覚せい剤の原料物質、規制もなく流通

 最近、化学博士の学位を有する大企業の部長(42)が、「ベンジルシアナイド」という化学物質を用いて覚せい剤を製造、流通させたとして、大邱地検に逮捕された。ベンジルシアナイドは、覚せい剤の原料となる「1-フェニルプロパン-2-アミン」の前段階の物質で、これを利用して薬物を製造・販売し摘発されたケースは、世界的に見ても今回の事件が初めてだったことが分かった。

 食品医薬品安全庁が26日、国会保健福祉委員会の朱昇鎔(チュ・スンヨン)議員(民主党)に提出した資料によると、今回の事件で覚せい剤の原料に使われたベンジルシアナイドが、麻薬類の原料物質として分類されず、これといった規制もなく流通していたことが分かった。

 同庁は、「1-フェニルプロパン-2-アミン」については、麻薬類の原料物質として管理しているものの、その前段階の物質であるベンジルシアナイドは、管理の対象となるリストに搭載していなかったという。だが、ある程度の化学の知識があれば、ベンジルシアナイドを利用して覚せい剤を製造できるため、麻薬類の管理に抜け穴があった、という見方が出ている。

 ベンジルシアナイドは、麻薬類の原料物質として分類されていなかったため、韓国国内での流通量も十分に把握されていない。環境部はこれを有毒物質として分類し、昨年に1回(20キロ)輸入されたことを把握しているものの、研究目的または100キロ以下の有毒物質の輸入については届け出を必要としていないため、韓国国内での流通量が実際にはもっと多いものと、朱議員は推定している。

金慶和(キム・ギョンファ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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