俗に中国で「9・18」と言われるその日は満州事変(柳条湖事件)が勃発した日で、今年は79周年を迎えた。船長拘束と歴史的事件が重なり、中国では北京を中心とした一部の地域が抗日・愛国ムードに包まれた。
上海でも、在上海日本国総領事館前で活動家らが「釣魚島是中国的 扣船非法 ※我船長」(釣魚島は中国のもの、漁船拿捕は非法だ、船長を返せ、※の文字はしんにょうに「不」)と書いた横断幕を掲げた。が、メガホンを使うわけでもなく、国旗を燃やすわけでもなく、抗議は淡々と行われた。背景には万博開催中という上海市の面子もあった。
一方、拘留期限に当たる19日、日本政府は船長の拘留延長を発表した。その結果、前述したような「報復措置」へと一気に発展した。
黒幕は誰だ?
「釈放できないのは黙秘を貫いているためだ」と日中の政治に詳しいA氏はコメントする。
「すべてを黙秘する中国人船長に、拘留を延長せざるを得なかった。なぜ黙秘をするのか。それは国に帰れば英雄になれるからだ」と続ける。
逆に泥を吐いてしまえば売国奴扱い、一族郎党、子々孫々にわたって屈辱を受ける羽目になる。
事情通の中国人B氏は、もともとこの船長には、口には出せない何かがあると見る。上海の一般市民ですら、「一般の漁船がこの微妙な海域に自ら入り込むのは不自然、日本の船にぶつけたとしたらそれも普通の漁民の行為だとは考えられない」(同)と考える。船長のバックにいるのは誰なのか。中国政府なのか、NGOなのか。
B氏は「あくまで推測の域を出ない」と断りながらも、こう指摘する。「05年の反日デモも官製デモだった。上海市では学生のみならず国営企業の社員が主となって参加し、参加した者は500元を、また激しく活動した者は1000元を褒美としてもらった。今回も“自作自演”というシナリオが書かれ、後ろには政府がいる可能性も否定できない」