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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
人と神様
前回の呪い騒動から数日、呪いは集団食中毒ということで丸く収まった。
多少無理があるかもしれないが、流石に『呪い』だなんて馬鹿正直に言っても誰も信じてくれるわけがない。一部例外がいるが…例えば、最近非常に影の薄い西藤先生

「影が薄い……か」
「影だけでなく頭も最近薄いですね」
「相変わらずドSだな」
「そんなになじられたいなら専門家を呼びましょうか?」

 主にUSCとして名高い幽香に。

「やめれ、俺にそんな趣味はない」
「しかし、後始末が大変だったぞ。教育理事会とかPTAとかに説明するのが」

 新聞に載らなかったのが奇跡だな。

「たすけてえーり~ん!!!!!と思わず叫びそうになりましたよ?」
「誰?」
「いやいや、関係ないことです」
「それはともかく、報酬とかはないのか?ただ働きは俺も嫌だぞ?」
「生徒のために尽くすのが教師ってものでしょう(凶れ)」

 先生のすぐそばに立てかけてある箒の過程と結果を捻じ曲げて、捻じ切る

「あれ?どうしたんでしょうか、箒が急に捻じ切れましたよ?」
「………(大汗)」
「返答はいかに?」

 次はあなたがこうなりますよ。そんな意味を込めて捻じ切れた箒を片手でいじる。
 ちなみにこれははったりのようなもの。能力は生物には使えないからな。

「ハイ、ソノトオリデゴザイマス」
「よろしい」

 そのまま荷物を持って学校から出る。
普段ならまっすぐ家に帰るか、買い物に行くかだったが、後始末をしてくれた東風谷に礼をするために守矢神社へと足を向ける。

階段を登りきると、鳥居の下に神奈子様がいた。

「あれ?どうしたんだいこんな所に」
「神奈子様ですか。先日の『箱』を処分していただいた礼をしに来ました。ありがとうございました」
「そうかい、なら私じゃなく諏訪子に言いな。私は特に何もしちゃいない」
「何故?」
「あ~、それはちょいと説明が面倒だから諏訪子に直接聞いてくれないかい?」
「なるほど、では神奈子様には奉納品は必要ありませんね」

 買ってきた野菜や果物の入った袋を持って境内に入る。

「待ってくれないかい?」

目を輝かせて詰め寄って来る神様。はっきりいって恐い。

「だが断る」
「うわっ!と」

 神奈子様に肩をつかまれるが、過程を短縮して50m を一歩で移動する。
 過程を縮めることで距離も縮めることができる。
それを繰り返して神社の裏の湖に到着。
そこには蛙と戯れる小さな子供がいた。諏訪子様だろう

「諏訪子様」
「ん?ケロケロ!」
「……」

 いきなり飛び掛ってきたので体を一歩ずらして避ける。そのまま地面に倒れこむ幼女、こう見ると神様の威厳というものが全く感じられない。

「ひどいじゃないか、神様の愛の抱擁を避けるなんて」
「神様の愛なんて貰っても困ります(てかいらね)」
「む~……それで、今日は何のようなの?東風谷を貰いに着たとか?それとも私?」
「どっちも有り得ない」
「有り得ないという事こそ有り得ない」
「それは置いといて、今日は以前東風谷に持ち帰らせた子供の霊と呪いの箱のお礼を持って来ました」
「おお、これはありがたいね」

 手を伸ばす諏訪子様に対して、袋を持ち上げて対応する。
手が空振りしてそのままこける。

「渡す前に一つ。
 あの子達は無事に成仏できましたか?」
「ん~?何だそんなことか。きちんとできたよ。呪いも完全に祓った。というより残滓程度しか残ってなかったから、仕事は楽に済んだよ。
あの子達はきちんと天に昇れたよ。
まあ、行く先が天国か地獄かは閻魔の管轄だけどね。ケロケロ」
「ありがとうございます。
それではこれを、俺にできる精一杯の恩返しです」

 しゃがんで目線を合わせて、袋を渡す。
 渡した瞬間前かがみになった諏訪子様(以下幼女)そのまま持ち上げようとするが、全く持ち上がらない。
ちなみに中身は、芋類各種、ごぼう、春菊、キノコをとりあえずたくさん。
近所の酒屋で一番いい酒を選んでもらって、それを五本ずつ。神様というのは大体酒好きであると俺は考えている。
秋刀魚、鯵、鯛、鰈、細魚、飛魚、鯒など、秋の魚各種。
 総重量は軽く見積もっても15キロ以上だと思う。

「……思いが重いね」

寒い。なんでだろうものすごく寒い。それはもうチルノが暴れた後のように。
「うまいことを言わずに重いなら素直にそう言ってください。本殿まで持ちますから」

 頑張って持ち上げようとする様は、まさに親の荷物を運ぼうとして荷物を渡された幼女にしか見えない。

「じゃあ頼むよ」
「はいはい」

 諏訪子様から袋を受け取り、それを本殿まで持っていく。

「力持ち~」
「高校男子たるものがこの程度で音を上げるわけがないでしょう」

いちいちジャッカルと同じくらいのもので音を上げていたら幻想郷ではやっていけない。

「到着、ここにおいて置けば良いですよね?」
「うん。そこでokだよ」

 中身が傷まないようにゆっくりと下ろす。今日の用事はこれで終わり。後は家に帰るだけだ

「今日は泊まっていかないのかい?」
「デジャヴがするのでやめておきます」

 諏訪子様には悪いが笑顔で断る。
東風谷ですらどうなるかわからないのに、これ以上無茶なことできるわけがない。

『運命だ、あきらめろ。お前にはハーレムがふさわしい』

 なんだろう、何もないところから声が聞こえてきた。そら耳だと思うので無視することに。

「ですが、俺のような人間のどこがいいんですか?触れれば壊れるような皹の入った陶器のような脆い脆い人間。長くても百年程度しか生きられない人間。それのどこがよろしいと」
「刀弥だけを見るなら、その身に纏う雰囲気。
自分を卑下し、何よりも他人優先という人にしては異常な生き様。そこに惚れた。
人間という種族で言うならば、その短い命をはかなく散らす前に築き、受け継ぎ、発展させる文化。向上心。
 私たち神や妖怪にはできないことだね」
「……『偶然』そう見えただけでしょう。私はそんな器用な生き方はできません」
「そんなに照れない。隠しても無駄さ。その能力、人には過ぎた力だ。
いっそ人の域から完全に出て見ないかい?
私たちのような神になるも良し、妖怪になるも良し。神になるなら手伝うし、歓迎しよう」
「それはなんとも魅力的な話ですね」
「なら……」
「ですが、俺は人の域であることを望みます」
「なんでだい?」
「確かに俺は妖怪にも神にもなれます。ですが、完全に人から外れることは望みません」
「なんでだか、聞いてもいいかな?」
「かまいません。
人であることへの執着、あるいは人でなくなることへの恐怖。とでも言えばいいんでしょうか。
人から外れるのが怖い。完全に人でなくなれば、今の俺とは違うものになりそうで怖い。魂も、考えも、全てが変わることが怖い。何よりも、変わることで紫たちに見放されるのが怖いんです。
ここからは少し長くなりますが、いいでしょうか」
「いいよ。続けて」
「東風谷から聞いたと思うんですが、俺は8歳の頃孤児になったんです。それから数年間、ずっと孤独の中で生きてきました。その孤独は数年間生活するうちに慣れてしまったんですが。
で、その慣れてしまった孤独を消し去ってくれたのが紫、レミリア、フラン、咲夜だったんです。
彼女たちに孤独を消してもらったから、温かさを知ってしまったから、もう戻れないんです。
彼女たちに見捨てられれば俺は確実に壊れてしまいます。例え考え方や存在が変わろうとも、そこは変わらないと思うんです。壊れたくないから、見捨てられたくないから変わりません」

言いたいことはすべて言った。文句があるならどうぞ

「なるほど~。でも、人から外れずにどうやって長く生きるのかな?」
「俺は死についてこう考えます。老いという過程を経て死という結果にたどり着く。だから老いという過程を消し去れば結果である死は外因的要因以外では訪れない。そう考えます」
「(作戦失敗か)それじゃあ仕方ないよね。あきらめるよ」
「ぜひそうしてください。それでは俺は帰ります」
「ありがとね。そのうちお礼はするよ」
「お礼の礼は必要ありません。では、失礼します」

 すっかり暗くなった空へと舞い上がり、家へと帰る。
魚の漢字の読み方を載せておきます。
秋刀魚-さんま 鯵-あじ 鯛-たい 鰈-かれい 細魚-さより 飛魚-とびうお 鯒-こち

普段よく耳にする魚の名前でも、漢字にすると分かりにくいです。