保護責任者遺棄致死など四つの罪に問われた元俳優押尾学被告(32)の裁判員裁判で、保護責任者遺棄罪にとどめた上で懲役2年6月(求刑懲役6年)とした17日の東京地裁判決に対し、東京地検が控訴しない方向で検討を始めたことが25日、関係者への取材で分かった。
控訴期限は10月1日。遺棄致死と合成麻薬MDMA譲渡の二つの罪について無罪を主張していた被告側は「事実認定に納得できない」と判決当日に控訴しており、取り下げなければ、裁判官のみの二審東京高裁で争うことになる。その場合は一審判決よりも重い刑にはならない。
MDMAを一緒にのんで死亡した女性を被告が確実に救命できたかどうかが最大の争点だったが、遺棄致死罪成立の核となる放置(遺棄)と死亡との因果関係について、地検は控訴審で新証拠を示し立証するのは困難と判断したもようだ。
被告は保釈請求が認められていないため、現在も東京拘置所に拘置中。
判決によると、被告は東京・六本木ヒルズのマンションで昨年8月2日午後、飲食店従業員田中香織さん=当時(30)=にMDMAを譲渡。一緒にのんだ田中さんの容体が急変し、6時半ごろには意識障害の状態になったが、救急車を呼ぶなど救命措置を取らずに放置し、必要な保護をしなかった。
判決は「直ちに119番すれば一定の救命可能性があった」と指摘。救命可能性の程度をめぐり、証人として証言した救急医の見解が分かれていることから「救命が確実だったことが合理的な疑いを入れない程度に立証されているとはいえない」と判断し、保護責任者遺棄致死罪の「致死」部分を認めなかった。
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