尖閣
「容疑が明確なのに起訴しないと、刑事司法がゆがめられた前例となってしまう」。 外国人捜査の経験が長い警察幹部は、●其雄(せんきゆう)船長(41)の釈放について、そう述べた。(●は「擔」のつくりの部分)
今回のように逮捕、送検された外国人が、外交上の配慮で起訴前に釈放されるのは極めて異例だ。●船長は那覇地検の調べに公務執行妨害容疑を否認しているとされる。那覇地検は「任意捜査を継続している」とするが、このまま釈放、帰国となれば、事情聴取は不可能となり、捜査は事実上、終結することになる。
2004年3月、中国の活動家7人が尖閣諸島・魚釣島(沖縄県石垣市)に不法上陸し、沖縄県警が入管難民法違反で現行犯逮捕した事件では、7人は送検前に強制退去処分となった。同法65条の「他に罪を犯した嫌疑のない時」に限ってできる警察から入管への引き渡しを特例適用した。「捜査を尽くさずに送還したのは不適切」との批判は出たが、捜査幹部は「釈放の根拠は明確だった」と振り返る。
今回の事件で海保は、●船長について、日本領海で不法に漁業を行った容疑でも調べを進めていた。捜査を徹底せず、不明確な根拠のままで釈放を決めたことに、日本側の“超法規的措置”との指摘は免れない。(2010年9月24日22時14分  読売新聞)
*読売新聞 社会