後継者問題:脱北者が見聞きした「三代世襲」

「北の住民ら、昨年末からジョンウン氏後継者就任を認識」

 北朝鮮が9月上旬に開催すると発表していた第3回朝鮮労働党代表者会が、何の説明もないまま、9月28日に延期された。これについて一部では、「後継者に関連する問題がまだ完全に整理されていないのではないか」という指摘が相次いでいる。このような見方が出る背景には、金正日(キム・ジョンイル)総書記の三男ジョンウン氏(27)の後継者就任作業が、昨年1月以降、非常に早いペースで行われていたことがある。昨年になって突然登場したジョンウン氏に対し、北朝鮮の住民たちはどのように認識しているのだろうか。現在韓国で暮らす脱北者たちに話を聞いた。

昨年末から後継者に関するうわさが広まる

 今年7-8月にハナ院(北朝鮮離脱住民の定着支援事務所)を退所した複数の脱北者によると、昨年上半期の時点でも、後継者に関する話は、一般の住民には知らされていなかった。この種の情報は、平壌の中心部に住むエリート階層だけが知る高級情報だからだ。

 平壌で大学院を卒業した脱北者イ・ジンミョンさん(28)は、昨年1月ごろ大学院の同期生からジョンウン氏について初めて聞いた。イさんは「人民武力部(国防省に相当)の作戦参謀をしている同期生の兄から聞いた話によると、“将軍様(金総書記)の後継者をしっかりと支える”という方針が、人民武力部に下されたそうだ」と述べた。イさんはさらに、「以前は金総書記の家系に関する話をすると、保衛部から取り調べを受けたが、その同期生はジョンウン氏の話をしても、取り調べどころか批判も受けなかった。この点からしても、後継者についての話は事実だと思う」「ジョンウン氏は金日成(キム・イルソン)総合大学コンピューター学部を卒業し、父に似て大物で太っ腹だと聞いている」と述べた。

 後継者に関するうわさが地方にまで広まったのは、昨年の後半ごろとみられている。両江道の元保安局員(警察官)で、昨年末に脱北したソン・チョルミンさん(30)は、「昨年7月に地方党幹部らを対象に、“青年大将(ジョンウン氏)は将軍様(金総書記)による革命の偉業を引き継ぐ絶世の義人”という内容の講演が行われた。そのころから恵山市場には、ジョンウン氏に関するうわさが広まるようになった」と語った。咸鏡北道茂山鉱山の労働者で、今年脱北したシン・ジョンオクさん(24)は、「2008年末にキム・ジョンウンという27歳の若者が“白頭山青年突撃隊”の総隊長になったといううわさが流れたが、その人物が金総書記の息子だとは知らなかった」と述べた。

「ジョンウン氏は若すぎる」「北朝鮮は崩壊する」

 脱北者が説明したところによると、ジョンウン氏に対する北朝鮮住民の認識は、階層によって異なるという。幹部たちは「仕方ない」という立場だが、「まだ若すぎる」という点を心配しており、一方で知識人や中産層などの間では、三代世襲に対する不満が大きいようだ。日々の生活さえ精一杯の庶民は、「誰が指導者になろうが関心はない。市場の統制さえしなければよい」と考えているという。

 最近、北朝鮮の住民と電話で話をしたというある脱北者は、「北朝鮮では幹部の間でも、ジョンウン氏に対しては否定的だ」と語る。この脱北者によると、通話相手の北朝鮮住民は、数日前に平壌に住む親せきから、「年齢が40歳以上ならまだしも、ジョンウン氏はまだ若すぎる」という話を聞いたという。また、この脱北者と電話で話をした北朝鮮のある大学生は、「“三代の丞相はなく、三代の乞食もない”という言葉があるように、三代目(ジョンウン氏)になると、この国(北朝鮮)は滅びるだろう」と語ったという。

 シンさんによると、若い階層の間ではジョンウン氏が後継者となることに反感と不満が大きいという。シンさんは「若者たちの間からは、“自分たちと同年代のジョンウン氏に何ができるのか”“金総書記は後継者になるため、かなりの準備期間があったが、それでもこの国はここまでひどくなった。ジョンウン氏は後継者になるための学習も不十分なのだから、この国の先行きは見えている”などという声が聞かれる」と話した。

ユン・イルゴン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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