2010年8月2日 21時59分 更新:8月2日 23時48分
参院選での民主党大敗後、初めての国会論戦が2日、衆院予算委員会で始まった。参院で野党が多数を占めるねじれ国会で、法案成立に野党の協力が不可欠となったことを受け、菅直人首相は自民党の谷垣禎一総裁の質問に低姿勢の対応に終始した。消費増税や財政再建に向けた谷垣氏の積極的な問題提起に対し、首相は「(民主)党での議論をお願いしている」と述べるにとどまり、「菅カラー」を打ち出しきれない場面が目立った。予算委では民主党の議員から公然と首相批判が飛び出し、党内外で孤立感を深める首相の姿が浮かび上がる論戦となった。
「ねじれ国会が国民に必要な政策が実行される場になるよう、野党にも臨んでもらえればありがたい」
論戦の冒頭、こう呼びかけた首相に対し、野党第1党の総裁は前向きだった。谷垣氏は財政再建について「出血(財政赤字)を止めないと、財政健全化の道は開かれない。私たちも反省しなければならない」と指摘。従来のような政権批判は控え、自民党政権当時の反省を踏まえた提案型の質問となった。
これに対し、首相の答弁には歯切れの悪さが際立った。谷垣氏が9月14日の民主党代表選に向け、「(消費増税を)やる気はあるか」とただすと、首相は参院選大敗を踏まえ、「私が先走って、混乱を招いた反省もあり、具体的に言うのは控えたい」と述べるにとどめた。谷垣氏は「参院選で言い、代表選で言わない。首相の言葉は軽い」と皮肉った。
この後、質問に立った自民党の石破茂政調会長は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題を取り上げた。石破氏は「首相自ら沖縄に出向き、罵倒(ばとう)されようがやる決意があれば、全力で支える」と強調。しかし、首相は「わが党の沖縄(県連)との議論も十分にこなれてない」と消極的だった。
参院選大敗により、首相の求心力は低下する一方。予算委初日で目立ったのは、民主党議員の冷ややかな質問だった。同党の伴野豊氏は「政権も政治家も長さではない」と述べ、首相の進退問題に言及。山口壮氏も「首相が唐突に消費税10%の話を持ち出し、誤解を招いた」と述べ、首相の対応を重ねて批判した。
予算委の初日には与党第1党の幹部が質問に立ち、政権にエールを送るのが通例。しかし、この日の質問者に党幹部の姿はなく、首相に距離を置く議員が並んだ。孤独な闘いを強いられた首相に対し、党幹部は「党側にもり立てようという意思がない」ともらす。
衆院予算委後、首相は官邸で記者団に「これからも建設的な議論ができるんじゃないか」と述べ、今後の国会運営に手応えを強調した。しかし、石破氏は2日夜、BS11に出演し、こんな感想をもらした。「この人はこんな人だったか。たとえ党内基盤が弱かろうが、国民に『正しいことはこれだ』という気概を持たないと、今の時代の首相はやれない」【田中成之】