのきれいな金髪は赤く汚れている。
「喉をやられて話せるか。やっぱり妖怪ってのは頑丈だな」
これで行動不能でないなら殺すことも考えよう。
「諦めるならすぐに治そう。ついでに食事のおまけつきだ」
ライフルを拳銃に戻して突き付ける。
「…勝てそうにないなあ。仕方ないかな。うん、諦める」
「よろしい」
傷口に薬を塗って治す。さすが永遠亭の八意印。
「それじゃ、博霊神社は面倒だから後にして、飛ぶぞ」
「あら、招待したくせにエスコートしれくれないの?」
「エスコートするのは妻と子供だけ。それ以外は知らん」
さて、咲夜とレミリア、それとフランにどう説明するかが問題だな。まあ、納得はしてくれるだろうが。
「まあ、血まみれの服だといろいろと誤解されかねん。主に中国に。着替えはあるか?」
「無いわ。誰のせいだと思ってるの?」
能力できれいにするという手もあるが、霊力は飛行する分以外には残っていない。魔力も同じく。妖力神力は本格的に人間の枠から外れるから使いたくない。
「……我慢しろ。あきらめなかったお前の責任だ」
「責任は無いとでも?」
「無い。どうせ中国は寝てるだろうし、まあいいか。紅魔館で洗濯してもらえ。変わりに咲夜のメイド服か小悪魔さんの司書服でも借りろ」
薬莢を回収しながら話す。
「いいわね。たまには他の服っていうのも」
「しかし、表とずいぶんと違うな。フランと紫みたいだ」
「リボン忘れないでね。あれがないと戻れないから」
「はいはい、それじゃ行くぞ」
後ろから食いつかれないことを祈りつつ、紅魔館へ向け飛翔する。
「後ろから弾幕撃ってきたらその場で殺す。方法は心臓を貫いて頭と胴体を切り分ける」
「そんな馬鹿なことはしないわ」
「表ならありうるからな」
「言っておくけど、私に裏も表もないわよ。どっちも私。二人で一人なの」
「で、どちらも人食いなわけだ」
飛びながら話を続ける。相手は頭が回る分、策を練っている可能性もある。完全に気を許した瞬間一撃で命を刈り取るとか。そうなればこちらの負け。美味しくいただかれるのは勘弁だ。
いつの間にか100万PV突破してました。そのうち記念を書こうと思います。
EXルーミアの口調がよくわからないのでイメージとずれたかもしれません