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きょうの社説 2010年9月27日
◎海女が藻場再生 石川発の「里海」モデルに
輪島市舳倉島、七ツ島周辺でアワビやサザエを増やすため、海女が「藻場」再生へ向け
、ホンダワラ類の駆除に乗り出すことになった。本社の舳倉島・七ツ島自然環境調査で明らかになった海の環境異変のなかでも、温暖化による海水温上昇はホンダワラ類を増殖させ、アワビなどの餌となるカジメの生育を妨げているとみられ、その天敵を人海戦術で取り除くのが今回の試みである。「里山」と同様の言葉として「里海」が広がり始めている。そのイメージは里山ほど明 確でないが、ともに人の手を加えて自然と付き合い、資源を有効活用するという意味なら、舳倉島での取り組みは里海の具体的な形を示すことになる。海女による海の資源回復策を、石川発の里海モデルとして定着させ、積極的に発信したい。 豊かな恵みを育む森林と同様、海で資源を育てる場が海藻群落の藻場である。それが大 規模に喪失する「磯焼け」が各地で発生し、水産業に影響を与えている。ウニや魚類の食害、沿岸環境や気象の変化など、さまざまな要因がある。 輪島市の海士町自治会によると、舳倉島周辺では近年、高水温への順応性が高いホンダ ワラ類が藻場を覆う海域が目立ってきた。カジメへの日光を遮り、それを餌とするアワビやサザエの生育にも影響を及ぼしているとみられる。 藻場を研究する宮城県南三陸町自然環境活用センターや東京海洋大と連携し、海女20 0人が昨秋、ホンダワラを刈り取ったところ、カジメの順調な生育が確認された。このため、ホンダワラの成長期となる秋から春にかけ、駆除を行うことになった。 森林間伐で日光を当たりやすくすれば、植生が豊かになり、森の保水能力を高めるのと 同じように、海の森も手入れが必要である。海底の変化を誰よりも熟知する海女がその役割を担えば、漁業者自らが藻場を管理し、資源回復を図る先駆的な事例となる。 アワビやサザエは「海女採り」の名で商標登録され、商品価値を高める取り組みが始ま っている。海の豊かな森を維持することで限りある資源のブランド価値をさらに引き出し、伝統ある海女漁の継承にもつなげていきたい。
◎中国レアアース規制 日米欧の連携強化が必要
ハイテク製品に欠かせないレアアース(希土類)のほとんどを中国からの輸入に依存す
る日本の製造業のぜい弱さが、あらためて浮き彫りになっている。菅直人首相とオバマ米大統領との会談で、日米同盟の深化、対中国関係での連携強化で一致したが、世界のレアアース生産の大部分を占める中国の輸出規制は、米国にとっても重大な課題である。レアアースは高度な兵器製造に不可欠で、安全保障上の問題に直結するからであり、この点での日米連携も求められよう。米国と欧州連合(EU)は昨年6月、中国がアルミニウムの原料となるボーキサイトや マグネシウム、亜鉛などのレアメタル(希少金属)に高い輸出関税をかけて輸出を制限しているのは世界貿易機関(WTO)の協定違反として提訴した。これに対して、中国側は環境保護が主目的と反論し、当事者間の協議が決裂したため、米国とEUの要求により、WTOに紛争処理委員会(パネル)が設置されるに至っている。 日本はこれまで米欧の動きに加わらず、静観してきた。米欧の提訴の対象に、日本に最 も影響の大きいレアアースなどが含まれていないことや、中国との通商摩擦を避けたい思惑からといわれる。ところが、中国政府は今年7月からレアアースの輸出枠削減に動き、日本側を慌てさせた。 このため政府、産業界挙げて輸出規制の緩和を求めてきたが、中国側に足もとを見透か され、2国間交渉の困難さを思い知らされる格好になっている。今後の対応では、米国やEUと連携して国際的な交渉力を高めることも考える必要があろう。さらに、今回の漁船衝突事件に伴う日本への禁輸措置が明確であれば、WTO提訴をためらう必要はあるまい。 また、備蓄の増大や、調達先を増やす資源外交の強化はむろん、レアメタルの代替材料 ・技術の開発にいよいよ本腰を入れなければならない。経産省などが2007年度から進めるプロジェクトで、新しい技術開発の成果も出ている。この事業を強化し、実用化に全力を挙げてもらいたい。
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