スキマと話し合いと学校と
学校へ行く途中、ふと気になったことを聞いてみることにした
「なぁスキマ」
「スキマじゃなくって『紫』って呼んでちょうだい」
「・・・結婚式は妖怪の山でいいんだよな?」
妖怪の山で式を挙げるのは、こいつの提案だった・・昨日、いやその前か・・・
「式を挙げるなら妖怪の山で」夢の中にあらわれてそういった。
(夢の境界をいじって自分の夢と同期させたらしい)
こいつは山の妖怪たちにはあまり好かれていない。
それなのになぜ式の会場を妖怪の山を選んだのか。それが気になっていた
「なんで?」
「お前の容姿は人間に近いから。それと聞いた話によれば山の妖怪達にはあまり好かれていないらしいな」
もしも妖怪の山の住民たちが許可してくれなかった場合のことになるが、
前者は人間に近い容姿をしているので外でしても良かったはずだ。
後者はなんで歓迎されないと分かっていながらそこを選んだのか。
それが気になっていた
「・・・幸せはみんな平等に。それがいいじゃない」
「三人は歓迎されるかもしれない。だがお前は確実に歓迎されない。それは不平等じゃないのか?」
「私は外であなたとの時間を多く取れる。けど彼女たちはそうじゃないでしょう?」
それは確かにそうだ。だが・・・
「確かに。だけど、お前の能力なら認識の境界をいじって普通に外へ連れ出せるだろ?
なんでそれをしない」
俺も彼女たちとの時間も多く取りたい。それこそお前とも一緒に、みんなで過ごしたい
「本音を言わせてもらえばね、あなたを独占したいって思ってるの・・・それを他の三人よりも長くいることでごまかしている・・・」
独占したい。相手を自分だけのものにしたい。
だが、それは相手のことを考えないと同義でありながら、相手のことをもっとも強く思う感情でもある。
歩きながら話を続ける・・・
「なら、なんでそれをしない?自分をごまかすのは辛くないのか?」
俺だってそうだった。両親をなくし、常に孤独だった・・・それを必死でごまかして、我慢してごまかして、我慢して・・・慣れるまでは辛かった。
本当に辛かった。
だが慣れるべきことではなかったが、もう慣れてしまった
レミリアも、フランを地下に幽閉して当主としての責任で自分をごまかしていた。
姉としての感情を封じ込めて
俺がもしもあいつらと出会わなければ、あのままだといつか壊れていただろう・・・
「それをしたらあなたはどうする?愛想を尽かす?私を捨てて、他の三人のところへ行く?それとも三人を捨てて私と過ごす?
どうもしないでしょうね・・・あなたはそういう人ですもの」
おそらく血を吐くような思いで話しているのだろう。
「その通・・・いや、違うな・・・『俺の存在を消す』いや、『最初からいなかったことにする』な。俺が消えれば万事解決。俺が元で争うようなら消えるよ。文字通り」
そうなった場合、誰もが傷つかないですむように、『結果を消す』な・・・
「そう・・・そうなってほしくないから私は我慢する」
「だが、自分をごまかすのはやめろ。見てるこっちが辛くなる」
「そうね・・・このときだけ素直にならせてもらうわ。あなたが好き。他の何よりもあなたが好き・・・あなたのためならすべてを捨ててもかまわないくらいに・・・」
それはいくらなんでも買いかぶりすぎだ・・・俺はそこまで尽くしてもらっていいような存在じゃない
「俺は一人間。ちっぽけで安っぽい、何処にでもある一つの命だ。
お前たちにすれば吹けば消えるろうそくの炎みたいなもの。
なのになんでそこまで尽くそうとしてくれる?」
「あなたは、自分のことを過小評価しすぎよ。
あなたは何処にでもいそうで何処にもいない。
ここにしかいないの・・・だから、そんな事は言わないでほしいわ」
過小評価・か。たしかにこの能力は人間には過ぎた能力だ。だがそれは能力であり俺個人のことではない。そんなに大きな人間ではないはず・・・成績も少し他よりも上程度。身体能力も紫たちとする前は普通の少し下程度。あとは親がいない・・・。家に座敷藁氏の変わりに神様がいる程度だ
「なら俺はどうすればいい?この能力を思う存分使って人を襲えばいいのか?そうすれば人間ではなくなる、人を襲うのが妖怪だろ?そうすればお前たちと対等になれるんじゃないか?
俺はいやだが、お前が、お前たちが望むのならそうしよう。
だがな・・・一つだけ言わせてもらうと、俺はまだ人間でいたい」
イヤになる・・・なぜ俺はこんなことしか言えない・・・
本心を隠しているのは俺のほうだ・・・
俺は・・・彼女たちに捨てられるのがイヤなんだ・・・
またあの孤独な時間を過ごすのがイヤなんだ・・・
もうあの頃には戻りたくない・・・
戻れば確実に壊れてしまう・・・
彼女たちの温かさを知ってしまったから・・・
その温かさを失えば壊れてしまう・・・
壊れてしまうのはイヤだ・・・
だが、彼女たちの内一人でも欠けてしまえば、それでも罪悪感に押しつぶされて壊れてしまうだろう・・・『もしも自分がいなければ・・・』そんなことになってしまう
それがイヤで、壊れるのがイヤで、それをごまかすためにこんなことばかり・・・
責任は俺が取る・・・責任とは
『己が壊れる前に己が存在して起こしてきた全ての結果を消し去る』
それが俺の責任・・・本来なら不可能。だが、俺の能力ならば可能。
一種の逃避に近いが、欠けてしまった人も元に戻るだろう・・・俺と出会う前、いや出会わなかった「if」の世界になるだろう・・・それの対価として俺が消える。
「・・・あなたの意志で決めるといいわ・・・私は何も言わない・・・幻想郷は全てを受け入れる・・・それはとても優しく、とても残酷なことよ・・・」
・・・ありがとう・・・紫・・・まだ壊れずにすみそうだ・・・
「じゃあまだ人間でいさせてもらうよ・・・『心』はね・・・」
「心はって、まさか!」
「その通り。体はもう妖怪だ」
もう体の結果を上書きして妖怪になった。外見は変わってないな
「いいの?元には「もどれるぞ?結果を出せば」・・・本当に非常識ね、あなたの能力」
「さっきみたいな重苦しい雰囲気は嫌いだ。人生は楽しまなければ損だ。そう俺は考えている。
しかし、思ったより不便だな妖怪の体ってのは」
さっきまでの考えを封じる・・・
思ったよりも体が重い。これでは人間のときのほうがましだ。というわけで戻ろう
「外では妖怪の力は半減以上、だけど幻想郷ではそうでもないはずよ。はぁー」
なぜそこでため息をつく
「さっきもいった通りよ」
なるほど・・・そんなに非常識か・・・しかし、この能力の非常識さについては今日はじめて考えたな
「ところで紫、そろそろ急がなきゃ学校遅刻だぞ?」
「そうね・・・行きましょう」
教室・・・・・
「聞いたか?今日はまた転校生が来るらしいぞ!」
「それもかなりの美人だって!」
「うひゃー楽しみだなー!」
教室では男子生徒が騒ぎまくっている。紫に続きまた転校生か・・・
「まさかな・・・」
「三人のうち二人は銀髪だってよ!」
・・・まさかな・・・・
「もう一人は黄色がかった髪の少し小さい子らしい!」
・・・・・・・まさかな・・・・・・・
「二人、瞳の色が赤らしい」
・・・・・・・・・・・・そうでないと思いたい・・・・・・
「紫・・・まさかとは思うが、あの三人か?」
頬を引きつらせながら聞く
「Exactry(その通りですわ)」
「お前はどれだけ俺の日常を破壊したら気が済むんだー!それと朝の話はなんだったんだ!独占したいとか言ってたよな!」
「嘘は言ってないわよ?独占したいとは言ったけど、するとは言ってないわ」
・・・また屁理屈を
「みなさーん!今日転校してくる三人は、刀弥のいいなずけよ!手を出したら殺されるから、そのつもりで」
先日の数十倍の負のオーラが・・・実体化しかけるほどの怨念って・・・
「紫・・・俺をそんなに胃潰瘍にしたいのか?」
「とんでもない。未来の夫に対してそのようなこと、恐れ多くてできませんわ」
また、俺の日常は壊された
前半シリアス頑張ってみました。最後の三人はもうお分かりでしょう。(主に髪の色で)
年末なので更新ができない日がありますが、勘弁してください