【萬物相】マンション共和国の未来
ソウルに初めて建築された現代式マンションは、1962年に住宅公社が建設した麻浦マンションだった。それから40年ほど経ったが、当時の世帯の6割がまだ住んでいる。作家の崔仁浩(チェ・インホ)が短編小説「他人の部屋(1972年)」でマンションを人間疎外の空間としてとらえたが、その後の作家らもマンションを「家」としてみなしていない。「隣の男が死んだ。壁を一つ隔てて彼は死んでおり、私は生きている。彼は死んで1305号に横になっており、わたしは生きて1305号で横になっている」(金恵順「南と北」)。
フランスの地理学者ヴァレリー・ジュルゾウは著書『アパート共和国(韓国でアパートは日本のマンションに相当)』で、「韓国では土地が狭いからではなく、権威主義の政権が中産層の支持を得るためマンションを手当たり次第に建設した」と指摘した。同氏は、70-80年代に建設されたマンションが再建築のために過去が失われるソウルについて、「その日暮らしの都市」と表現した。古いマンションの再開発問題でソウルの未来は明るくないとのことだ。
作家のキム・ウンヨンは、長編小説『マイホーム購入の女王』で、マンションの光景を「仕方なく建てた欲望のバベルの塔」と表現した。「近頃は、地域区国会議員の仕事ぶりを評価する基準が町内のマンションの価格と言われている」。また「政治家はニュータウンと再開発企業のCEO、マンションの所有者は株主のようだ」と表現した。ソウルにそびえ立つマンションについては「20年も経てばボロボロになるだろう。ソウルのマンションは悪の軸」と嘆いている。
最近のソウル市の調査で、ソウルのマンションの26.7%が築20年を超えていることが分かった。瑞草区と江南区のマンションの約半数が築20年を超えている。江東区、陽川区、松坡区ではそれぞれ40%を超えている。既に狎鴎亭洞の現代マンションは古くなり、都心の景観を乱しているほどだ。首都圏の新都市マンションも築15年が経過した。今後20年後のことを考えずに30階を超える高層マンションの建築も増えている。
古いマンションに人が住まない将来を案ずる声が高まっている。都市を離れる人口が増加し、都心のマンションが空洞化する先進国の現象は、対岸の火事ではない。マンションを建築することだけに夢中になった産業化時代のパラダイムから脱する時期が来ている。人の住まない「欲望のバベルの塔」が放置されたマンション共和国の未来。考えただけでもゾッとする。
朴海鉉(パク・ヘヒョン)論説委員