【コラム】哨戒艦「天安」沈没陰謀論の逆説(下)

 しかし現在、北朝鮮の状況が切迫しているとすれば、自らの体面を損なわない線で、「天安」事件への姿勢を変化させることは、なきにしもあらずだろう。かつて、北朝鮮の故・金日成(キム・イルソン)主席は大統領府(青瓦台)襲撃未遂事件(68年)について、「極左妄動分子たちの仕業」と認めた。

 ところが、韓国内部で「『天安』事件は北朝鮮の攻撃によるものではない」「韓国政府が操作したもの」という陰謀論が相次いでいる状況では、これまでの北朝鮮の姿勢を変化させることはできない。韓国内にいる自分たちの味方を危険にさらすようなことを、北朝鮮がするとは考えにくい。韓国政府は北朝鮮に対し、「天安」事件の打開策に通じる複数のルートを提示しているが、韓国内部の陰謀論者が北朝鮮の選択幅を狭めている格好だ。

 現時点で、北朝鮮が打開策を見出せるのは以下の二つの方法だけだ。一つは北朝鮮が「天安」事態に対し遠回しにでも姿勢の変化を示し、韓国政府が大規模な対北朝鮮支援や6カ国協議の再開に乗り出す大義名分を与えることだ。もう一つは、陰謀論者の望み通り、韓国政府が「わざと『天安』を沈没させた」と明かし、北朝鮮のぬれぎぬを取り去ることだ。二つのどちらが真実なのかは、陰謀論者も内心よく分かっているはずだ。「『天安』の陰謀論者が引っ張っているのは、韓国政府の足ではなく、北朝鮮の足かもしれない」という外交当局者の言葉を、陰謀論者は繰り返しよく考えてみる必要がある。

政治部=鄭佑相(チョン・ウサン)外交チーム長

【ニュース特集】哨戒艦「天安」沈没

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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