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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
厄神様、助けてください。そう言いたくなるような状況です。
そして、いつもよりも長いです
不運の主人公 前編
今は永遠亭の客間、ではなく病室のベッドに座っている。身長は高くもなく小さくもないことは自分でもよくわかっている。
 それなのに......

「なぜ、足が床に着かない......」

 着ている服も、赤青のツートンカラー。しかもかなり大きい。恐らく永琳さんの服だろうが、あの人はそこまで大きくないはず...。

「いい加減現実逃避はやめよう...はあ...」

 備え付けの鏡を見ると、そこには自分の子供の頃そっくりの子供がいた。と、いうよりも自分そのものなんだが...

「......」
「あ、起きましたか?...」

 鏡で今の姿を確認していると、ふすまが開き、鈴仙が入ってきた。驚きのあまり口を抑えている。

「何か用か?ないならさっさと出て行ってくれないか?」
「師匠に様子を見てきてって言われてきたんですけど...その、かわいいですよ?」
「俺は男だ。かわいいなんて言われても全くうれしくない」
「でも、かわいいのは本当ですし...」
「だからうれしくないと言っているだろう」
 
 そうやってグダグダと話していると、今度は永琳さんが入ってきた

「あらあら、やっと起きたのね。それで、調子はどう?」
「体調で言うなら万全、気分で言うなら最悪。俺が寝ている間に何をした」
「ちょっと新薬の実験台に」
「せめて本人の同意を得てからにしろ」
「だって頼んでも確実に断るじゃない」
「当然だ。効果のわからない薬ほど怪しいものなんかない」

 外ではラットで実験してから悪影響を及ぼさないとわかった上で人間に薬を投与するものだ。
 なのにこの人はいきなり人体実験に移るから、恐ろしいにもほどがある。

「おまけにそこの偽耳にもかわいいなんて言われたしな。
 不愉快だ」
「偽耳!?」
「異変のときに耳を掴んで引きずり回したときに、付け根に何かボタンみたいなものが見えた。
 付け耳だろ?それ」
「あう!!」

 かなり落ち込んでいる。まさか本当につけ耳だったとは......。

「それはともかく、結構にあってるわよ?」
「確かに子供の頃は女顔と言われてたがな、わざわざ女物の服に着替えさせる必要なんかないだろう。
 しかもあんたと同じ赤青のセンスの欠片も感じられない服装だなんて、拷問にもほどがある」
「..........へぇ」

 あれ?もしかして、地雷踏んだ?しかも対戦車地雷。

「そ、それは言っちゃダメです!早く逃げてください!!」
「言われなくてもそうさせてもらうつもりだ!」

 過程を短縮して、ふすまをぶち破り逃げる。それと同時に弓矢と弾幕が飛んできた。

「俺は(一応)人間だ!頭や心臓を潰されても生き返るあんたらとは違うんだ!!」
「知ってるわ。だから死なないギリギリのところまで痛めつけてから回復させてまた痛めつけて......いえ、薬の実験台もいいわね」

 こ、怖わい......目が完全に逝ってる......。しかも背後に真っ黒なオーラが...

「てゐ!たすk「無理」ふざけんな~!!」
「うきゃー!!」

 逃げようとするところを耳を掴み、えーりんに投げつける。恨むなよ?

「恨むわ~!!!」
「あら、てゐ?あなたまで私に歯向かうつもり?」
「ま、まさか、私が師匠にそんなことするわけないじゃないですか」
「お仕置きが必要ね」
「イヤーーーーーーーー!!!!!」

 ずいぶんと後ろのほうで大きな悲鳴が聞こえる。死ぬなよ?悪友

 少し飛んで輝夜の部屋、相変わらずゲームばかりしているニート姫の部屋に入る。

「輝夜!えーりんを止めてくれ!お前しかあてがない!!」
「......誰?」
「俺だよ!黒羽刀弥だ!薬の実験台にされて小さくなったんだよ!!」
「センスないわね。それで?えーりんがどうかしたの?」
「センスがないって言ったら「見つけたわよ?」...こうなった」

後ろの襖が勢いよく開き、すごい密度の邪気が叩きつけられる。

「それは当然の結末ね」
「姫様?さっきの言葉もう一度言ってくれませんか?」
「いやいや、えーりんのセンスは高次元過ぎて私には到底理解できないってことを少し...」

 それは遠まわしにセンスがないと言ってるような物だぞ?

「遠まわしにセンスがない、とおっしゃりたいのですね?」
「まさか、私がそんなことを言うわけないじゃない」
「言い訳は不要です。後で薬の実験に協力してもらいますから、そのつもりで」
「絶対嫌よ。逃げるわよ」
「大賛成。護身『スタングレネード』」
「ッツ!!」

 スペルカードを発動して目くらまし。そのまま全速力で飛翔する。

「いや、うまくいくかどうか不安だったが、なんとかなったな」
「そうね。月の頭脳を出し抜くなんて、意外と頭いいの?」
「そうでもない」

 雑談をしながら一路紅魔館へ、すると......

「あら、誰かと思ったら輝夜さんと...誰?」

 野生の烏天狗が現れた。...訂正、射命丸文が現れた

「刀弥だ。永遠亭の薬師にやられたと言えばわかるか?」
「それはそれは、ご愁傷様ですね。ところで、その......なんとも言いがたいハイセンスな服装もその薬師に?」
「そうだ」
「ところで、なんでそこの姫様と一緒にいるんですか?」
「二人して服のセンスがないと言ったら......」
「ひどい目に合わされそうになったから逃げてきたの」
「ほほう、具体的にはどんな感じでした?」
「前に一度言ったことがあったけど、ひどかったわね...死なないから適当に調合した薬を何度も何度も飲まされて、注射されて、肉体は死なないけど、精神的に死ぬかと思ったわ」
「「それはひどい」」
「でしょ?」
「花の妖怪もびっくりなドSっぷりですね」
「あれほどマッドドクターという言葉が似合う奴は他にはいないな」
 
 しかし、この薬の効果はいつまでなんだろうか?
 薬の成分がわからないから能力で解除できないしな...

「とりあえず、いつまでもこの服装でいるのはかなり精神的にきついものがあるから、着替えの置いてある紅魔館へ早いところ戻りたいのだが」
「案内しろ、ですか?」
「正解。地図を永遠亭に忘れてきてな」
「仕方ないですね、まあちょうど紅魔館に取材に行くところでしたし、いいでしょう」

 着替えを取りに行くだけでなく、実はもう一つ用事がある。
 パチュリーなら何かわかるかもしれないからな。
 正直言ってあいつに頼るのは気が引けるが、それでもあの薬師よりはましだ。

「私も行ってもいいわよね?」
「暴れない限りは大丈夫だ」 

 まあ、問題は美鈴なんだが、あいつ、俺の事わかるかな?


 ..........飛行中


「そろそろ見えてきましたよ」
「そうだな、......やっぱり寝てたか」

 いつも通り眠っている門番、紅美鈴。よく解雇されないな。それが不思議でならない

「zzz......」
「起きろ中国」
「う~ん、さくやさ~ん、ねかしてくださいよ~zzz」

 いつものこととはいえ、やはり職務怠慢なことにはかわりない。

「後十秒以内に起きろ」

 耳元で囁くが、起きる空気は全く感じられない

「7,6,5,4,3,2,1」

 起きない。

「Beschränkung《拘束》」

 魔法で拘束して身動きが取れないようにする。
 しかし、これでも寝たままとは、あきれを通り越して尊敬に値するな。

「zzz......」
「確か湖までは5、600mくらいだったよな?」
「そうですね~、一番深いところだと、門の中心からまっすぐ700mですよ」
「そうか、恨むなら己の態度を恨めよ?」

 クローバーの5、主に物体の質量を変えるのに使う。それを美鈴のおデコに貼り付けて、湖の方向へ全力で投擲する 

「飛びましたね~」

 数秒後、20mほどの水柱が上がった

「随分と大きな水柱ね。少しおかしくない?」
「普通なら、な。湖の真上で質量を30倍にした。
 美鈴の体重が50kgだとすると1500kg、+100mからの落下だ。衝撃もかなりのものだろう」

 速さがどのくらいになるかは、計算が面倒なのでしないが、衝撃は速度×質量、だったか?
 まあ、毎回サボっている門番にはちょうどいいだろう。

「あら、大きな音がしたから来てみたんだけど、天狗に姫様に、誰?その子は、刀弥に似てるけど...」
「似てる、じゃなくて本人なんだが?」
「どうしたの?」
「永遠亭の薬師にやられた」
「能力で解除できないの?」
「成分がわからないと解除できない。
 そういうわけで、パチュリーに何とかしてもらいたいんだが?」
「ああ、その前にその服を着替えましょう。屋敷に合わないわ」
「合う合わない以前に、センスの悪さが度を越している」
「服を準備するからこっちに来て頂戴。あと、そこの2人はどうぞ中でくつろいでいてください」
「まともな服があるといいんだが…」

 青年改め少年着替え中

「咲夜……」
「何かしら?」
「なんでメイド服なんだ?」
「あなたの今のサイズに会う服がそれ以外に無いの」
「鼻血を垂れ流しにしながら獲物を見つけた飢えたオオカミのような視線で見つめられているあたり、故意としか思えないのだが?」
「気のせいですわ。(……ちょっとくらい味見しても罰は当たらないわよね?)」
「今とてつもなく嫌なことを考えなかったか?」

 咲夜の息は荒く、目は赤く染まっている。
しかし、なんだこの妙な威圧感は、動けない…

「と思ったら、縄で縛られているだけか」
「それじゃ、頂きます」
「ちょっ!やめ!」

 そのまま床に押し倒され…以下自主規制

 しばらく後

「まさか食われるとは思ってなかったぞ」

 乱れた服装を正しながら話す。
「いいじゃない、お互いに楽しんだんだから。でも、子供でもサイズが変わらないのは流石あの医者ね。気が利いてるわ」
「こっちはいい迷惑だ」
「それじゃ、そろそろお嬢様たちにお披露目しましょう」
「嫌な予感しかしないのは何故だ?」
「気のせいよさ、逝きましょう」
「字が違うぞ」

 必死で抵抗するも、子供の体なのでなすすべもなく捕まった。

「お嬢様」
「入りなさい」
「失礼します」
「…………」

 部屋に入ると、フランとレミリアが仲良くお茶を飲んでいた。

「刀、弥なの?」
「刀弥?」
「そうだ。二人ともよくわかったな」
「それは、まあ、匂いというか気配でわかるんだけど、どうして子供の体にメイド服?」
「体は永遠亭の薬師に、服は咲夜に着替えさせられた。」

 ため息をつきながら説明する。

「ということだ。わかってくれたか?」
「ええ。大変だったわね」
「大変だねー」
「それにしても赤青の服なんてせんs「それ以上言ったらあのマッドドクターがどこからともなく飛んでくるから言うな」む~!ん~~!!」
「悪い悪い」

 口だけをふさぐつもりが、余計なところまでふさいでしまったようだ。今度からは注意しなければ…

「でもまあ、あなたの幼少期の姿を見れてうれしいって言えばそうね」
「そうだね。私、今の姿の血を吸ってみたいわ」
「あらフラン、奇遇ね、私もちょうどそう思っていたところよ」

 そういってにじり寄ってくる2人、当然貧血になるのは嫌なので…

「いくら妻の頼みとはいえ、貧血になって学校を休むのは嫌だぞ?」

 逃げを選択する。前にも言ったが、たかが数ccの血液のために何十ccもの血を犠牲にするのは嫌だ。ついでに言うと、RH-のBなので余計に血を吸われる羽目になる。

「待ちなさいよ、なにも取って食べようってわけじゃないわ」
「だったら何だその目は。あきらかに獲物を狙う獣の目だぞ」
「そうそう。だから~」
「無視か?」
「大人しく…」
「「捕まりなさ~い!!」」
「無視だな。だが貧血は勘弁願いたい」

 過程を短縮、瞬時に背後に現れる二人から離れる。

「あきらめろ、血を吸うならせめてグラスで行儀よく。お嬢様の名が廃るぞ」
「私はそんなの別に気にしないから大丈夫」
「フラン、お前も姉と同じで毎回血をこぼすだろう。
直接飲むのはこぼさずに飲めるようになってからだ」
「けちー」
「無茶言うな」

 再び過程を短縮、二人の背後に回る。

「「え?」」

 そのまま首に手を回し、引き倒す。といっても倒れたところはソファーなので怪我はしない。

「イタタタタ…」
「なにするの刀弥~」
「そりゃこっちのセリフだ。今まで2人とも何度俺を貧血にしてきたつもりだ」
「「5回?」」
「両の手の指じゃ数え切れないほどだ」

 2人とも、妙なところで息が合ってるな。これも、ひとえに俺と咲夜の努力のおかげ(だと思いたい)

「けちね」
「そうだね」
「だからグラスで飲むならかまわないって何度も言っただろう。
それに以前フランが間違えて血を入れて吸血鬼になりかけたのは焦ったぞ」
「私はそんなへまはしないわ」
「可能性が一%でもあるなら回避したいところだ」
「ッチ…」
「なぜそこで舌打ちをする?」

 まさか、以前のは事故ではなく故意か?

「それはともかく、図書館へ行ってくる」

一刻も早くこの状況から抜け出したいところだ」
「声に出てるわよ」
「そうだね」
「あきらめてくれたようで何よりだ。邪魔はしないでくれよ」

 後ろで血をよこせーとわめいている馬鹿吸血鬼、しかし、その程度で止まるほど俺は甘くない。 
図書館へ向けて歩き出す

「パチュリー」
「………………誰?」
「お前もか…」

 わからないのも無理はないが、あの薬屋は相変わらず無駄なところで才能を発揮する。いい加減にしてもらいたいところだ

「あら?そのかわいらしいお嬢さんは?新しく入ったメイドでしょうか?」
「小悪魔さん、容姿と姿が変わったとはいえ、執事長をメイドと間違えるとは感心しないな?」
「も、もしかして…」
「刀弥?」
「その通り。事情は……説明するのも面倒だ。
 パチュリー、お前ならわけのわからない薬でも治せると思うが、大丈夫だよな?」
「成分によるわね。それにしてもずいぶんかわいらしくなったじゃない」
「まさに絶世の美『少女』といったところですね」
「女顔とはよく言われたが、この歳で美少女扱いされてもうれしくない」

 スカートからトランプを引き出す……

「ちょ!」
「待ちなさ「だが断る。俺の一番嫌いなことは親を侮辱されること。そして、女扱いされることだー 永久凍土!『極点』!!」

チルノのマイナスK、絶対零度とまではいかないが、それに近い温度の空間凍結魔法を使用する。
 周りに人体の軽く数倍はある巨大なツララを大量に発生させ、それを砕くことで氷の弾幕を発生させる。その砕けた氷同士がぶつかり合うことでさらに細かい弾幕が発生する。
 

「日符『ロイヤルフレア』少し落ち着きなさい」
「何を言う、俺は常に冷静だぞ」
「嘘おっしゃい、だったらさっきの物騒極まりない弾幕は何?相殺しなかったら図書館全部が凍ってたわよ?」
「後で溶かすから問題ない」
「そう。それで、薬の解除だったわね、血液検査で成分を調べるから工房へ行きましょう」
「そうだな。そうだ、小悪魔さんは?すこし渡すものがあったんだが」
「あなたのすぐ後ろで冷凍されてるわよ」

 そう言われ、後ろを振り向くと、カチコチに凍りついた子悪魔さんがいた。

「……」
「……」
「どうしよう?」
「溶かすからどいてなさい 火符『アグニシャイン』」

 そういわれてどくと、すぐに火の魔法で溶かし始めた。

「うう、なんで私だけいつもこんな扱いを…」
「「さあ?」」
「2人ともひどいです!!」

そういって暴れ始める小悪魔。手当たり次第に弾幕を放ち、本棚を破壊していく

「どうですか!私にだって力はあるんですよ!!」

 力を誇示するのはいいんだが、これ以上暴れられると掃除が面倒だ。

「もう一発逝っとくか?」

 少々暴走気味な小悪魔に対して先ほどのスペルを構える

「私がヤるわ」
「頼む。ん?」

 そのときだった。壊れた本棚が倒れてきた。突然のことに反応が遅れる

「うわ!!」

 能力を行使しようにも遅すぎるタイミング。そのままなすすべもなく本の雪崩に押しつぶされる。
 本のなだれに押しつぶされた直後、すさまじい爆音が聞こえてきた。恐らく決着がついたのだろう
 
「困ったわね、後片付けが面倒だわ」

 俺の心配よりもまずそっちか。相変わらずひどい奴だ。

 『本棚は倒れていない結果』を出してそのまま這い出る。明るいところへ出ると、体の大きさが元に戻っていることに気がついた。

「お、体が、も、と……に?……」

 体の『大きさ』は元に戻った。しかし、それよりももっと大きな問題が発生した。

「体が、違うわね」
「は、はは、はははは……」

 ここまで来るともう笑うしかない。なんたって体が『女』になっているのだから……