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訪問看護で医療系の支援
異状の早期発見も
病気や障害を持った人が在宅で療養生活を送れるよう、看護師が自宅を訪問してケアを行う「訪問看護」。ヘルパーが行う「訪問介護」と混同される場合も多いが、実際、どんなサービスを、どのような人に提供しているのだろうか。
「お加減、いかがですか?」
大阪府門真市の90代女性の自宅を、「ちどり訪問看護ステーション」の看護師、北里美奈子さん(37)が訪れた。女性は寝たきりで、狭心症や糖尿病などの持病があり、ステーションの看護師が週2回訪問し、病状の観察や尿道カテーテルの管理などを行っている。
「母が何度も足が痛いと言うんです」。同居する長男からの相談に、北里さんは足を丁寧にチェック。「かかとに床ずれができていますね。こうして布団から足を浮かせるといいですよ」と言って、そばにあったクッションを足の下に入れた。長男は「何かあれば相談できるから、自宅で何とか世話できる」と話す。
訪問看護とは、看護師らが自宅を訪ね、主治医の指示に基づいて注射や胃ろうの管理などの医療処置を行ったり、食事や排せつ、入浴などを介助したりする。理学療法士や作業療法士らがリハビリを行う場合もある。全国に約6000か所ある訪問看護ステーションのほか、一部の病院や診療所でも行っている。
サービスを受けられるのは「主治医が訪問看護を必要と判断した人」。訪問看護には介護保険と医療保険の適用があるので、要介護認定の有無や年齢に関係なく受けられる。「人工呼吸器や経管栄養など医療器具を装着した人やがん末期の人が、自宅で暮らすケースが増えている。訪問看護師として、その人の生き方を大切にしながら暮らしを支えていきたい」と北里さんは話す。
「医療処置が必要な人だけでなく、健康に不安がある人の体調管理や療養相談も訪問看護師の大きな役割」と言うのは、兵庫県の西宮市訪問看護センターの管理者で、全国訪問看護事業協会理事の山崎和代さんだ。「生活支援が中心の訪問介護に比べると費用はかかるが、医学的知識のある看護師が幅広い支援を行うことで、異状の早期発見や、状態の悪化を防げる場合も多い」
利用料は、費用の1割を自己負担する介護保険の場合、30分以上1時間未満で約830円。医療保険は料金体系が異なり、加入している保険の種類や所得、年齢などにより1~3割負担となる。
訪問看護を利用したい場合には、どうしたらいいのか。
「要介護認定を受けている人は、一定の病状を除き、基本的には介護保険の適用となるので、ケアマネジャーに相談する。それ以外の医療保険となる人は、直接、主治医や訪問看護ステーションに問い合わせてほしい」と山崎さん。訪問看護ステーションの情報は、市町村の介護担当窓口などで教えてもらえる。
事業所を選ぶ際に確認しておきたいのが24時間対応態勢の有無だ。「特に終末医療を受けている人、人工呼吸器など医療器具を付けている人には、看護師が必要に応じて電話などで対応してくれるので、安心です」と山崎さんは強調する。
訪問看護を利用した方がいいと思われる人(山崎さんの話を基に作成)
▼医療器具を装着している
▼脱水症や肺炎で入院したことがある
▼認知症で、家族が対応に困っている
▼骨折で入院したことがある
▼がん末期で退院した
▼難病との診断を受けた
(2010年9月24日 読売新聞)
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