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  幻想郷訪問録 作者:黒羽
今回はシリアス多めです。しんみりです。そして短いです
墓参り
 今日は母さんと父さんの命日。当然墓参りに来ている。

「父さん、母さん、俺は元気に過ごしてますよ。嫁も4人、3人、人じゃないのがいますけど、仲良くやってます」

 墓に花を供え、線香も火をつけておく。

「父さんと母さんが死んでからもう9年が経った。けど、心配はいりません。学校も楽しく通ってる。多少の問題はちょくちょくあるけど、心配されるほどのことではありません」

 涙は流さない......笑顔で手を合わせる。泣けばきっと心配させるだろうから

「そういえば、この前閻魔さまに会ったけど、二人が天国に行ったか地獄に行ったか聞きそびれたよ......」

 天国か、地獄かはどうでもいい。できれば二人がきちんと天国に行っていることを願う

「二人はきっと天国だろうと思う。もしかしたら幽霊になってそこらをさまよってるのかな?」

 それはない......けど、希望にすがりたいような気持ちはある

「もうそんなことはないってことは知ってるんだけどね......」

 もしも幽霊だとしたら、見えているはずだ......ここにはいろいろな幽霊がいるから......けど、その中に両親はいない

いままで、何度も来て、話をした。もう会えない事もわかってる。声が届いていないこともわかってる

「けど、やっぱり......」

 会えないのはさびしい......今まで何度も来て、思ったけど、贅沢を言うようだけど、もっと一緒に過ごしたかった......
もっと一緒に遊んでほしかった......
もっと怒ってほしかった......
もっといろいろなことを教えてほしかった......
もっと思い出がほしかった......

もっと、愛してほしかった

「人を一人殺しておいてそんなことを思う資格はないと思うけど、やっぱりさびしい」

 人間失格。そんな言葉がお似合いだろう。いくら正当防衛とはいえ、相手が強盗とはいえ、人の命を奪ったのだから

「話は変わるんだけど、俺は成人したら、幻想郷の守護者になろうと思う」

 特に理由はない。必要ないとも言える。初めて自分の意志でのわがままだ、少しくらいならいいだろう

「守護者になって何かをする。というわけではないけど、何か『守るもの』が形だけでもいいから欲しかったんだ。
 外での生活は当然捨てない。両立させるよ」

 守るものはすでにある。紫、レミリア、フラン、咲夜、天にアマノ、それだけじゃなく幻想郷も守るべきものとして考えている。この力はそういったもののために使う。それを脅かすものを排除するため。楽園を侵すものを排除するために使う

「力には溺れない。
 力っていうものは『壊す』もの。『壊す』対象を選ぶことで何かを『守る』ことになる。父さんが教えてくれたことだよ」

 7歳の誕生日だったか?そのときに話してくれたことははっきりと覚えている

「この力を手に入れたころは力に振り回されてたけど、今はきちんと制御してうまく付き合っているから安心してていいよ。」

 この力は人が持つには過ぎたものだ。使うことに慣れてしまえばそれでおしまい。あとは力に飲まれるだけ。
 だが、そうならないために、今まで『自分のため』と思って使ったことは一度もない。常に他人のために使ってきた

「話を戻すよ。幻想郷の守護者になったら、きっと俺が死ぬ頃には二人は転生していると思う」

 人殺しには過ぎた親だった。だが、願わくば、見守っていてほしい......

「それじゃ、そろそろ帰るよ。次はお盆に来るから」

 終始笑顔を崩さずにいたが、そろそろ限界が近い。こらえていた涙があふれてくる......

「......さようなら......また来るよ......」

 墓に背を向け、別れを告げる。流れる涙を両親の眠る墓に見せないように......