尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船と衝突事件を起こした中国漁船の船長を、処分保留で釈放するというニュースを目にして、菅政権の拙劣な対応に呆れた。9月7日の事件発生からここまで問題を引き延ばし、温家宝首相の即時無条件釈放要求発言やレアアースの輸出手続きの停滞、建設会社フジタの社員4人の身柄拘束など、中国の強硬姿勢をエスカレートさせた揚げ句、それに屈したかのように突然、釈放を発表する。これによって中国の強硬派を勢いづかせるだけでなく、日本国内のそれに対抗する排外的ナショナリズムの動きが一気に高まりかねない。
那覇地検の鈴木亨次席検事が、釈放を決めた理由に日中関係の悪化への懸念を挙げる一方で、仙石由人官房長官が政府の関与を否定するのも、でたらめ極まりない。時あたかも、大阪地検特捜部の証拠隠滅(FDデータ書き換え)事件で検察の問題が焦点となっているときに、重要な外交判断を検察が行ったかのような構図を作り出し、政府や外務省が自らの責任を回避するのは対応として愚劣すぎる。
事件が発生した9月7日から9月14日までの一週間、民主党代表選挙のために政府の機能が低下して、初期対応のまずさがあったのかもしれない。しかし、そんなことは言い訳にならない。それにしても、9月18日が日本と中国にとって歴史的に重要な日であり、その日までに解決のめどをつける必要があるという歴史感覚も菅政権にはなかったのか。
問題がここまでこじれてしまったら、エスカレートしている双方の強硬姿勢を軟化させ、話し合いによる問題解決に向けて双方が歩み寄っているという状態にまずは持っていくことが、日中両政府にに問われていたはずだ。それがなされないまま、中国が強硬姿勢をエスカレートさせている段階で、日本が唐突に船長を釈放すれば、中国の圧力に屈したとしか国内外で見られないし、日本の外交能力と政治的影響力の低下が印象づけられる。
しかも、事態の推移や釈放理由を国民に説明すべき菅首相は国内に不在だ。ニューヨークでオバマ大統領と会談を行ったことと船長釈放が重なり、アメリカ側からのはたらきかけがあったのか、という疑いも持たせる。そういうことへの配慮も菅政権にはなかったのか。あるいは実際に、アメリカからの指示を受けての船長釈放だったのか?
懸念されるのは、中国漁船の船長が釈放される一方で、フジタ社員の拘束が続き、尖閣諸島問題に加えて新たな問題を、今度は日本が受け身の立場で突きつけられることだ。仮にフジタ社員の解放のために日本政府がさらに屈服する形になれば、日本国内の中国への反発、警戒感、排外的ナショナリズムはいっそう高まっていく。
それによって中国の脅威に対し、低下する外交能力を軍事力強化で補おうという声が広がるのが、最悪の道筋である。この問題をそのような方向へ行かせてはならないし、問題を悪化させる中国側の強硬姿勢も強く批判する必要がある。
那覇地検の鈴木亨次席検事が、釈放を決めた理由に日中関係の悪化への懸念を挙げる一方で、仙石由人官房長官が政府の関与を否定するのも、でたらめ極まりない。時あたかも、大阪地検特捜部の証拠隠滅(FDデータ書き換え)事件で検察の問題が焦点となっているときに、重要な外交判断を検察が行ったかのような構図を作り出し、政府や外務省が自らの責任を回避するのは対応として愚劣すぎる。
事件が発生した9月7日から9月14日までの一週間、民主党代表選挙のために政府の機能が低下して、初期対応のまずさがあったのかもしれない。しかし、そんなことは言い訳にならない。それにしても、9月18日が日本と中国にとって歴史的に重要な日であり、その日までに解決のめどをつける必要があるという歴史感覚も菅政権にはなかったのか。
問題がここまでこじれてしまったら、エスカレートしている双方の強硬姿勢を軟化させ、話し合いによる問題解決に向けて双方が歩み寄っているという状態にまずは持っていくことが、日中両政府にに問われていたはずだ。それがなされないまま、中国が強硬姿勢をエスカレートさせている段階で、日本が唐突に船長を釈放すれば、中国の圧力に屈したとしか国内外で見られないし、日本の外交能力と政治的影響力の低下が印象づけられる。
しかも、事態の推移や釈放理由を国民に説明すべき菅首相は国内に不在だ。ニューヨークでオバマ大統領と会談を行ったことと船長釈放が重なり、アメリカ側からのはたらきかけがあったのか、という疑いも持たせる。そういうことへの配慮も菅政権にはなかったのか。あるいは実際に、アメリカからの指示を受けての船長釈放だったのか?
懸念されるのは、中国漁船の船長が釈放される一方で、フジタ社員の拘束が続き、尖閣諸島問題に加えて新たな問題を、今度は日本が受け身の立場で突きつけられることだ。仮にフジタ社員の解放のために日本政府がさらに屈服する形になれば、日本国内の中国への反発、警戒感、排外的ナショナリズムはいっそう高まっていく。
それによって中国の脅威に対し、低下する外交能力を軍事力強化で補おうという声が広がるのが、最悪の道筋である。この問題をそのような方向へ行かせてはならないし、問題を悪化させる中国側の強硬姿勢も強く批判する必要がある。