不運の主人公 後編
レミリア、入るぞ」
「いいわよ。入りなさい」
一礼して部屋に入る。ソファに座って足を組みこちらを見る、カリスマモードのレミリアがいた。
はっきり言って子供の背伸びにしか見えない。
「なんだ、もう戻ったの?面白くないわね」
「こっちはさっきまで全く面白くもなんともない事態だったんだが?」
工房で解呪しなければいつ解けるかもわからないような、たちの悪いものだったしな。
「へえ、その面白くない事態っていうのを聞かせてもらえないかしら?」
……紫に感化されたか?胡散臭い笑みだ
「きゃっk「あんまりに迎えが遅いから妖精メイドに頼んで図書館にいったんだけど、女になってたのよ」ニート、言わなくてもいい事を…」
「… 大変だったわね。それで、そこのニートだっけ?それはどうしたの?」
「薬師と喧嘩して逃げてきたんだ。で、今日は帰れないから泊めてほしいらしい」
「元はといえばあなたが原因じゃない?」
「やかましい、ニートに掛ける情けはない」
咲夜が時間を止めて出したであろう紅茶を口に含む。やはりいい腕だ。
「宿泊希望ねぇ……いいわ。薬の恩もあるし、泊めてあげる。刀弥、案内しなさい」
「了解しました、お嬢様」
「感謝するわ、永遠に幼き紅い月」
「レミリアは幼くはないぞ?体は小さいがな」
「刀弥!」
顔を紅くして抗議するレミリア
「やっぱりかわいいな、お前は」
過程を短縮して背後に回って、その小さな体を軽く抱きしめ、耳元で囁く。
「~~!!///」
顔を真っ赤にして気絶する。
「鮮やかなお手並みね」
ニート姫から拍手が送られるが、俺は拍手されるほどのことではないと思う。
「なに、コイツの弱点はよく理解しているつもりだ」
特にストレートな言葉に弱いとかな。
少し理解すれば非常にわかりやすい性格、一途なところも、小さな体も、全てを好きになってしまった。まあ、悪いことではないだろう。
「しかし、甘々ね」
「何が悪い」
「全く、どこの新婚さんよ…」
「あと一年で挙式だが?」
「そうだったわね。天狗の新聞だったかしら?
『幻想郷最強夫婦誕生決定!?挙式まであと3年!』まさか本当だったとは……」
「永遠の時を生きる姫様にはたいした暇つぶしにもならないと思うが?」
「超重大な記事、見たときには驚きで心臓が止まったわよ?」
「止まるかと思ったとか、そういう比喩じゃなくてか?」
「文字通り止まったのよ」
そこまで驚きだったか。まあ、どうせ死なないからいいかな?
「それは置いといて…フラン、隠れてないで出て来い」
「しっかり隠れてたつもりなんだけどな~」
「気配だけ隠しても、柱の蔭から羽が見えてたぞ」
「失敗だね、後ろから飛びつこうと思ってたのに」
「軽くなら受け止めてやれるが、全力タックルは流石にきつい。
それより何度目だこのやり取りは」
前に一度、外の家の中で角を曲がったところをタックルされたが、痛いなんてものじゃなかった。幽香に殴られたときと同じくらい。
「通算261回だね」
「いい加減に覚えてくれないか、俺は一応人間で、吸血鬼の全力タックルを受け止められるほど頑丈にできていない」
「私の案内忘れてない?」
「忘れてないけど後回し」
「それは執事としてどうなのかしら?」
「公私の顔はきちんと分けるほうなんでね」
とりあえず抱きついているフランを回避しながらニート「ニートと言わず私のことは姫様といいなさい」
「心を読んだ?」
「顔に書いてあるわよ」
そうだったか、まあいいだろう。客室に案内する。妖精メイドに任せておいてもいいのだが、その場合まともに働いてくれるかどうか…
「フラン、どたばたするな、せっかく掃除したんだから散らかすな」
「は~い。刀弥のけち…」
頬を膨らませているフラン、並の男ならころっと行くであろうかわいさだ。
レミリアもフランみたいにもう少し外見相応というか、もう少し素直になればいいのにとはよく思う。
「後でゆっくり遊んでやるから、な?」
「……本当?」
「ああ、本当だ。そこのニートとも弾幕ごっこさせてやる」
「私の意見は?」
「あると思ってたのか?」
「一応」
「まず無いな。まあフランもそう簡単に殺すような子でもないから、大丈夫だろう。
な?フラン」
「そうね、あんまりすぐに壊すって事はないわ」
「弾幕ごっこがいやならトランプでもいいぞ?」
「……じゃあそっちでお願いするわ」
……っチ、つまんね
「さりげなくひどいこと言わなかった?」
「気のせいだ」
「早く遊ぼうよ~」
フランが服を引っ張って催促してくる。
「引っ張るな引っ張るな、服が伸びるだろう」
「だって~」
「こうして見てると、夫婦というより仲のいい兄と妹みたいね」
「そうだな、夫婦って言うよりはそっちのほうが近い?」
「ひどい~!」
「悪かったよ、フランは俺の嫁、|Lieb meine Frau《愛しい愛しい我が妻》」
「うふふ、ありがとう!」
「……また私忘れられてるわね……」
「「なんだ、まだいたんだ」」
「……バカップル極まりないわ」
邪魔なニートが一瞬で消えた。また咲夜か?
「邪魔者はいなくなったわよ?」
「ありがとう咲夜、愛してるよ」
「私も」
花の咲くような笑顔でそう言ってくれる咲夜。
本当、俺にはもったいないくらいのいい女だ。
「わたしには~?」
「フランも、愛してる」
猫のように持ち上げて、目線を合わせて話す。
「む~、子ども扱いしないでよ~!」
「まだまだ幼いよ。いくら何世紀も生きてるとは言っても、精神は体に依存する。
もう少し育ってからだ、大人って言うのは」
「わかんないよ、そんなの」
「妹様も私くらいになればわかるようになるかと」
微笑ながら返す咲夜、やはり完全瀟洒と言われるだけあって、その笑顔には見入るものがある。
「ともかく、仕事を任せて悪かったな咲夜、昨日少し永遠亭で睡眠薬入りのお茶で歓迎されてきた」
「いいわよ別に。人気者は辛いって所かしら?」
「ふむ、外ではそうでもないと思うんだが?」
「十分人気だと思うわよ」
「そうね~、私たちがいるっていうのに包丁もって追いかけてくるクラスメートもいるし」
ああ、いたなそんなの。家に押しかけてきたところを紫に縛られて罵られて……思い出したら涙が出てきた。あれ以降あの女子は変な性癖に目覚めたとか……。アレはもはや性癖と言うよりは、もはや病気に近い。病名をつけるとすれば、『被虐性嗜好症候群』か?
「俺はそれは人気には入らないと思う」
「「十分人気だと思う」」
「まあ、今夜はいつも通りパチュリーに魔法の講義を受けるから、相手できないが我慢してくれ」
「仕方ないわね」
「終わったら絵本読んで~」
「はいはい」
そうして紅魔館での夜は更けていった
不運の主人公は今回で終了、いくつか日常編をはさみ異変に入ろうと思います