きょうの社説 2010年9月26日

◎東西本願寺交流 継続すれば真宗土壌に厚み
 真宗大谷派金沢別院(東別院)と浄土真宗本願寺派金沢別院(西別院)による「彼岸万 燈会(まんとうえ)」で、両派の代表が互いの別院を訪れ、法要を営んだことは、初の合同イベントとともに、門徒には驚きをもって受け止められたのではないか。

 これまで現場レベルでは門徒同士の交流はあったが、それぞれの代表が行き来すれば宗 派の垣根も一段と低くなる。京都の本山では、報恩講で東本願寺の門首、西本願寺の門主が互いの法要にお参りする姿がみられるが、どんな形であれ、金沢でも継続すれば「真宗王国」の土壌に厚みが加わることになる。歴史的な節目を、交流を広げる新たな一歩にしたい。

 彼岸万燈会では、東西別院の境内や金澤表参道が計1千個の灯明で彩られた。表参道で は約200人の稚児行列が繰り広げられ、東別院代表が西別院、西別院代表が東別院で読経した。東西が手を携えることで地域活性化の可能性を示した形だが、両派にとって大きな意義を持つのは、別院輪番ら宗派の責任者が互いの拠点で法要を勤めたことである。

 東西本願寺は徳川家康の時代に分派して以来、独自の道を歩んできた。蓮如の著述にし ても、東は「御文(おふみ)」、西は「御文章(ごぶんしょう)」と言い方が異なり、読経の節回しなどにも違いがみられる。それぞれが教団として発展するにつれて差異も明確になってきたが、教義が異なるわけではない。用語や儀式作法など表層的な違いと言ってよいだろう。彼岸万燈会は2011年の親鸞750回忌にちなんで企画された。宗祖をしのぶなら、本願寺はもともと一つであったことを確認するのは必然的なことかもしれない。

 金沢市では1998年、本願寺の政庁である金沢御堂(尾山御坊)があった金沢城跡で 蓮如500回忌にちなむ東西合同法要が営まれた。親鸞750回忌を控えた今年は、北陸各地で東西合同による真宗布教調査も行われている。

 今回の彼岸万燈会は、門徒にとどまらず、幅広く市民に金沢の真宗土壌をアピールした 点でも意義がある。東西が手を結ぶことで真宗の発信力はさらに強まっていくだろう。

◎新幹線の未着工区間 新国交相の覚悟が見たい
 新任の馬淵澄夫国土交通相に注文したいのは、北陸新幹線金沢−敦賀など整備新幹線の 未着工区間の新規着工の是非について速やかに決断を下すことだ。馬淵国交相は会見でもその時期を明言しなかったが、政権交代以来、1年も待っている沿線関係者に何の見通しも示さず、ただ待たせ続けるつもりなら、不誠実と見なされても仕方があるまい。

 未着工区間の取り扱いをめぐっては、夏までに結論を出すという当初の「約束」が果た されず、来年度政府予算の概算要求には着工費が盛り込まれなかった。次の節目は年末だろう。遅くともそれまでに着工するかどうかを判断して来年度予算案に反映させ、着工が決定した区間は、今年度の新幹線予算の留保分を活用して可能な限り早く工事を始動させる。馬淵国交相には、まずその覚悟を見せてもらいたい。

 沿線は、並行在来線に対する新たな支援策にも、熱い視線を注いでいる。今年12月の 東北新幹線新青森開業を控えている青森県などにとっては、延伸以上に差し迫った課題といえる。石川、富山県でも、既に2014年度の北陸新幹線金沢開業に伴う北陸線の経営分離を見据えた検討が進められているが、支援策があれば、当然ながら準備すべきことも変わってくるに違いない。

 今回の内閣改造では、閣僚はもとより、副大臣や政務官も一新され、整備新幹線に関す る諸課題を議論する場である整備新幹線問題検討会議や同調整会議の顔触れも入れ替わった。ただ、幸いなことに論議の責任者ともいうべき立場に就いた馬淵国交相は国交副大臣からの昇格であり、これまでの議論の経緯はよく承知しているはずである。それだけに停滞や後戻りは許されない。

 民主党の「『整備新幹線』を推進する議員の会」に所属する国会議員には、地方議員の 議連とも連携して、馬淵国交相の背中を押すための要請活動などを活発に展開することをあらためて求めておきたい。もちろん、沿線の知事らもこれまで以上に積極的に声を上げてほしい。