稀勢の里(右)を寄りきりで下した魁皇(撮影・西岡 正)
「大相撲秋場所14日目」(25日、両国国技館)
大関魁皇は小結稀勢の里を寄り切って勝ち越し、13度目のかど番を脱出した。
肩で息をしながら土俵を降りる魁皇を万雷の拍手が出迎えた。稀勢の里の変化に食らいつき、左を差して勝機を待った。こん身の力で前へ。最後は右上手を引いて寄り切った。22年半の土俵人生を懸けた一番だった。
13度目のかど番脱出。そして、故郷・福岡での九州場所への凱旋を決めた。「自分でも(勝ち越しは)厳しいかなと思っていた」。そして、名古屋場所での左肩、今場所4日目での右ひざに加え、実は今場所2日目に右太もも裏も痛めていたことを明かした。体は傷だらけだった。
場所前から、師匠の友綱親方(元関脇魁輝)とは「負け越したら引退」を約束していた。師匠は言う。「本人の気持ちはまだあると思う。横綱とやりたいと口にしていたから」。引退危機に直面しても、勝負師の闘志は消えてはいなかった。
地元後援会関係者に魁皇は「次は名前が変わっているかもしれませんよ」と引退をほのめかしていたが、それもいらぬ心配だった。まだ頑張れるのか‐。報道陣にそう問われると「分からないよ」と静かに笑った。
(2010年9月25日)