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米から求める沖縄撤退に覚悟ありや

2010/09/26 00:30更新

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 【軍事情勢】

 「基本的には県外、できれば『国外』と思っている」

 鳩山由紀夫前首相(63)の、できもしない思い付きによるこの発言で、米軍普天間(ふてんま)基地移設問題は迷走に迷走を重ね、日米同盟は亀裂が入るほど大きく揺さぶられた。ただし、後世の学者は鳩山責任を問わぬやもしれない。鳩山放言がなくても、在日米軍基地を米本土寄りにかなり後退させる戦略を、米国は常に研究・検討してきたからだ。

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記事本文の続き ■衝撃のギャレット計画

 自国権益確保のためには、時として“孤立主義”をも装う米国では「同盟国からの米軍撤退」「戦争静観」が歴史上、幾度も実行されてきた。それに従えば、将来における米国中国双方の軍事・経済における地球規模の関係・プレゼンス次第で、米国が現行戦略の妥協的大転換を果たす可能性はある。実際、米誌アトランティック記者でシンクタンクCNAS(新米国安全保障センター)のロバート・D・カプラン上席特別研究員(58)は米誌フォーリン・アフェアーズで発表した論文「中国の影響力にかかわる地理学」で「米国防総省内で検討されているギャレット計画」なる衝撃的戦略を解説している。計画はパット・ギャレット退役海兵隊大佐が立案。「現行の280隻より少ない戦闘艦艇250隻と、1割半以上減じられた国防予算でも、直接軍事対決なしで中国の戦略的パワーに対抗できる」と断じている。

 その柱は「大洋州の戦略的重要性」に着目、中国が西端を形成するユーラシアの均衡を企図(きと)している点だ。具体的にはグアムや●カロリン●マーシャル●北マリアナ●ソロモンの各諸島は、米国領か、防衛条約に合意するであろう独立国家で、米戦略に理解を示すはずだと観測。東アジアにも、「中国が米軍艦艇進入を阻みたい海域近く」にも、「比較的近距離」なことから「戦略的重要性を増す」と分析している。要するに、在外米軍基地の東アジアから大洋州への大撤退である。

 ■東アジアを「空白」に

 当然ながらギャレット計画は、あくまで米国側の国内事情や対中軍事・経済関係上の権益を基準に、日本を含む東アジアの安全保障を考察している。従って「米国にとっても、日本や韓国、フィリピンで米駐留軍を維持するより、大洋州に基地を保有する方が(中国に対し)挑発的でなかろう」と、計画は本音も漏らしている。

 計画はインド洋における米海軍の活動拡大も想定するものの、既存の米軍基地拡充を目指してはいない。ブルネイやマレーシア、シンガポールとの防衛協定に加え、アンダマン諸島(インド領)や●モルディブ●コモロ●モーリシャス●セーシェルなど、インド洋に点在する各群島国家内の必要最小限の施設を活用。この態勢により、ユーラシア南縁の航行の自由とエネルギーの安全輸送を確保できる-としている。東アジアを大撤退する米軍が、新たな受け入れ先を大洋州に加え、東南アジアからインド洋上にも求める戦略だ。東アジアを“空白”にする代わりに、その東西を固める狙いが見える。

 カプラン氏は「日本と韓国における米軍基地の重要性を減じ、大洋州での米活動拠点を多様化することで、敵の標的と成りやすい主要基地を撤廃できる」と、計画を評価している。さらに「受け入れ国々民が、外国軍駐留を嫌がり始めているが、中国の台頭におびえながらも、中国に(経済的)魅力を感じている」とも強調。経験不足の鳩山政権が対中関係深化を協議しながら、日米同盟の有利な改定を狙ったことなどが、現在の「日米関係危機」の原因だと示唆している。

 ■「異形」の防衛思想

 一方で「『基地駐留権』をめぐり米軍と交渉することと、米軍の本格的『撤退』を求めることの間には大きな違いがある」と、警告する。ギャレット計画には米国内で批判も多いが、米国との「基地駐留権」交渉を、図らず?も自ら「撤退」交渉に飛躍させてしまったかもしれない民主党政権の姿勢は、計画を米国政府関係者に再認識させる契機となったに違いない。

 そもそも、端(はな)から外国軍事力を頼みに、祖国を防衛する“戦略”は「異形」である。「異形」を潔(いさぎよ)しとせぬのなら、武備を大拡充し、核保有議論の封印も解かねばならぬ。ところが現実には、米軍の通常・核戦力を心のどこかで当てにしながら、自衛隊と米軍による抑止力で創り上げた“一時的平和”にどっぷりつかりながら、「米軍撤退」「自衛隊縮小」をもくろむ政治家が政権内で跳梁(ちょうりょう)している。彼らは「反米親中」と同時に「反日」という、「異形」の思想構造を形成している。ただし、こちらの「異形」は祖国を破壊する質(たち)の悪いエネルギーを伴う分、大変危ない。(政治部編集委員 野口裕之)

●=右向三角

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