【社説】離散家族再会と金剛山観光再開を関連付けた北の目論見

 北朝鮮は今月24日、南北の赤十字社(北朝鮮は赤十字会)の実務者による協議で、「金剛山で離散家族の再会行事を行うにあたり、まずは金剛山観光事業を再開しなければならない」と主張した。現在、金剛山観光地区内にあるすべての施設が没収・凍結されているだけに、離散家族面会所を利用するには、金剛山観光事業の再開の問題を解決すべきだ、という論理を掲げたのだ。これに対し韓国政府は、「離散家族の再会という人道的な問題に、金剛山観光事業の問題を絡めるのは不適切だ。また北朝鮮側による、離散家族面会所などに対する一方的な没収・凍結は受け入れられない」と反論した。韓国と北朝鮮は来月1日、3回目の実務者協議を行う予定だが、来月21日から27日までの日程で開催される離散家族再会行事が、延期または中止となることも避けられない状況だ。

 北朝鮮は今月10日、金剛山で離散家族再会行事を行うことを提案し、「今回の再会行事を契機とし、北南間で人道主義に基づく協力事業が活発化することを望む」と主張した。しかし、北朝鮮はこのときすでに、再会事業をえさにして韓国側に圧力を掛ければ、金剛山観光ツアーに参加していたパク・ワンジャさんが北朝鮮軍兵士に射殺された事件(2008年7月)に対する一言の謝罪もなしに、金剛山観光事業を再開できると同時に、哨戒艦「天安」沈没事件を機に、南北間の交流や貿易が全面的に禁止された「5・24措置」も骨抜きにできるという目論見(もくろみ)があったと考えられる。

 北朝鮮は表向きには「人道主義」を掲げる一方で、内心ではこうした浅はかな計算を基に行動する集団だ。そうでなければ、60年近くも離れ離れになった家族の生死すら分からないまま死んでいった数百万人の人たちの痛みを、政治的に利用することなどできるだろうか。

 北朝鮮は、金剛山観光事業を通じて、毎年200万ドル(現在のレートで約1億6900万円)前後の外貨を稼いできたが、パク・ワンジャさん射殺事件以降、同事業は中止された。韓国政府は、北朝鮮による公式な謝罪や真相の究明、観光客の安全を確保するためのシステムの確立などを求めたが、北朝鮮からは現在に至るまで一言の謝罪もない。北朝鮮は今年初め、金剛山観光事業を無条件で再開するよう求め、韓国側が約600億ウォン(約43億7650万円)を投じて建設した離散家族面会所や、現代峨山が所有するホテルなど、3600億ウォン(約262億5900万円)相当の施設を一方的に没収・凍結するという違法な措置を講じた。

 韓国政府はこの機会に、南北関係を大きな枠組みの中で、原則をもって改善していくことを検討すべきだ。北朝鮮は今回も以前と同じように、南北から100家族だけが参加する1回きりの行事にすることを提案する一方、その見返りに金剛山観光事業の再開という大きな利益を得ようとしている。こうした意図にはまらないためには、南北間の協議において、離散家族再会行事の定例化といった根本的・制度的な問題の解決に焦点を当てる必要がある。そして今後は、今のような実務者協議ではなく、高官級の会談を実施するよう、北朝鮮側に提案することも検討すべきだ。こうした大きな枠組みの中で協議を行うことにより、金剛山観光事業の再開についても、原則をもった解決方法を探ることができるはずだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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