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[21986] 【習作】 オリ主の 多重クロスファンタジー 
Name: カオス◆961185b4 E-MAIL ID:d79e5ecd
Date: 2010/09/18 18:31

注意書き

・この作品は、作者が考えたオリジナルファンタジーな世界でクロスオーバーしたキャラ達とオリ主が旅をする物語である
・クロスオーバーは技だけ武器だけ能力だけと言うこともあるので注意
・登場人物の大半はオリキャラです。オリ主とクロス先のキャラに関してはオリジナルな世界に放り込まれる形にあるので
・クロスオーバーする作品の世界観や設定などはそれぞれのキャラのスペックやら能力以外ことごとく無視します。
・もちろんですがキャラ崩壊に注意してください



では本編スタート






~プロローグ~



俺はこの平凡な一日が楽しかった。

俺の周りの奴等は言う。 「二次元が恋しい」「この世が詰まらなくて生きていくのが辛い」

何を言ってるんだおまえ等は。

考えて見ろ? 某ツンツン頭の主人公みたいにシスターが空から降ってきたらどうする?  ベランダに引っ掛かってたらどうする?

普通は驚くだろう、何だこいつはと警戒するだろう、下手したら幽霊と勘違いして絶叫してしまうかもしれない。

順応出来るのはごく一部だけだ。だが、ここまではまだ許容範囲だ。

更にその後の展開。ビリビリが、不良神父が、自称18歳が、最強野郎が来たらどうする?現実は物語のように甘くない。

一般人はビリビリのとろこででもうリタイアするだけだ。あの電撃から逃れられる気もしないしな。

まぁつまり俺が何が言いたいのかと言うと二次元の出来事が実際に起こったら、ろくでもないことしかないと言うことだ。

ちなみに上の例えは俺の愛読書たる作品の登場人物を使った。分かりやすかったろう?

それにだ。

物語みたいに、一般人は主人公になれない。

例え、どんな非常識なことに遭遇しても、通り過がりの人Aか被害者Aのどちらかになるかのオチしかない。

封印された右手とか、暴走する邪気眼とか、そんなご都合主義な展開が起こったり秘められた真実がある訳じゃないんだ。

だから全て所詮は夢、人々の娯楽の為に考えられた空想、もしくは妄想だ。実際に起こると言うことを願っていけない。

それらは夢として、空想として妄想として、アニメで、小説で、ゲームで、動画で楽しめばいいのさ。

俺はそうする。実際に起きることより第三者の目で見た方が好きだしな、俺は












だが、皆は疑問に思ってないか? この小説の題名(メタ発言)や、俺の最初の台詞(俺はこの平凡な~)が過去系と言うことについて

ええ分かってます、分かってますとも。皆はこう言う語りの後の展開が手に取るように分かるって言うんだろ。

ああ認めたくなかった、認めたくなかったさ。だってあり得ないだろう。

何で人々の妄想の塊と言うべき事態に巻き込まれているんだ。

何で俺は通り過がりの人Aじゃないんだ。この状況では在る意味俺は被害者Aかもしれないが、明らかにそんな単純な役割と言う訳でもないし。

よし、とりあえず今の俺の現在位置を説明しよう。スキマです。

隙間ではなく、"スキマ”です。

もう、浮いてるのか飛んでるのか立ってるのか倒れてるのか全く分からない感覚と目やら口やらが周囲に浮かんでるみたいに見える灰色の空間が気持ち悪い。

すぐにでも抜け出したい。

だが

「こんにちは」

その一言とともに目の前に現れた女性。この人を見て驚いた、まぁ今俺がいる空間からして予想出来たが

そう、弾幕ゲーである「東方」の知識を持つ俺が見間違える筈もない容姿の女性だった。

八雲 紫である。

ババァなどと言われ、加齢臭じゃない少女臭だなどと言われてるこの人だが

なるほど、ありえないほどの美少女だと俺は思った。

いや、流石に美少女の表現は似合わないか。言うなれば美女。

元々口下手故にどう表現すればいいのか分からないが……

古の中国にて、為政者が現を抜かして、国を滅ぼしかねないほどの美女がいたと言う。

傾国の美女とは、そんな物いないだろうと俺は思ったが今の目の前に立っている八雲紫ほどの美しさなら傾国の美女と言われても納得がいく。

……ん? 少し分かりにくいか。いや、でもこれ以上上手く説明できないしなー…まぁ世界史に、特に古代中国が詳しかったら大丈夫か。

しかし、まさか実物でもここまでとは思わなかった。所詮は二次元だけ、と言う訳ではないらしい。

「あら、どういたしました?」

「え…あ、いやちょっとな」

「ふふ、突然のことですもの。驚かれるのも無理ありませんわ」

ふとした気恥ずかしさに、愛想笑いを浮かべながら頭を掻く俺。この時ほど自身がみっともなかったなーと思ったことはない。

まぁ男なら仕方がない、と言うことで許してもらおう。絶世の美女でスタイルもかなり良かったら見惚れるのも普通だよな? 

ほんと、八雲紫の存在はこの世の全ての女性も真っ青だ。いや待てよ、すると幻想郷もあるとして…更に美少女がいると言うのか!? 博麗霊夢が! 霧雨魔里沙が! 












待て待て、まずは落ち着こうか、俺

バカみたいに(実際バカなのだろうが)一旦脳内フル稼働状態から冷却作業に入っている俺に対し、八雲紫は手に持つ傘を差しながら優雅な足取りで俺の目の前まで歩み寄ると、微笑みながら彼女は言った。



「おめでとう。あなたは幾つもある"オリジナル”の世界から選ばれた、たった一人の"主人公”ですわ」







はははは、主人公かー……俺がか?



[21986] 第一話・何か集まった仲間って俺の趣味や偏見と深く関わってる気がする 前編
Name: カオス◆961185b4 E-MAIL ID:d79e5ecd
Date: 2010/09/19 10:52
見渡す限りの草原。

この表現が本当にふさわしい光景を俺は見ている。

地平線の彼方まで続いてるんじゃなかろうかと思わせるほど野花や野草がどこまでも続く大地。

見た限りでは木は一本も立っておらず、音を立てながら吹く風が体全体に当たっているがそれほどひどくはない。むしろ心地良い。

快晴で白い雲と青い空がいっぱいだし、太陽の日差しもポカポカと暖かい。なんて昼寝に適した環境だろう。

普通昼寝の一つでもしたいのだが、ここに来た経緯を忘れる訳にはいかない。

「さて…これからどうなるか……どうなるんだろう…」

これからのことで多少不安がりながら、空を見上げながら俺は、八雲紫との会話を改めて思い起こしてみた…



別にあらすじに突入させようと思っての行動じゃないからな?




~~時は遡りスキマ空間にて~~

「主人公ってのは、一体…?」

「そのまんまの意味。あなたにはこれからとある世界へ行っていただきます」

「そりゃ唐突な話で」

スキマ空間の中に用意されたソファに座り、向かい合う形でもう一方の方に座る紫の話を聞いていた。

どうせソファを出すなら談話室かなんかを出して欲しかった…不気味ですともスキマ空間。

しかも、俺の異世界行きも決定事項みたいだしぃ。俺の、俺の平凡がぁぁぁぁぁ……

「…はぁ、それでどんな世界に行くことになるんですか? 俺は」

もう色々と観念した俺は前ごしになりながら顔は下を俯いたままだ。

そんな俺を気にしてもいないようにふふっと聞こえてくる八雲紫の笑い声。

多少は気遣ってくれてもいいでしょうに…

溜め息をつい口から出しながら、俺は顔だけを相手に向ける。

もう腹を括ろうじゃないか。どんな世界もドンと来いだ! ドンとな!

さぁ言ってもらおうか! 大体予想つくけどな!

「剣と魔法の世界。それが今からあなたに向かってもらう場所です」

「やっぱりな」

最近見た小説じゃ大体そんな所だろうと思ったら、まさしくその通りだった。

しかし剣と魔法の世界か。一体どんな所だろうか、少し好奇心が湧くな。

主人公と言うことはやはり俺は、勇者かなんかなのだろうか。

主人公と言ったら普通勇者だろう。すると俺の役割は、やっぱり魔王討伐とかか?

「そして、その世界でのあなたの役割は…」

お茶を啜りながら、八雲紫は言った。とりあえず緑茶俺も欲しいです。

と思ったら何故か俺は両手で緑茶が入った湯呑みを持っていた。一体どうなってんだろうこれ?

まぁいいや、喉も乾いてたし頂こうか……うむ、これは中々の…

「魔王ですね」

「ぶはっ!?」

「あらあら、むせましたか?」

「ゴホッ!…ゲホッ!…すいません、ちょっと、思わず…」

魔王? 俺が? 主人公だったよな? 魔王? 悪者ですか? はい?

吹き出してしまったお茶を慌てて手持ちのハンカチで拭く。うわぁ、上着が思いっきり濡れたなこれは

「大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。話を続けてください」

「ああ、話ならここまです」

「はい?」

彼女の言葉にハンカチを持って動かしてた手が止まる。

もう終わり? しかし俺はまだ説明らしい説明を受けてない。

聞いたとしたら俺が主人公であると言うことと、行く世界が剣と魔法の世界であると言うことと、役割が魔王と言うことである。

「それでだけって、明らかに説明不足でしょ?」

「確かに説明不足ですわ。しかし、残りはわたくしの気が向いたら、と言うことで」

「うわぁ…」

いつの間にか湯呑みを手に持っておらず、広げた扇子で口元を隠していた。

その扇子の下では…絶対口元が笑ってる、一瞬俺がボケーッとした時にはもう笑ってただろう絶対。

「その変わりと言ってはなんですが、現実主義者なあなたに一つお教えしますわ」

「へぇ、一つですか…一つなんですねぇー…」

「ふふ、一つですわ」

そして、互いに見つめあった。目と目が合った瞬間、その後数秒。

「…一つと言わずに「一つですわ?」…あー、お願いします」

ダメだった。情報は多い方がいいんだけどな。それに今聞いておかないといつ聞けるか分からないし。

八雲紫の気が向いたらはどうしてこんなに信用出来ないんだろうか?

「宜しい。では、あなたにお教えするのは…あなたの存在について」

「俺の存在?」

「そう、あなたの存在。あなたはこう思ってるのでしょ? 二次元の世界なんざ憧れるだけで十分、と」

「まぁ、そうだな」

二次元の存在と今はこうやって会ってる訳だが…普通に考えたら三次元な俺と邂逅することなどないだろう。

アニメが現実と交わるなんて普通はないだろうしな、と言うかこうやって存在してるってこと事態予想出来る訳ない。

だが急になんだって言うんだ? 今この時八雲紫と会った時点で二次元と三次元が互いに邂逅出来ることなのだから既に俺の考え自体無意味だろう。

首を傾げる俺だったが、八雲紫相変わらず笑ってるだろう口元を扇子で隠しながら

「人々の想像力から生まれた私たちが、現実に存在するなんてことがあると思う?」

「なに? だが今は現に…」

「簡単なことです。あなた方の世界では、自分たちを三次元と認識してるのが当たり前ですわ」

「……えーと、つまり?」

「あなたも二次元の存在ですよ。わたくしと同じ、ね」

「何だってー!?」

今明かされる衝撃の真実! だが…つまり何か? 俺も二次元なのにただただ勘違いしてただけなのか?

いやいや、待て落ち着け。まだ早まってはいけない。

「本当か?」

疑問の声を上げる俺。

それに対し紫さんは未だ疑ってる俺を呆れたような目で見た。

「わたくしと会ってる時点で本当、ですよ? それにあなたの世界でも二次元的要素はあった筈です。思い起こしてみてください」

「なに? そんなこと一回も」

ああ、そんなことなかった。

平凡な、何も変わらない現実だった。

僕っ子な女の子や外見年齢と実年齢が全く会ってない女の子や、異様なアホ毛が目立つ幼馴染みがいただけ……あれ?

「どうです?」

「………………」

え、えーと、その、あの、なんだ。

…十分二次元してんじゃんか俺 orz

「あなたの世界はジャンル的に、俗に言う『ギャルゲー』であり、あなた自身はモテモテ主人公ですわ」

しかも俺主人公かよ。すいませんごめんなさい今まで主人公なんざなれねぇよとか言っちゃってごめんなさい友達たち(主に男)…何で俺が謝ってるかって?

だって、今考えたら主人公から「てめぇらなんざ一生わき役だ」みたいなこと言われたら腹立つもんだよな…まぁみんなも俺達が二次元の存在だったって知らないだろうけどさ。

まぁ、今まで俺が言ってきたことは無かったことにしとこう。もちろん前回の語りもな(メタ発言)。

だが、また気になることが出来たなー

「なぁ紫さん、俺に言った"たった一人の主人公”ってのはいt「さぁ移動させますよ」ちょっとまてぇい!」

「スキマ(タイプS)、オープーン☆」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、不意打ちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

突然足下に開かれたスキマから一気に落ちていく俺…

そして、落ちていく俺が見た光景は…

八雲紫が、俺が落ちたスキマの側からこちらを見て…



…笑っていた……



もうニヤリって擬音が付きそうな笑み! アレ見て俺紫嫌いになったわもう次会った時には奴は血を見ることになる。

覚悟しとけよ! 八雲紫! 俺は、絶対に戻ってくるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……

~そして現在に至る~



「…割とどうでも良いことしか情報は手に入らなかったな…」

だだっ広い草原の中でただ一人ポツンと体育座りをしている俺だが、少し心細く感じながらこれからのことについて考えることとした。

まずはこの世界がどこなのか、と言うことについてだが全く分からない。

それに関する情報さえも一切ないし、現在位置も定かでない、それ以前に方角さえもはっきりしない。

お手上げ状態。だから今はこうやって待機してるんだけどな



次に持ち物だ。

持ってた筈の学生鞄は、なし。しかしポケットに入れてたせいか携帯はあるがそれ以外はなし。

ちなみに服装も現在着ている黒の学生服のみ……やばいな金銭的に必要そうなものさえない。

と言うか、あったとしても俺の世界でのお金がこっちでも使えるかどうかさえ定かではない。

ちなみに、もう既に分かるだろが俺は学校帰りにスキマに誘拐された。だからこんな格好なのである。



…どうしよう。マジで困ったぞ、これは…

このままでは、最悪な結末しかない。

見る限りじゃ、人がいるであろう町や村を探すにしても途方もないことだろう。

しかもどことも分からない場所で無闇に歩くのは、体力の無駄だ。

だがだからと言って留まっていても事態が好転することもない。

そして結局は野垂れ死ぬのみ。いや、もしかしたら獣に食い殺されるとかもあるかもしれない。

今はいないが、もしかしたらこの草原にも……っていかんいかん。ネガティブはよせネガティブは



…歩くしかないか。留まってても何にもならないし

俺は腰を上げ、辺りを見渡した。

うん。変化なし。辺りは一面同じ風景、相変わらずの草原です。

はぁ……歩くか。



「……………ぁぁぁぁぁ」

一体歩いたら何時間位になるんだろうか…もしかしたら何十時間もあるかもしれない。

「……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

やっぱり剣と魔法の世界ならモンスターとかいるのかな?…ダメだ、生き残れる自信がない…

「……えぇ!」

……ん?

「ねえぇってば! ちょっとどけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「え…?」



上を見上げた。そこには蝙蝠の羽みたいなものを背中に付けた少女が落ちてきていた。

あぁ、何だ吸血鬼か。昼間から空から落ちちゃって…ん?

「え、えぇぇぇぇ!? 何でぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「だからどけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「ちょ、洒落にならん!」

と言うか何で飛ばないで重力に身を任せてるんだあの吸血鬼!? いや…もしや飛べないのか!?

とりあえず、このままじゃやばい!

俺は彼女の落下地点を計算して向かい、そして



バシィィィィンッッ!!



もの凄い衝撃が俺の両腕を襲ったが、何とか吸血鬼の少女をキャッチした。

やったぞ俺! スゴいぞ俺! あんな高さから落ちてきたのをキャッチしたのに腕折れてないとか奇跡以外の何者でもないぜ!

「貴様はバカか人間! わたしは吸血鬼だ。あの程度の高さから落ちても死にはしない!」



あ、そう言えば…



今はお姫様抱っこ状態の吸血鬼少女だが、こんな小さな少女でも吸血鬼の身体能力とか再生能力って凄かったんだっけな、そういえば

しかも、この吸血鬼少女ってまさか…

「…何だ、人間。人の顔をジロジロと何を見ている」

「……お前、レミリア・スカーレットか?」

「なに…知ってるのか、わたしを…と言うより貴様、まずは降ろせ。いつまでもこうしとかなくともいい」

腕の中で暴れる吸血鬼少女を降ろしながら俺はつい苦笑いを浮かべる。



間違いないな、レミリア・スカーレットだ。

しかし何故彼女がここに? と言うか何で日光に当たって無事なんだ?

吸血鬼の弱点って流水と日光だった筈だが、何がどうなってるんだ。

それに、彼女も俺と同じで八雲紫に連れてこられたのか? それとも…

「なぁ、レミリア・スカーレット。何であなたは空から落ちてきたんだろうか?」

「…貴様もか?」

「俺の場合は、連れてこられたけど…まぁ、空から落ちてきたのは同じだな。あんなに高くなかったけど」

「…スキマ妖怪め……飛べなかったのも、奴の影響か…」

舌打ちをし、顔が凄く怖くなった。なるほど、やはり八雲紫か。

しかも高度を明らかに高くして落下とは、幾ら相手が吸血鬼でもタチが悪い。

今はどうやら飛べるみたいだが、さっきまで境界か何かで弄んでたのかねぇ。

まぁ、とりあえず俺と同じ被害者と会ったんだ。何とか協力して欲しいんだが…



…ただの人間である俺と協力関係を結んでくれるだろうか?



[21986] 第一話・何か集まった仲間って俺の趣味や偏見と深く関わってる気がする 中編
Name: カオス◆961185b4 E-MAIL ID:d79e5ecd
Date: 2010/09/20 16:40
さて、俺です。

まだ名乗ってもいない俺です。

主人公の癖に第一話の前編の時点でも名前が分からなかった俺です。

別に三回も主張しましたが気にしてる訳じゃないぞ? 名前が無いわけでもないのだからな。

とりあえず、現状の説明をしておこう。



レミリア・スカーレットと出会った俺だが、一緒に行ってくれることになった。

まさかただの人間である俺の頼みにこうもあっさり了承してくれるとは、と驚いたが彼女曰く

「度胸のある人間は嫌いじゃない。それにあの高さから落ちたわたしを腕も折らずにキャッチした時点で唯の人間ではなかろう?」

とのことだ。

失礼な。あれは偶然に偶然に重なり、更に奇跡と言う奇跡が俺の両腕にトンデモパワーを与えた結果だ。

…………すまん、流石に無理があった。今の俺としては決して体に異変が起こってないこと祈るだけだ。

さてさて、話を戻そう。

俺はレミリアにしがみついてもの凄い速度で空を飛んで行き、草原を抜けて遠目から城らしい建物が見えるところまで来た。

今はクレイドル平原と言われる場所を歩いてる。

自然が豊かな場所であり、草原と違い風の吹く音だけではなく木々がざわめく音や空を飛び回る鳥の群れの鳴き声など賑やかに感じられる。

この自然を堪能…と言う訳ではないが、城まで飛んで行くと言うのも目立つことだしな。ここからは徒歩と言う奴だ。

しかし何故俺が今いる平原の名前が分かったか疑問に思うだろう?

それは携帯電話があるからそ知ることが出来たのだ。

ここに着地した後、急にポケットの中に突っ込んでた携帯が鳴り始めてな(ちなみに着メロはネクロファンタジアだった……八雲紫!! 貴様の仕業か!!)

使えない筈なのに何故? とか、何だ急にうるさいなーとか思いながら携帯を開くと画面にはこう表示されていた。

《自由国家 レイディアンドガーデンを確認しました。大陸MAPに登録します》

《クレイドル平原を確認しました。大陸MAPに登録します》

《現在地はクレイドル平原です。危険度D 小型モンスターのみ生息しています》

なんか画面に順序に表示された。

はて、自由国家とはあの城がある町のことか? 

クレイドル平原とは今俺達がいるこの場所か?

 などと考えてたら今度はメールが、宛先任はなんと八雲紫。

まさか携帯を持ってるとは知らなかったがそこは、妖怪も現代社会に馴染んでるんだなと納得した。

そして、何故彼女がメールを持ってきたのか、それは多分この携帯の機能についての説明なのだろう。

今のところそれ以外に考えられない。それ以外だったら八雲紫の人間性、と言うか妖怪性を疑う。

気づけば俺の横でレミリアが、低い身長を背伸びさせて俺の携帯の画面を覗き込んでいた。

気にせず進めようと思たが、少しプルプルしてたのでとりあえず近くにあった丸みを帯び腰掛けるに丁度いい岩に座った。そしてメールを見る。



メールを見終わった。無駄に長い前置きがあったが、簡単にまとめるとこんな感じだ。



一つ、大陸MAPとはこの世界の地図であり、携帯にはそれを表示する機能がある。

一つ、大陸MAP上に存在するであろう地名、国、更にその国の都市などは自分の目で確認されると同時にMAPへの登録が完了となる。

一つ、メール機能は使えない。気が向いたら使えるようにするかも。

一つ、元々大陸MAPには地名、国、都市の全ての情報があるがそれでは面白くないので行ったことがある場所しか表示されないようにした。



……おk、把握した。

しかし三番目はメール云々以前にあまり使えないだろう、八雲紫の相手以外は。

だが、そんなことは正直どうでもいい。

俺が一番腹立ったのはもりちろん四番。元々ある情報を面白い面白くないで手を加えられるのは気に入らんですがねぇ…?

「ほう…どうやら気が合うようだな、貴様とは」

口に出してなかったのに何故か通じたよレミリアに。ははは、俺の殺気が濃すぎて見えちゃったのかなー?

とりあえず覚えてろよ八雲紫、土地勘もない俺達に対してのこの処置は余りにもムゴいものだと言うことを思い知らさせてやる!

「よし! 全力で迷うぞ! レミリア!」

「確かに貴様の怒りには同意してるがその考えはおかしい」






と言う訳だ。迷うわけにも行かず、クレイドル平原を歩いてる俺とレミリアだが色々おかしいことに歩いて行くにつれて気づいていた。

所々が何故か破壊されている。ある場所では地面が盛り上がりまるで何かに砕かれたように、ある場所では木と言う木が灰化して真っ黒になってたり折れてたりしてたり。

そして何より前方からドーンドーンと爆発音、いや砲撃音っぽい音が聞こえてきたり。

明らかにこれ尋常じゃないだろう。明らかに俺達の前方じゃ戦闘が巻き起こってるだろう。

「人間、貴様はここに残れ。少し様子を見てくる」

「なに、なら俺も」

「もし敵ならば、貴様が来ては足手まといだ」

「………………」

あー、図星過ぎてぐぅの音も出ない。確かにレミリアの言う通りだよな。

ならここは潔さも必要ですかね。

「分かった、だけど危険だと思ったら絶対に逃げろよ」

「このわたしが逃げる、ねぇ…別に倒してしまっても構わんのだろう?」

「……訂正、思う存分やって来い」

「それならば問題ない。ではな」

不敵な笑みを浮かべると、レミリアは戦闘が行われてるであろう場所へ向かって行った。

全く、好戦的なこと言いやがってさ。まぁだからこそ夜の王、誇り高き吸血鬼だな。

それに、レミリアが負けるとは思ってない。例えどんな敵でも。

なんたって彼女はレミリア・スカーレットなのだから。それ以上も以下もない特別な存在なのだから。

だから、だからこそ。

今の俺が出来ることは、彼女の帰還を待つのみだ……









……待て。

待て待て待て。

おかしい、どうもおかしい。

なんか話がいかにも戦うの前提なんだけどぉ? てかレミリアの台詞ってフラグ立ててるんだけどぉ!?……ッ!!!

…バ、バカな…まさか、これが、ギャグ補正の力、なのか…? …いつの間に補正作用が掛かったんだ……(汗)

…すると、今頃レミリアは……しまったッッ!!レミリアが危ないッッ!!戦闘前の会話はギャグ補正の罠だったんだよ!!



"な、なんだってー!?”(天の声)






『ディバイィィイィィン……バスタァァァァァァ!!』

『うぼぁー』

「レミリアァァァァァァァァァ!!」



三者三様の叫び声がクレイドル平原に響きわたる。

そして、涙目となったレミリアの手を繋いでこちらに来た少女がまた、驚かざるおえない相手だった。






「高町なのはです! 宜しくお願いします!」

唐突だが新しい仲間が出来た。

将来が管理局の白い魔王であろう魔"砲”少女、高町なのはその人なのだ!

年齢は15歳と言ってたな。つまり管理局に入りたて、と言う訳か…これからエースオブエースとか言われていくんだろうなー…

ちなみにさっきのディバインバスターの時は、突然射線上にレミリアが突っ込んできたとのこと

こればかりはレミリアの失態だろう…しかし恐るべきはギャグ補正であってだな。おr(以下省略)

「突然襲ってきたスライムみたいなのを吹っ飛ばしてたのに関係ない人を巻き込むなんて…レミリアちゃん…ほんとにごめんなさい!」

「うぅ…情けは不要よ…明らかに、明らかにわたしが不覚を取ったんだからぁぁぁぁぁぁ…」

レミリアさん、口調が変わってませんか? もしやそれが素ですか? 素ですよね?

だからギャグ補正とは恐ろしいものでな、現にレミリアもあんなn(以下省略)

頭を下げた後、なのはちゃんも少しアタフタしながらも涙目になってるレミリアの頭を撫でてるし…

うわぁ、なんか和むな、この光景。

多分今の俺は顔がドロ~ンってしてるんだろうなー、自重せねば…

「ところで高町さん」

「ん、なのはでいいよ?」

「あー、しかし初対面であって流石に慣れ慣れしいかなーって」

「うんうん、気にすることないよ? 大丈夫大丈夫」

「あ、そうか? ならなのはさんで」

俺から見たら元気な子だなー、とても一歳しか差がないなんて思えない元気さだ。

だがそれと同時に俺はジジ臭いのかもしれないな…はぁ……

「どうしたの?」

「いや、何でもない。とりあえず本題に戻るとして…」

そうだ、聞いておかねば。彼女がこの世界の住人って訳が絶対ない。

「あなたは何故この世界に?」

「上層部から特殊任務だと指令を受けてここに来たの。内容は教えられなかったんだけどね……え? 二人はこの世界の人達じゃないの?」

「全然違う」

「…違うわ、馬鹿者が」

首を傾げながら聞いてくるなのはに、俺、レミリアの順で肯定し頷く。

レミリアは相変わらずシクシクとしているが…よっぽど痛かったんだろうな、やっぱり。

「とある胡散臭い人のお陰でこんな所に来てしまったのさ…」

「元はと言えばスキマ妖怪が……ブツブツ…」

「は、はははは。色々と、大変だったみたいだね」

「ああ、大変だったよ。ことの始まりは俺が下校中の時だった…」

「あれ? 何だか露骨にあらすじを導入しようとしてる?」

「わたしがこんな所に来ることとなった発端は、あのスキマ妖怪から夜に呼び出されたのが始まりだったわ…」

「えぇ!? こっちも!? て言うか同時進行であらすじに入られても混乱するだけだよ!」

「「それもそうだな(そうね)」」

「い、息がピッタリ…」

この時なのはは明らかに苦笑いを浮かべて冷や汗を掻いてた…ほんとすいませんでした。

これだからギャグ補正は人にm(以下省略)

とりあえず、行動方針は変わらないんだ。

話を聞いてて色々気になることもあったけど改めてそれを聞くのはあの都市に着いてからだな。

「じゃあ、行くか。なのはさん、レミリア」

「う、うん、えーと…」

「…なんだ?」

「おい人間…貴様、そう言えばまだ名乗ってなかったな?」



……あ、そう言えば…



[21986] 第一話・何か集まった仲間って俺の趣味や偏見と深く関わってる気がする 後編
Name: カオス◆961185b4 E-MAIL ID:d79e5ecd
Date: 2010/09/20 16:42
主人公こと、加賀美 祥です。

いつの間にか名前を紹介してる訳だが

何、気にすることはない。深く考えるのはナンセンスだ。



現在はなのはさんとレミリアと共に、無事都市の中に入ることが出来た。

都市の名はレイディアンドガーデン。どうやら自由国家の首都でもあるらしい。

入る際、やはり門番に止められたのだがそこは俺の口先術の見せ所……と言う訳ではなく、なんかあっさりと俺達を門の中に入れてくれた。

「特に俺達のことも調べずに…ちょっと不注意過ぎるんじゃないか?」

「どうだかな。自由国家と言う位だ、来るものは拒まずを信条としてるだけかもしれんぞ。まぁそれでこの町がどう言う現状なのかは知らんが」

「でも、城下町はほんと賑やかだよ。いろんな種類の服の人がいるけどみんな活気があるし」

「確かにそうだな…杞憂だったかな?」

「いや……わたしとしては、多少気になる物を見つけたがな」

「ん?」

大通りを往来する人々に目を向けながら歩いていた俺達だったが、レミリアの言葉でふと足を止めた。

目の前には露店らしきもの。いや、露店自体は大通りに幾つも立ち並んでいるんだがレミリアが視線を向けた先の露店、どうやら武器を売ってるようだ。

はて、あの武器売りが一体何かあるのか? 確かに他と比べてなんか雰囲気が近寄りがたいし、そのせいか立ち寄る人もいないようだが

「あの露店がどうしたんだ? 確かに露店で武器を売ってるのも珍しいのかもしれないけど」

下手しても他の露店のような食べ物やら酒やら美術品とは明らかにジャンルが違う。

多分武器屋もあるだろうし、わざわざ露店で買おうと思う奴もいないだろう。

手入れやら質とかは武器屋の方が信用出来るだろうしな。

まぁRPGをしてれば少しは似通った部分もあるから俺にも分かる。まんまゲーム通りと言うのもアレだと思うが

「問題は並べられてる全ての武器が、それなりに強力な呪術か魔法、霊装が施されてると言うことだ」

「へぇ…」

つまり、取り扱ってる全ての武器が曰く付き、と言うことか?

しかし案の定興味を持ったご様子だ。

「更にあの老人もただ者ではないようだ…人間その1とその2、行ってみるぞ」

「へいへい」

「わたしはなのはなの!」

俺は適当に返事をするが、なのはさんはそうもいかなかったらしい。

頬を膨らましながら言うなのはだったがレミリアは無視して先に行ってしまった。

ふむ、俺からしたら十分可愛らしい仕草だななのはさん。

まぁ俺の感想なんぞ置いといて、どうもなのはさんはレミリアの態度が許し難いらしい。まぁ当然かもな。

「なのはさん、とりあえず認められるまでの辛抱だ。あなたの場合は多分あの砲撃の直撃で多少拗ねてるだけのようだし」

「むぅ……けど、 それでもやっぱり、名前で呼ばなきゃいけないと思う、わたしや祥君にだってちゃんとした名前があるんだから」

「はは、それでもまぁ俺の場合は何かあってもただの役立たずだしさ。認められるってのも中々時間が掛かるんだよ…さて、この話はここまでだ。レミリアはもう行ってるし、俺達も行こう」

「けど…うん、分かった…」

レミリアに遅れて武器を売る露店の方に足を進める。

俺の隣を歩いていたなのはさんは、やはり気にしてるみたいだった。

確かにレミリアの言い方は酷いけどあれでもまだ精神年齢とかもお子様だろうし(何よりディバインバスター撃たれたときに素の彼女が垣間見えたし)

だから俺はそう割り切ってる部分もあるから気にしてないんだけどな。

本当に優しい子だな、この子は

……いかん、なんかまたジジ臭い思考になってしまった。俺となのはさんでも1歳差でしかないのに!



「おい店主」

「なんだいお嬢ちゃん」

俺となのはさんがトボトボ歩いて例の露店の前で来ると、レミリアが露店の店主であろう老人に声を掛けていた。

バンダナで頭を覆い隠すように結んでいるがそこからはみ出た白髪は下の方で結んであった。

服装も黒いロープのようなものであり、年寄りにしては少し若々しさも感じられる顔立ちとどこか不思議な印象を思わせる人だった。

何よりレミリアとこの老人の二人を包み込むような何とも言えない雰囲気がただただ重く感じて仕方がない。

通行人もなんか距離を離して歩き去ってるし、なのはさんもこの光景には苦笑いを浮かべずにいられなかった。もちろん俺もだが

「店主、貴様の揃えている武器はまた珍しい物ばかりだな、集めるにしても1から作るにしても……ただのご老体では少し無理があろう?」

「なぁに心配には及ばん。まだまだ"登山”が大好きな元気な爺さんじゃよ儂は」

「ほう、"登山”とは健康的で何よりだが流石に身を引くを時期なのでは?」

「はっはっはっは。それも心配には及ばん、時期が来れば自ずと儂は身を引くことになるのじゃから」

登山の話してるよあの二人。確かにロープ越しでも分かる位引き締まった体躯を持ち合わせてるみたいだがあの雰囲気で会話内容が登山とは少しシュール過ぎるでしょ?

「元気なお爺さんみたいだね~」

おいおいなのはさん、普通に感心してどうする。

「所でそこの若いの」

え、俺? 急に話振られたぞ? しかし突然登山の話となると流石に

「え、あ、登山って言ったらやっぱり高い山にお登りになるのが好きなんですか?」

「は? 何を言っておる。誰が山登りの話をすると言った」

「え、しかしさっきまで…」

(言葉の文と言う奴だ。その程度のことも察せないのか貴様は)

呆れたような声で俺に耳打ちするレミリア。

え、なに、すると普通の山登りの話じゃなかったの? うわ、俺としたことがなんか自分自身に劣等感を覚えてしまいそう。

「ふむふむ、どうやら頭はお嬢ちゃんより宜しくない出来みたいじゃの」

それは痛いところを突いてきたなぁおい。

てかそこ! レミリアよ笑うな! 鼻で笑うな! 

てかなのはさん! その気遣いの視線はやめてくれ!と言うかあなたも俺と同じで分かってなかったでしょ!?

「山岳地帯でモンスター退治って大変だと思うんですけどそれをこなしてるお爺ちゃんってすごいと思います!、だけど無理はしないでくださいね」

「はっはっは。分かっておる分かっておる」

「…………………………あれ?」

分かってらっしゃったのかなのはさん orz

だからレミリア! 笑うな! 鼻で笑うな!

てかなのはさん! もういい! もう俺の(精神的な意味での)ライフは0よ!?

「しかしお嬢ちゃんたちは勘がいいのぉ。登山に例えての話じゃったのにしっかり察知しておる」

「当然、わたしには造作のないことさ」

「なんとなくお爺ちゃんを見てたら分かっちゃって」

なんだこの疎外感。

伊達に戦いこなしてませんよねー二人とも。

貧弱一般人な俺じゃ察するどころかいくえ不明になり兼ねませんよねー。

肩を落とした俺だったが、そんな俺を見て爺さんは盛大に笑っていた。

「はっはっは! 気にするな気にするな。男は鈍い位が丁度いいんじゃよ?」

「そんなもんなんですかねぇ…」

いや、でも流石に話からずれて、そんでもって鈍いと言うのは孤立を強める要素でしてねぇ…

まぁそんな滅多なもんじゃないが、話だろうとなんだろうと置いてけぼりに遭うのは勘弁願いたい。

そう考えるうちに溜め息がでるが、そんな俺を責める奴などいないだろう。

「見苦しい、この店主の言うことも一理あるじゃないか。少しは堂々とした人間」

訂正、ここに一人俺を責める奴がいた。レミリアだ。

とりあえずさっきまで笑ってたお前にんなこと言われたかないっての。



「あー、ところで一体なんですか?」

「おぉ、そうじゃったそじゃった」

話の軸を戻すことにした俺。

相変わらずレミリアが俺を見ながら笑ってるのにはムカッと来たが、なのはさんの苦笑いを浮かべながら見守ってる感じの眼差しには助かった。

爺さんも笑いながら応えると急にゴソゴソと何かを取り出した。

取り出されたものは木箱。縦幅が異様に長い木箱だったがレミリアはそれを見て「ほう」と関心した様
な声を漏らしなのはさんは「どこかで見たことあるような…?」と疑問を込めた声を上げていた。

俺としてはだが………見覚えがある入れ物。

今の日本では滅多に見ることないだろうが道場辺りに行けば見れるかもしれない。

俺も資料でしか見たことないのだが、武器であり、国外からは芸術品とまで言われた物を入れた木箱と同じだ。

するともしやこの中身は…

「……これは、やっぱりか」

「やはり知ってたか。儂の勘も鈍っておらんのぉ」

木箱の中に入ってたのは、日本刀。

2、3世紀前までは日本では護身用として侍達が持ち歩いていた武器。

片刃の湾曲した剣であり、世界のどの剣よりも切れ味があると言われているこの日本刀。

まぁ扱う人がしっかりしてなければ斬れる物も斬れないが、それでも斬ることに優れていることには変わらないだろう。

しかし何故? こんな世界に日本刀が?

「その剣の名は、『村正』」

「ッ!!……妖刀か…」

しかもこれ徳川家に仇なす刀かよ。

確か村正って刀自体は一杯あってそのほとんどが徳川家によって破棄されと聞いたんだが…

しかし流れ的に一般的にあった村正じゃなくて徳川家に縁のある者を斬った"妖刀村正”なんだろうな。大丈夫かなこんなん手に持って

「それをお主に譲ろう」

「え?」

わぁお予想外のお言葉。俺に妖刀を使えと言うのか? 刀なんざ扱ったこともないってのに

しかしそんなことを知ってか知らずか、どちらにしろ爺さんは俺に持たせるように強く薦めるし…持ってて何か厄介ごとでも起きたのか?

だが貰えと言われて断って、貰えと言われて断ってを続けていても明らかに時間の無駄だ。

うん、大丈夫だよね。妖刀の呪いとかあっても大丈夫だよね!

「…分かりました。有り難く受け取らせていただきます」

「それは良かった。では、その刀を宜しく頼む」

「? ああ、分かりました」

まぁ刀自体には興味あるし、妖刀と言っても魔法がありな世界なら問題もないかな。

しかし俺に村正を渡す瞬間の爺さん、どこか寂しそうな顔をしてたんだが多分気のせいだろう。

「んじゃ、商売の邪魔じゃ。若いもんはさっさと散れ散れ」

「それもそうか。ではな店主、機会があれば」

「商売頑張ってください!」

「お嬢ちゃん達も達者でな……そしてそっちの若いの」

「何ですか?」

レミリヤやなのはさんには笑顔だった爺さんだが、俺に声を掛けた時には少し険しい表情だった。

なんだなんだ、この村正のことについてか?

「頼むぞ若いの、そいつはお前さんを気に入ってるからな」

「え? わ、分かりました」

案の定村正のことだった。しかし…俺を気に入ってる? 村正がか?

それに頼むってどう言う意味だ? やっぱりそのまんまの意味だろうか?



こうしてあの爺さんの露店を後にした。

俺は、手に持った鞘に収められた村正に視線を落としながらどこか不思議な違和感を感じていた。

どうも変だよな、手に村正を持ってから…



まるで、もう一人誰かがいるような錯覚が襲ってくる、みたいな感じだ… 






「しかしあの若いのを気に入るとはな、あの"嬢ちゃん”もただ意志を持ってるわけじゃないんだねぇ…」

遠目から見て武器を磨いてるだろう爺さんの独り言を、俺が聞こえる筈もなかった…






[21986] 第二話・擬人化武器の相手は危険ですね、全く(主に妖刀)
Name: カオス◆961185b4 E-MAIL ID:d79e5ecd
Date: 2010/09/23 23:35
今回は今日までの出来事を整理していくぞー

そんな訳で俺達の現在の活動拠点は宿屋。

…と言っても今は俺一人個室にて椅子に座り本を読んでる。この世界の文字が何故か日本語だったと言うのが助かった…ご都合主義じゃないよ? 多分

テーブルに置いた紅茶にもちょこちょこ口を付けている。うむ、こう言う飲み物も結構イケるな。

レミリアは「さて、この世界の妖魔の者々はどの程度の力を持つか確かめるとするか」とか言いながら都市の外に向かい

なのはさんは「じゃあ、私も付き合うよレミリアちゃん」とレミリアが部屋を出た後にすぐに彼女を追って部屋を出てしまった。

部屋の外から二人の声が聞こえてのだが、仲良くなったのだろうか? それに

「ぬぅ、邪魔するな人間。私一人でも十分だと言うのに」

「私の場合は管理局からの任務もあるし…レミリアちゃんと一緒に行かせてもらうついでに周辺地域の調査もしとこうかなって思って」

「ほう…一応組織の人間としての使命を忘れた訳ではないか(任務内容が分からなくともひとまず行動を起こすか…ふふ、真面目な女だ)」

「そう言うことかな。だから、迷惑は掛けないよ?」

「…好きにしろ」

…なんて会話が聞こえたが、いやはや二人ととやっぱり俺と生きている世界が違うなー

とりあえず俺は、二人に見送りの言葉だけ掛けておいといた。



何はともあれなのはさんがこの世界の通貨を大量に調達してたのにも助かった。

流石に金の調達方法が未だ分かってない時に一文無しと言うのも酷な事だし、八雲紫も金位渡せってんだ。

まぁそのことについてはさておき、とりあえず現時点で分かったことについてまとめとこう。



その1、フレンド登録が出来る。

原理は知らないが俺と面識を持ち、なおかつ顔を知った相手の名前を携帯に登録することによっていつでも連絡が取り合えるようになるのだ。



こちらが携帯からに対して相手側に伝わる方法は色々あるが、念話だったり自分の意志を相手の脳内にダイレクトに流し込んだりだとか。

そして、俺と同じように携帯を持ってればフレンド登録した相手とだけメールのやり取りが出来るが、この世界に携帯なんぞ持ってる相手は多分いないだろうしメールは必要ないかな?

ちなみに、今はこちらからメールは出来ないが八雲紫をフレンド登録してあるらしい……忌々しい。



その2、スペックを見れるらしい。

自分自身のだったり仲間の物だったり敵だったりモンスターだったりと色々だ。

見れる条件としては相手と面識を持ち、仲間か敵かの認識がはっきりした場合らしい。

この機能に関しては複雑なせいか、説明文付きだった。確かにややこしい条件だ。

仲間か敵かの認識がはっきりした場合って…少し曖昧じゃないか?

モンスターの場合は襲ってくるから普通に敵と認識出来る。だが人は?

少しでも敵意を持ったらそれは敵なのか? 少しでも俺達に優しくしたら味方なのか? どこまで敵で、どこまでが味方かの基準がはっきりしてない。

沢山買い物して感謝されてたら味方とか、相手にとって気に入らない発言をして不愉快にさせたら敵とか言う細かい基準だったらスペックデータの量が凄いことになりそうだ。

とりあえずレミリアとなのはさんのスペックは見れるが、それについては後の機会に紹介するとしよう。



その3、俺の知識がまとめられた物を見れる。

つまり様々なアニメや小説、教材やテレビなど俺が知りうる知識が辞書のように詰め込まれてるのを見たり出来る。

それだけだな。今の所、多分これからも必要となる機能ではないわな。

暇つぶしには出来るだろうけど。



さて、とりあえず分かったこととはこれくらい。

我が携帯ながら変わった機能を持った機械へと変わっちまったんだよな。こっちの世界でも役立つようにしてるんだろうけどさ。

元の世界に戻っても元通りの携帯になるよね?

「ふむ」

本を閉じ、欠伸をしながら時計に目をやった。

現時刻は午後の三時か。なのはさん達が外に行ってから一時間ちょっとかな。今思ったら俺って午前中にこの世界に来てたんだなー。

窓が開きっぱなしだったせいか閉めていたカーテンが外側からの風を当てながらゆらりゆらり揺れている。

窓の外から僅かに聞こえるのは人々のざわめき。部屋の中から聞こえるのは時計の針がカチカチカチと動く音。

それがどこか心地よく、どこか眠気を誘われそうな穏やかさを感じる…あ、眠い。

この眠気に逆らう力を、俺は持ってないな。だから遠慮なく睡魔を迎え入れよう、お休みなさい。












あれ?

ここは、どこだ?


ーーー眠っていたと思ったらそこは無数の刀が刺さった世界。丘と言うべきだろうその場所に俺は立っていた。どこか似ていて、見覚えのある世界だったけど…何のアニメだっただろうか?


《僕の夢の中、そしてあなたの夢の中》


ーーー声が聞こえた。だけど姿は見えない、それでもその声の主は女だと言うことだけははっきりと分かった。


なに、夢? なるほど、夢か…なんとなく分かるぞ、お前のことが

《僕のことが?》


ーーーほぼ直感からだけど、それでも何となく分かる。この違和感が同じ物なのだから


ああ、お前……村正なのだろう?

《正解だよ、加賀美、祥様》


ーーーそれと同時に、俺の後ろに人の気配を感じた。俺が振り返ってみるとそこには


《やっぱり…分かっちゃう?》


ーーー微笑みながら俺を見ている、一人の黒一色の着物を着た少女がいた。


なるほど、村正とは女だったのか


ーーーポニーテールにしたその長い髪は漆黒がとても綺麗で、その大きな目もまた、漆黒の瞳が奥深く、底が知れず、見つめられた人を魅入らせるらせるような魔性の色を感じさせた。


《意外? 喋り方とか大和撫子にはふさわしくないって言われるよ》

刀のお前が誰に言われるんだ?


ーーーその俺の一言で彼女の笑みにどこか曇りが見えた。物悲しそうな何を思わせる曇りを


《ーーー言い間違えたかな…言われ"て”たって言うのが正解かな》

あ……すまん、変なことを言ったな。軽率だった。

《いいよ別に。村正自身の記憶って訳でもないしね》

?……どう言う意味だ?

《そのまんまの意味…だって僕、妖刀ですから》

…ふぅん、そうだったな。


ーーー妖刀、つまり今まで多くの人に手に渡っていったのだろう。その力はかなりの物だろうから


すると、その姿も持ち主だった人の?

《うん、僕が一番好きだった、優しい優しい主様》

…嬉しそうだな、村正。

《うん、大好きだったから…一番…死んじゃってるけどね》


ーーー俺はその場に座り、丘から辺りを見渡しながら話を聞いていた。村正もまた俺の隣に座り、同じように丘を見渡していた。

ーーーそして、持ち主だった人の話をしていた村正の横顔は、とても悲しそうな笑顔だった。


………そうか。

《…この丘に刺さった刀はね、今まで僕の持ち主だった主様達の数だけ存在してるんだ》

…こんなにいたのか。

《うん、だからいろんな記憶も一杯ある。僕はね、たまにこうやって誰かが主様だった時の刀の中に入って主様達の記憶を見てるんだ》

だから姿が変わるのか。

《うん、入った刀によって姿は変わる。言葉遣いは変わらないけどね》

はは、僕っ子だな。

《ん、何それ?》

いいや気にするな。

《?》


ーーー俺は笑った、村正もつられて笑ってた。

ーーーやっぱり、いい笑顔だった。悲しみとかでその笑顔を曇らせるのは、もったいない。

ーーー……俺がいて、この笑顔が消えないのなら…


なぁ村正。

《なぁに?》

1人は、寂しいか?

《…うん、寂しいね、やっぱり》

…今は、どうだ?

《…寂しくない。祥様って、まだ僕の主様でもないのにとても優しくしてくれる……なって、くれるの…?》

……こんな俺で、良いのなら。

《あ……祥、様ぁ……》


ーーー押し倒されてた。

ーーー彼女の重みに、匂いに、やわらかさに、俺は興奮していた。

ーーー頬が紅潮し、吐息も荒くなっていく村正の顔が、唇が、俺にゆっくりと近づいていく。

ーーー着物の所々もはだけ、彼女の白い肌が垣間見える。

ーーー俺は体が、村正と1つになってしまうような錯覚を覚え、力が抜けていくのも感じた…だが、それもいいかもしれない。

ーーー……村正。

ーーー俺は……お前の………



「なーに現を抜かされている、人間」



……え?


ーーーレミリアの声。そして何かの強い衝撃。

ーーー顔に掛かる大量の赤い液体。一瞬にして広がる吐き気を促す臭い。

ーーーそしてボタボタと何かが俺の周りに落ちるような重たい音が聞こえ






ーーーその瞬間、目の前の村正は肉塊と化していた。





[21986] 第三話・シリアスだ。 真面目なシリアスだ。
Name: カオス◆961185b4 E-MAIL ID:d79e5ecd
Date: 2010/09/25 14:44
目の前、村正、だった物。

俺が瞬きしてた一瞬の間で、人だったのかも分からなくなったそれは、黒い着物の切れ端がくっ付いていた。

血が染み込み、ドス黒くなったとは言え……そんな…そんなことが…ッ!!


「あ……あぁぁああああぁぁぁああああああああああああああああああ!!!!」

む、村正ぁ……どうなってんだよ、これはぁ…

手に持ってる、この赤い塊が、村正だって……?

死んだ、のか?  こ、れは……



「目は覚めたか? 人間」

蝙蝠の翼を羽ばたかせ、静かに丘に降りたった少女。

薄いピンクの、気品や上品さを備えたドレスのような姿。

紅い瞳に、青い髪。

レミリア…スカーレット。

「何で村正を、殺した…」

彼女の突然の凶行、何で村正は彼女にやられなければならなかったのか。

「何でこんなことをしたんだ! レミリア!!」

今の俺の顔は、恐らく酷く醜い顔になってるだろう。

それだけの怒りがこみ上がる自分に気づき、その怒りをレミリアに向けてしまってるのだから

それに対し、レミリアは平然とした態度で腕を組みながらこちらの顔を見上げていた。

「あれの持つ負の感情が凄まじかった。まさか内側と外側からではここまで力の感じ方が違うとは思わなかったからな、それを直に感じて、危険だと思った」

「負、て…それは、悲しみとか寂しさからのものなんだろう!? ならそれから救えば良かったんだ! それなのに何で、殺さなきゃならない!」

寂しかったから、悲しかったから…

だから村正は、俺が主となることを望んだ! それで彼女の悲しみや寂しさが少しでも無くなればいいと、俺自身も望んだんだ! なのに、なのにぃ…

村正が死ぬ必要なかったんだ、俺が主となって、彼女を支えて、それだけで良かったんだ。

だがレミリアは、ただ危険と言うだけで、殺してしまった、彼女を

彼女の気持ちも知らないで

彼女のことを何も理解しないで



…許さない。



レミリア、その行動は、俺を守ろうとしたからだろうけど

それでも、許せない。

俺の考えがどんなに理不尽で、キチガイだろうと何だろうと

それ以上に、許せない。

殺す、村正の分まで、償わせる為に

何としても、どうなっても、殺す。

俺の側に、一本の刀が地面に刺さっていた。

刺さってた場所は、村正だったものが、転がっていた場所。

そうか、これで、斬れってことなんだな、村正…任せろ。

これを手に取れば、これを振るえば、これを突けば、幾ら吸血鬼だろうと、殺せる、殺せんるんだ。






「甘い考えで自惚れるなよ、人間風情が」






レミリアの瞳が赤く光っているような錯覚を覚えた。

そしてその表情が、歪んでいたようにーーーいや、歪んでいた。

体勢は変わらず、腕を組み、俺を見据えている。だが明らかにさっきまでのレミリアじゃない。



怖い。



手に取った筈の刀。

殺せる自信のあったその刀がとても、頼りなく見えた。

手が振るえ、力も抜けていく。



怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。



頭の中で溢れそうになった感情。

これが人間としての本能から来る恐怖だと言うことを理解することに時間は掛からなかった。

それほどまでに目の前の少女はーーー吸血鬼は強大で、絶対な存在に見えた。

「体も、心も、全てが弱過ぎる存在が、たかが百年も生きれぬ劣等種が、この私を前にして! 何を考える! 何をしようとする!」

次の瞬間、俺の喉元には紅い刃が突きつけられていた。

ドッ、と同時にかなりの量の冷や汗が、体中の毛穴と言う毛穴から発汗していく。

俺は、喉元の刃に目を向け、そして視線をそのままレミリアに移した。


レミリアの、彼女の手に持ったそれは槍。

赤く輝き、赤い光を纏った彼女の背丈に不相応なほどの長い槍。

片手でそれを持ち、俺の喉元に突きつけたままでレミリアは言葉を続けた。

俺は、最早何も見えなかった。


その瞳が放つ光が決して錯覚ではなく

その歪んだ表情が、全て呆れから来る物だったと言うことだけを確認して


それ意外は、意識を保つことだけに集中し、見えることなどなかった。


「わたしは貴様を助けた。このわたしが、たった1人の人間を助ける為にここまで来た。それが結果であり最善の答えだ。人間が妖怪のことなんぞ思うな、妖怪は、どんな姿をしても、どんな接し方をしてこようと、人間のことなど餌としか見ないーーーだから、貴様は術中にハマろうとしているのだ………今この瞬間もな」

術中……?

何を、言って……え?


俺が気づく頃には、手に持った刀の刀身が、レミリアが横薙ぎに振るった槍によって叩き折られてた。


何だ……刀が、折れた刀身が、砂になって…

「っ!?……は、これは…」

「だから言っただろう? 術中にハマりかけたとな…妖刀村正」

いつの間にか喉元に向けられてた槍も下ろされ、レミリアは辺りを見渡しながらもう一方の手に赤い球体を形成する。

「ただの妖刀かと思ったらそうでも……なかったようだな!」

勢い良く、赤い球体をレミリアは空に向け放つ。

そして


空にぶつかり、爆発を起こした。

空に当たって爆発? どう言うことだ?

「これは…」

「無限の地獄…剣山と言ったところか」

「!?」

世界の風景が、変わった。

青空だったのに、黒い雲と黒い空に全てが覆われた。

緑が生い茂っていた丘は、ただの岩の山となった。

見渡し、緑が一面に広がる風景が、地平線の向こうまで何もないただの更地となっていた。

だが変わらない部分と言うと、大量に刺されていた剣。

だがそんな剣にしても変化があったと言ったらーーー


ーーー全て人間の亡骸を貫いて、地面に突き刺さっていた。

「うっ……これは、これは…?」

「どうやら正気に戻ったか。存外、脆くなくて良かったぞ」

「正気? おい、それってどう言う」

「無自覚の内に精神に影響を与えてられてたようだな」

「ちょ、え、いつから!?」

「さぁ? 眠気に誘われてからと言うのが妥当ではないか?」

「つまり最初からかよ…」

「夢に入ればそれは既に相手の狩り場…そしてこの亡骸と刀の数だけ、犠牲となって死ぬまで酷使された人間がいたのだよ」

「………………………」


しゃ、洒落にならねぇ………すると、あの村正の話も、思いも…全て紛い物だったって言うのか…

じゃあ、それを信じた、俺は……いや、俺が見たあの表情は…何だってんだ…

「レミリア、俺は…」

「この状況で気落ちするな、来るぞ」



ドンッ!!と空に衝撃が走った、その余波が目に見える形で現れている。

雲が、散り散りになって…おいおい、あれが本体、なのか?



黒い鉄の体、女性を模したような線の細い姿。

そして女性の顔を象った白い仮面のような頭部に


両手には、黒い刀。



《目標 確認  異物 確認  過程 目標 精神破壊  補足 異物破壊 》



女性か男か分からない機械的な合成音声。

単語を淡々と呟く村正本体。

そして


村正本体の背中から展開された黒い翼。



明らかに、機械チックな妖刀だな。

「あの黒い翼…光…負の概念の固まりか? あれに数万人分の怨念が詰まってる訳だ…面白い!」

ニヤ、と猟奇的な笑みを浮かべたレミリアが大きく横に槍をーーースピア・ザ・グングニルを降りながら両足に力を込め、上空の敵を睨んだ。

グングニルを振った際の衝撃が俺に来たんですけど…痛かったなーおい

だがまぁそれはおいといて、始まる。

妖刀対吸血鬼が、すぐに始まろうとしている。

だが俺には何もできない、武器もなければ、自身が強力な身体能力を持ってる訳でもない。

それに…





 
《うん、僕が一番好きだった、優しい優しい主様》



《うん、大好きだったから…一番…死んじゃってるけどね》



《…寂しくない。祥様って、まだ僕の主様でもないのにとても優しくしてくれる……なって、くれるの…?》






紛い物だったとしても、あの言葉が、あの笑顔が、いつまでも忘れられない俺では、戦えても役には立てない。



そしてまだ、切り捨てきれてない自分もいる。






なぁ、村正。



あの言葉、あの笑顔、あの思い



本当に、本当に…



…紛い物だったり、するのかな?











~~~~~~~データ解禁【レミリア・スカーレット、村正(本体)のデータが閲覧可能になりました】~~~~~~~~~



   【レミリア・スカーレット】

吸血鬼。五百年の歳月を生きる少女。

永遠に紅い幼き月の二つ名を持つ。他にも二つ名は存在するが、主に彼女を指す言葉としてこれが良く使われる。

幻想郷から何らかの事件でこの世界に放り込まれたのだが、その原因について何故か話たがらず、無理に問いつめると逆上しグングニルを所構わず振り回してくる。

好きな飲み物は紅茶。自身の従者であるメイド長の淹れた物を恋しく思い、どこかその雰囲気はホームシックになった子供を思わせるが、祥が淹れる紅茶が気に入ったらしく最近はシンミリとすること余りない。

この世界でも吸血鬼が強大な力を持ってることに変わりないようであり、その驚異的な身体能力と妖力は、他を圧倒する。


~スペックデータ~


【攻撃力】450+100(グングニル装備時)

【防御力】390

 【妖力】 520

【精神力】339

【素早さ】673

【器用さ】371


~能力~

自己再生(多少のダメージならすぐに体を元通りに出来る)

  覚醒  (紅い月が出てる時に限り、身体能力が1.5倍になる)






  【村正(本体)】

何処から来たかも定かではない剣。

この世界では存在しない作りをしており、これの名を「刀」と呼ぶが、同時に「妖刀」とも呼ばれている。

妖刀の名の通り、人に取り付き、精神を蝕み、そこから人の意志を消し去ることで自身の仮初めの体と化す。

食べ物も食べず、休みも取らず、眠りもせず

人として活動せず、その体が使用限界を迎えるまで人を斬るだけの為に行動し、使用限界を達したら、また再び新しい体を取り込まんとする。

一時的に退魔の術が凄まじいとある老人の手に渡った為封印を余儀なくされたが、そこから逃れたため再び活動を開始した模様。

そして、不確定要素が1つ。

この妖刀には未だ何か秘密があるらしいが、それを知るのはとある1人の老人か、遙か昔に村正を作り出した女の刀鍛冶だけである。



~スペックデータ~


【攻撃力】360

【防御力】317

 【妖力】 418+∞(固有結界(夢)内に存在する時) 

【精神力】280

【素早さ】673

【器用さ】427


~能力~

固有結界(人間の精神体を、夢として誘う場所。様々な虚像を見せて人間を陥れると同時に、村正が最も力を発揮出来る場所)



[21986] 第四話・夜の王の力(レミリア・スカーレット命名)
Name: カオス◆961185b4 E-MAIL ID:d79e5ecd
Date: 2010/09/25 23:08
「ーーーはっ!」

《破壊 破壊 破壊 破壊…》

ガキィィィィィィン!!!と甲高い音が響きわたった。

レミリアが動いたと思ったら、すぐに彼女の体は遥か上空の村正の下まで到達していた。

同時に勢い良く突かれたグングニルだが、村正は両手の刀を交差させ、グングニルを挟み込むようにして受け止めている。


速い…速すぎるだろうこれって


これが吸血鬼の速度。まさに目で追えない速さ。

だがそれに反応する村正もまた強大であると言うことは俺にもはっきりと分かる。

上空じゃレミリアと村正が飛び回り、接近する度に力をぶつけ合ってる。

最初の一撃以外、速すぎてその動きさえ見えない。

だがこれだけは分かる。

レミリアが、村正を押している。

俺の目から見たら、レミリアと村正は光の線を描いてるみたいにしか見えない。

だがそれぞれの光がぶつかり合うと同時に音が響き、光が爆発している。

つまりあれ…アニメとかで良くある高速戦闘の描写。

飛び回るキャラ達が飛行機雲みたいに光の線を作りながら飛び回るあれだ。

まぁ話を戻すが、レミリアと思われる紅い光と村正と思われる黒い光で、紅い光とぶつかり合う際、黒い光の方が弾かれてるような感じに見えるのだ。

俺の予想では単純な力負け。レミリアとのパワー勝負では勝ててないと言うことになる。

戦況はレミリアが有利、だが……



《主、様……》



「ッ!?……声…」

頭の中に響いてきた声。

それはあの時、女性の姿をしたあの時の村正の声。

俺は上空で戦っている村正を見た、だけど


明らかにあれからの声じゃない。


だが一体どこから、この声は一体どこからの物なんだ!?

周りは……変わらず死体を貫いて地面に突き刺さる刀が無数……無数なんだが…あれ?

一本違うのを見つけた。それは目の前。更地しか広がってなかった筈なのにこちらとは別世界と言わんばかりの、緑が生い茂る丘。

草も何も生えてない更地と綺麗に区切られたように丘だけは緑がみっしりとある。

さっきまではあんな丘なかった筈だ、それに…


あの光は、遠目からは丘から輝いているあの光は……



《主、様…》



「ッ!!」

俺は考えるより先に、目の前の丘に向けて走り出していた。






【レミリアside】


目の前の敵、妖刀。

どうやらこの妖刀も別の世界から来たようだが私やしょ…じゃなく人間その1やなのはとはまた違う形で来てしまったようだ。

ここまで怨念や憎悪を垂れ流しては幾ら鈍くても分かってしまうわ、ほんと…

あくまで予想だけど、妖刀は元々邪悪な物ではなかったと思う。

作り手の掛けた技術と思いを一新に受けて作られて、最初の頃はどこにでもある一本の名刀だったのでしょうね。

だけど、その刀の持ち主が余りにも悪すぎた、もちろん村正を手に取る経緯と言う物も。

略奪、陵辱、殺害。

これだけの単語、だけどこれだけでもどう言う状況だったか分かる。

つまり刀鍛冶は、女だったのだろう。そしてそこから奪ったのは多分山賊か何かだと思うわ。

名刀であるそれを奪わない訳がない、女が目の前にいるのに手をつけない訳がない、劣等種の中でも特に最低な人種なのだから

そして、このまま生かしておく訳にも行かない、だから口封じの為に殺された。

その後は使われたのでしょうね、不本意ながらも自身の作り手を殺した俗物の手によって

傲慢な、私利私欲の為の人殺し。

そしてそれらの出来事から負の感情を蓄積していって、妖刀となりうる刀と化してしまった。

人間その1が言う"徳川家に仇なす物”とは、また違う訳だ。

まぁ別にどうでもいいことだけどね。

そう、今は



目の前に敵として存在している、ただそれだけが事実なのだから。



「この程度か、妖刀」

グングニルで薙払い、一文字に斬りつけ、殺意を込めて……突き出す!!

妖刀はこちらの攻撃を切り払っているが、それでも力はこちらが上。

一撃一撃が、相手の体勢を崩し掛けているのは確か。

だが大きな一撃を繰り出そうとする前に、妖刀は距離を取ってしまい体勢を整えてしまう。

力はこちらが上だが、速さは相手もこちらと同等くらいかしらね。

けど、それだけでは足りないわ。

言わば速さ以外は私より格下。それでは逃げようとも決定打を与えることは不可能。

妖力も中々の物だけど所詮私には及ばない。

だから

「早々に、終わらせてくれる!!」

グングニルに力を込めた、妖力と言う名の力を、これでもかと膨大に

段幕ごっこでは過度な力の使用は御法度だし、久々に遠慮しないのもこの世界のお陰ね。


だってここにはルールなんかない。

あるのは殺すか、殺されるかの、自然の摂理のみ

久々に"殺す”為の一撃……この妖力の流れ、力が私の中で膨張していく感覚、何より我が槍が力を得ていきより協力となって行くまでの過程に対する高揚感…

ふふふ、やはり私も血は争えないわね…敵を完全に殺す為の下準備に…下品だけど、殺すと言う行動自体に私は舞い上がってる。

今の私を見て、咲夜なら畏れ敬ってしまうかしら? 美鈴ならまた怖がってしまうのかしら? パチェが見たら久々に見たと呆れてしまうのかしら?


何にしても、今の私は多分幻想郷では滅多に見れないでしょうね。

ただただ殺す為だけにバカみたいに笑みを浮かべてる私なんて、早々出すもんじゃないもの。 


「これだけの一撃を…妖刀如きが耐えれるかな?」

私は妖刀より更に上空へと移動し、相手を見下ろした。

手に持っている得物には既に変化がある、つまり



グングニルは更に長くなった、だが刃は、更に巨大な刃へと化している。

例えるなら、それは鎌。死神の持っているような、大鎌。

最早形状は槍ではない、グングニルと言う名の槍ではないだろうけど…それでもこれはグングニル。

グングニルと言う名の大鎌。

元より私の妖力で形作り、形を槍とし、名をグングニルとしただけ。

北欧神話でのオーディンが持つそれとは何の縁もないのよ。

だから形状には何の意味もない。

今重要視されるのは



相手をどれだけ確実に殺せるか、殺せないか。



「さて……元鉱物の貴様に言う言葉としては合わないのだが…死になさい?」


速度に限界突破を与えて、相手が動くより先に接近した。

接近したにも関わらず、妖刀は未だ防御、回避のどちらかの行動にも移れてない。

だから行動に移そうとするより更に速く、私は大きくグングニルを振り上げーーー



ーーー自身の妖力を爆発させ、更に加速力を付けて振り下ろした。


ザシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!!



金属を斬り裂く音を立てながら、妖刀の体は縦に真っ二つとなる、そして

《くさgづyqぎうwfうひうあしでゃいふぁhふぁういhふいhdさひだはいhだ!!!!!!!!》

顔半分となった左右の仮面の目がクワッ!と開き、言葉にならない叫びを、絶叫を上げた。

開かれた目、瞳の色は赤。

そしてその目から流れるのは、赤い涙、真っ赤な血。

絶叫。

血の涙。

その絶叫は、今までの人間達の負の感情が爆発した物なのだろう。

その血の涙は、斬ってきた人間や、取り込んできた人間の流した血なのだろう。

真っ二つになりながらも、頭を押さえ、絶叫を上げ続けるその姿は余りにも哀れで、救わねばならない存在なのだろう。



…だが



妖刀の背中の翼が更にただの黒から、ドス黒い物へと変色した。

同時に、更に巨大で、強大になっていく翼。

真っ二つにした筈の妖刀の体も徐々に近づき、再び結合しようとしている。

妖力の暴走。

戦いの中で、妖力の減少からくる動きの劣化も見られなかったのは多分この空間にいるからなのでしょうね。

自分自身で作り出した空間なのだから妖力が無尽蔵なのは当たり前、こちらがジリ貧となってもおかしくない状況だったわ。

だけどね、同時に大きすぎたのよ。妖刀、あなたの妖力は

現実に具現化しないのはそのせい。具現化しても、全ての妖力を中に留められる器になりえないから。

それでも無茶をすれば体が崩壊を起こして、自滅しかねないもの。

だから、人間の夢の中と言う舞台を利用した。

夢の中ほど隔絶された空間もない、人間の中の世界は、実際の世界と比べたらチンケな物だものね。

人間の中の世界…夢を妖力で塗り変えて、夢自体を自身への補給装置とすれば、自分は一定の妖力を保てばいいだけ、少しでも減ればすぐ夢から補給される。

そして放出された妖力も、夢の世界の中で再び妖力として留まる。

つまり結果的に減ることはない。

もう少し上手く戦えれば、私も危なかったでしょうね…



まぁ、それでも



「結果は…変わらんがな」



ザシュッ

再び結合したと同時に弱点を潰した。



それの完全消滅することで成る、弱点を


絶叫も上げることも出来ない、血の涙も流すことは出来ない。

吐き出したい物をため込ませたまま、頭を潰された村正の体は砂と化して、消滅した。

残されたのは、私と、忘れていたが下には人間その1もいる。

この世界自体崩壊しないのはまだ妖力が残ってるから、まぁ妖刀自体は消滅したからすぐに壊れるでしょうね…


改めて、私は大地を見下ろした。

そこには人間の亡骸と地面に刺さった刀が無数に広がっている。

亡骸となっている人間の表情はどれも絶望の色に染められて醜く歪んでいる。



「人間の恐怖に歪んだ表情か……嫌いではない、かな…」



そして、押し殺していた筈の私の笑い声が、静かにこの世界に響き渡っていくのをおのずと感じていた。









~~あとがき~~

オリ主の為の、オリジナル武器も後少しで使えますねー

後言っておきますが、設定からでも分かるように村正って名前でも決してクロスした武器ではないのです。

まぁよく使われる名前ですけどねー村正って…閑話休題

そんなことより、もちろんなのですがクロスするのはリリカルなのはや東方だけではないです。

ゲームとかからのクロスもありますので、あしからず



ブレイブルーや白騎士物語って知ってますかな?


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