2010年9月26日15時6分
集団面接の練習に臨む3年生。「手は軽く握って」「肩の力は抜いて」と教師の細かいチェックが入る=奈良県王寺町の王寺工業高
2008年秋のリーマン・ショック以来の不況にもかかわらず、ここ数年、就職率100%を誇る高校がある。奈良県立王寺工業高校(王寺町本町3丁目)だ。大手企業からも毎年のように求人票が来るという人気の理由を探った。
「失礼します」「もっと声出るやろ!」。今月初旬、校舎内から教師と生徒のやりとりが聞こえた。1週間、連日続いた面接の練習だ。
生徒たちは志望動機はすらすらと言えたが、予想外の質問に急に声が小さくなることも。「そこはちゃんと調べときや」。教師の指摘を受け、弱点をつぶしていく。緊張感を出すため、校長や教頭が面接官を務めることも。「期待してもらっている分、いい人材を送り込むため総力を挙げてます」と進路指導部の岡本哲至教諭(49)。
来春卒業予定の206人のうち163人が就職を希望する。これに対し、8月23日時点で求人票が来ている県内外の企業は341社。ここ数年は毎年就職率100%。就職先の半数以上がトヨタやシャープなど一部上場企業で、不況の中でも新たに求人票を出す企業も少なくないという。
同校を訪れる企業の求人担当者が印象を受けるのは「あいさつ」だ。すれ違う生徒から一様に「こんにちは!」とお辞儀され、「礼儀正しさは面接の時だけではない」と確信して帰るという。
あいさつ指導が始まったのは、15年ほど前。「せめてあいさつだけでも」と、荒れた同校立て直しの第一歩だった。入学時から徹底的に指導され、職員室や進路指導室に入る際はノックした上で、クラスと名前、用件を述べる。声が小さければ、容赦なく何度でもやり直しを求められるという。
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