【社会】漁船衝突事件なぜこじれる 中部の関係者ら指摘2010年9月25日 夕刊
沖縄県・尖閣諸島沖で海上保安庁に逮捕された中国漁船の船長の扱いをめぐり、揺れに揺れる日中関係。何でこんなことになったのか。日中間でビジネスを展開する人たちは中国が強硬姿勢を貫く背景として、経済発展に伴う「自信」を指摘する。一方、日本政府の対応には専門家らから「外交に疎い」「悪い前例をつくった」と、批判の声が続出した。 ■強気事件には、中国が主張する領土問題が大きくからむ。メーカーの技術などを仲介する三重県桑名市のビジネスコンサルタント高橋義弘さん(59)は「ここ1、2年、中国人からは『自分たちもここまで来た』という経済発展による自信を感じる。領土の主張は自負心の表れ」と分析する。 中国・深●のコンサルティング会社が開設した日本法人「日本際通コンサルティング」(名古屋市中区)の東畑宏社長(52)は「領土問題は互いに譲れないだけに、なかなか解決しないだろう。あいまいなままが落ち着きどころ」と述べた。 「今回のことが中国人との間で話題に上ることはない。共産党政権が主張しているだけでは」とみるのは中国人研修生を受け入れる三重県の男性(49)。「ただ中国の人はプライドが高く、日本より下に見られることを嫌う。間違っていても謝らないし自己主張も強い。こうした国民性も問題のこじれに影響した」と指摘する。 三重華僑華人総会会長の蔡義雄さん(72)は「前原誠司外相ら政府首脳の言った『粛々とやる』という言葉は相手がどうなってもいい、一切妥協しない、と冷たく聞こえる。言葉を選ぶべきだった」と説明。「中国の指導者が弱腰を見せれば、対日強硬論を唱える人たちを抑えられなくなる。このままではどんどん強硬になる」と先行きを懸念する。 ■嘆き外交評論家で元駐レバノン大使の天木直人氏は「領土問題で、こじれるのは分かりきっていた。中国が国益に沿って対応するのは当然。日本の外交能力の問題だ」と述べる。「まず中国に抗議した上で早急に両国の高いレベルで協議し、収拾を図るべきだった」と、後手に回った日本政府の対応を批判。「菅政権は外交に疎い人ばかり」と弱点を指摘し、「中国は菅政権を評価していないという強いメッセージを発した」。 中国と30年来の経済交流がある昭和コンクリート工業(岐阜市)の村瀬恒治社長は「日本は首相を含め誰も指導力を発揮しなかったことで甘く見られる。強く出れば頭を下げるという悪い前例をつくった」と話す。 20年前に中国から来日した名古屋市の女性経営者は「日本が領有権問題のある場所で船長を逮捕したのは予想外だったが、最後に弱腰になるのは分かりきっていた。中途半端な解決をし、ビジネスに損害を与えただけ」とやはり日本政府の外交下手を嘆いている。 (注)●は土ヘンに川 PR情報
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