きょうのコラム「時鐘」 2010年9月27日

 中国という隣人の厄介さを、また思い知らされた。事あるごとに、「反日」という横車を押す。随分前に流行した文句を思い出す。「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、みんな私が悪いのよ」

何があるのか知らないが、漁船衝突を引き金に「みんな日本が悪いのよ」と声を荒らげた。大勢の「人民」を操るには、憎しみという劇薬を使うのが一番とみえる

小紙と友好提携する新聞社のある蘇州は、呉の国の古都以来の歴史を誇る。世界遺産の庭園や有名な寺院群があるが、訪れると大概、文化大革命の破壊の跡も見せられる。約40年前、伝統文化に向けられた憎しみの産物である

どこへ行っても、傷跡がついて回る。その多さに、しまいにはヘソが曲がる。本当にそうなのか、管理の手抜きが生んだ傷も「文革が悪い」にしてはいないのか。新選組ゆかりの建物には、決まって柱に傷がある。「隊士がつけた刀傷」というが、どうみてもマユツバものもある

文革傷跡巡りで浮かんだ疑問をただしたが、誇り高い蘇州の人たちは、あいまいに笑うだけだった。腹を割った付き合いなど、いつのことか。