25日午前11時ごろ、埼玉県秩父市大滝の奥秩父山系ブドウ沢で、7人が搭乗した同県防災ヘリコプター「あらかわ1」が、滝つぼに転落した女性を救助中に墜落した。パイロットとレスキュー隊員、消防隊員の計5人が死亡し、残る2人は無事だった。国土交通省運輸安全委員会は調査官3人を現地に派遣、事故原因の究明を始めた。女性も病院で死亡が確認された。
◇生存隊員「直前、プロペラ異音」
防災ヘリは、県が「本田航空」(埼玉県川島町)に運航を委託。パイロット2人と県防災航空センター防災航空隊員(レスキュー隊員)3人、秩父消防本部の消防隊員2人の計7人が乗っていた。
死亡したのは▽機長、松本章さん(54)=埼玉県桶川市▽副機長、西川真一さん(32)=同▽レスキュー隊員、中込良昌さん(42)=同県狭山市▽同、戸張憲一さん(32)=同県鳩ケ谷市▽消防隊員、大沢敦さん(33)=秩父市――の5人。レスキュー隊員の太田栄さん(36)=同県川口市=と消防隊員の木村準さん(38)=秩父市=に大きなけがはなかった。女性救助のため、既にヘリから降下していた。
県警秩父署によると、遭難した女性は、東京都勤労者山岳連盟の「沢ネットワーク」メンバー、小野千枝子さん(55)=川崎市=で、24日午後、仲間8人と沢登りをしていて滝つぼに転落した。携帯電話が通じず、仲間が25日午前8時半に110番し、あらかわ1は同9時40分ごろ、埼玉県中部にある県防災航空センター(川島町)を離陸し救助に向かった。小野さんを沢からつり上げるため、ホバリングをしていて墜落したらしい。現場に向かっていた県警ヘリが、先着した「あらかわ1」のものとみられる煙を発見、墜落を確認した。
現場は埼玉と山梨県境にある笠取山(1953メートル)の北約1キロの「ブドウ沢」。気象庁によるとヘリが墜落する前の午前10時40分ごろ、秩父地方に大雨、洪水、雷注意報が出た。熊谷地方気象台の観測では墜落後の同11時半ごろ急速に雨雲が発達。担当者は「大気が不安定な状態だった」という。県消防防災課によると、あらかわ1は今月12~14日に100時間点検をしたばかり。
同課は26日午前0時20分、秩父消防本部で会見。無事だった隊員の話として、墜落直前にヘリのプロペラから「バタバタ」という異音がし、機体が傾いたと明らかにした。機体は沢の斜面にぶつかった後、落下したという。隊員の話によると、ヘリは現場の上空約30メートルでホバリングしながら隊員2人をワイヤで降ろす作業を始めた。隊員が地上まで約1メートルに達した時、ワイヤが急激に降下。同時にプロペラから異音が聞こえ、隊員が上空を見上げると機体が傾き始めていたという。天候は晴れで風も弱かった。【佐藤丈一、町田結子、岡崎博、大谷津統一】
2010年7月25日