菅首相、ジミな国技館デビュー

　菅直人首相（６３）が２６日、大相撲秋場所千秋楽が行われた東京・両国国技館を訪れた。昨年、政権交代直後の秋場所に鳩山由紀夫前首相が登場した時のような歓声は起きず、白鵬に内閣総理大臣杯を手渡した際も「６２連勝おめでとう」と激励しただけで、菅氏による演出はなし。“菅”声も“菅”動もない、ジミな国技館デビューだった。最近、総理大臣杯を直接手渡した歴代総理は、１年持たずに退陣している。難問山積の菅氏は、この「鬼門」を乗り越えられるか。

　菅氏は「これより３役」の取組前、場内に姿をみせた。伸子夫人は同行せず、前後をスーツ姿のＳＰに囲まれて歩いたためか、総理大臣の登場にすぐ気付いたのは周辺の観客だけ。昨年の衆院選で民主党への政権交代が実現した直後の秋場所に登場、場内から大歓声で迎えられた鳩山氏と比べ、静かな顔見せだった。

　升席では握手や写真撮影、サインを求められ、気さくに応じた。ただ全取組終了後、表彰式の準備中に「鳩山コール」が起きた鳩山氏とも、「漢字間違うな」とやじられた麻生太郎元首相とも違い、歓声もやじも広がらなかった。低迷していた内閣支持率は上昇中だが、歓迎ムードとは違う淡々とした空気が流れた。

　内閣総理大臣杯授与は２場所ぶり。菅氏は４０・８キロある杯を手に少しよろけ、助けを借りながら白鵬に手渡すと、マイクを探す所作をみせた。「感動した！」と絶叫した小泉純一郎氏のような演出があるのか。しかし菅氏は「優勝おめでとうございます。６２連勝おめでとうございまあーす」と呼び掛けただけだった。拍手が起き「菅さん、頑張って」と声援も飛んだが、場内全体に広がらないまま、セレモニーは終わった。

　代表選で小沢一郎元幹事長を破り、再選された。しかし沖縄県・尖閣諸島（中国名・釣魚島）付近での中国漁船衝突事件で悪化する日中関係、１０月１日召集予定の臨時国会対応と、菅氏には難題山積だ。最近、東京開催場所で国技館デビューした首相は、１年以内に退陣に追い込まれている。昨年、熱烈歓迎された鳩山氏も同様だ。翌年の同じ場所を再度訪れた首相は、安倍晋三氏以降誰もいない。

　菅氏は、このジンクスを破れるのか。国技館を出ると公邸に直帰。仙谷由人官房長官らと顔を合わせた。【中山知子】

　［2010年9月27日9時20分　紙面から］