2010年9月25日
互いに見知らぬ男女3人の、いっときの奇妙な共同生活を映す「スープ・オペラ」(瀧本智行監督)が10月2日から、各地で公開される。主演の坂井真紀は、生きることに少し不器用な女性の内心を繊細に演じている。
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ルイ(坂井)は、古びた家で叔母(加賀まりこ)と暮らす。その叔母が若い男と結婚して出て行き、絵描きらしい見知らぬ中年男(藤竜也)がふらりと現れる。さらに、人気作家を交えた会食で雑誌社の青年(西島隆弘)と出会い、この3人の共同生活が始まる。ふと、通り過ぎるだけのような淡い出会いの中で、ルイは大切な人、大切な時間を見つめる。原作は阿川佐和子の同名小説だ。
演技を通して、孤独と向き合った。「ルイは叔母と幸せに暮らしていても、きっと何か目に見えない孤独がおなかの底にすごくある。何か突き刺さるものを感じて、奥深くにある孤独を香らせたいと思った」
ルイについて「際立ったキャラクターではないが、奥が深い」と語る。「光がきれいだな、風が気持ちいいな、と小さなことをちゃんと感じて生きていることを出したかった。うれしい半面、寂しさも感じるような人物を通して、感動の入り口である共感をしてもらえたら」
最近は、リンチに遭う場面が壮絶だった「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」、恋も仕事もさえない女性の日常を映した「ノン子36歳(家事手伝い)」など幅広い役を演じた。
40歳。舞台に出演したことが、糧になっているといい、特に劇団☆新感線の「髑髏(どくろ)城の七人」への出演をあげた。「舞台は、作業も観客の反応もシンプルでダイレクト。舞台に立つと、自分はまだまだだなと思う。今までやったことのないスキル(技能)が求められるが、半面、演じる楽しさがより分かった」と話す。
「俳優の仕事は自分の人生そのもので、運命共同体みたいな存在。ゴールがないので、息長く走り続けられたら」と語った。(小林裕子)