保護責任者遺棄致死罪など4つの罪に問われた元俳優、押尾学被告(32)の裁判員裁判で、保護責任者遺棄罪にとどめた上で懲役2年6月(求刑懲役6年)とした17日の東京地裁判決に対し、東京地検が控訴しない方向で検討を始めたことが25日、分かった。
MDMAを一緒に飲んで死亡した東京・銀座のホステス、田中香織さん(当時30)を確実に救命できたかどうかが最大の争点となった今回の裁判。弁護側は「事実認定に納得できない」とし、17日に即日控訴した。
これに対し、検察側は119番通報をしなかったなど、適切な救命措置をしなかった被告について、遺棄致死罪成立の核となる放置と死亡との因果関係を立証する新証拠の提示が困難であると判断したとみられる。
刑法に詳しい日大の板倉宏名誉教授(76)は「注目の裁判なので、検察側は遺棄致死が成立するしないにかかわらず控訴して審理を尽くすべき」と指摘した。
このまま弁護側が控訴を取り下げなければ、二審は裁判官のみの東京高裁で争うことになる。その場合は一審判決よりも重い刑にはならない。東京高裁の判断は(1)一審判決を維持して控訴を棄却(2)一審判決を破棄し、より軽い刑を言い渡す(3)破棄して東京地裁に審理を差し戻す−のいずれかが想定される。控訴期限は10月1日。