USBケーブルに高音質仕様の製品が相次いで登場しているが、ついにネットワークオーディオ用のLANケーブルにもその動きが波及し、エイム電子から注目すべき製品「SHIELDIO」シリーズ(
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リンのDSをメイン音源に使っている私にとって、このケーブルは待望の製品だ。そこで先週、発売直前のケーブルを拝借して早速試してみた結果、期待以上の音質改善効果を確認することができた。2系統のDSに使用中のLANケーブル計4本を、近日中にすべてこの新製品に交換しようと考えている。
NAS - ルーター間とルーター - DS間のLANケーブルを交換すると音が変わることは、これまでも確認済みだった。
だが、音が変わる原因がよくわからなかったことと、性能と価格のバランスがとれた相応の長さのケーブルが見当たらないので、特定の製品で揃えることはせず、PCショップで入手できる数種類の汎用ケーブルを使ってきた。いずれ信頼できるメーカーから音質を吟味した製品が登場したときに、あらためてLANケーブルの音質を吟味してみようと考えていたのだ。
何種類かのLANケーブルを実験的に使ってみて気付いたことは、ケーブルのノイズ対策と音質になんらかの相関があるという事実だ。パソコン用としてはデータの伝送速度が問われることが多く、カテゴリー5よりはカテゴリー6が上という具合に、速度によってランク付けが行われている。しかし、実際にNASにつないで音を聴いてみると、速度よりもシールドなどノイズ対策の違いの方が音に与える影響が大きいことに気付くのだ。
ノイズ源はいろいろ考えられるが、他のオーディオ機器やAV機器のほか、電源ラインや映像/デジタル系のケーブルもノイズを輻射する場合があり、特にデジタル機器の数が多いリスニングルームでは様々なノイズが飛び交っている可能性がある。さらにルーターやWi-Fiのアクセスポイントなど、ネットワーク機器自体もノイズ発生源になるとみなすべきだろう。
エイム電子から登場したNA1-Sシリーズは、そうした多様なノイズを遮断することに重点を置いて設計されたオーディオ用LANケーブルで、シールド材にNoiseBEATと呼ばれる特殊素材を使用している点に特徴がある。
NoiseBEATはNTTアドバンストテクノロジ社が開発した高周波ノイズ吸収材で、病院や空港施設など、特に誤動作が許されない環境のネットワークケーブルに数年前から使われ始めたという。
実際にはケーブルの外周にテープ状のNoiseBEATを巻き付けるのだが、単純に巻き付けるのではなく、二重螺旋構造を採用することによって、さらにノイズ遮断効果を高めているという。
そのため、このLANケーブルは通常のケーブルに比べるとかなり硬く、鋭角で曲げないようにするなど、取り扱い上の注意が必要だ。室内で目立ちにくい、細くしなやかなLANケーブルが人気を呼んでいるが、ノイズ対策の面から見ると、それらの利便性の高いケーブルには課題があるということだろう。
コネクターモジュールとその結線にも通常のLANケーブルとは異なるこだわりがある。シールドを施した米Panduit社の高品質コネクターを用いることで、ノイズ対策を徹底するとともにデータ損失を抑え、品質を維持するために結線は手作業で行われるという。
肉眼ではわからないが、このコネクターはメッキ層が厚く、ラッチの強度も高く仕上げられている。そのため、接点同士を押し付ける圧着力が高く、耐久性が高いというメリットがあるとされ、実際に接続したとき、他のLANケーブルに比べてしっかり固定される感覚が指先に伝わってくる。
長さのバリエーションは豊富だが、それ以外にも1cm単位で特注に応じるということなので、配線をできるだけ短くしたい場合など、相談してみるといい。
エイム電子は高速ネットワーク用データ通信ケーブルの専門メーカーだが、本製品の開発に向けてリンのDSを用意し、社内で試聴を繰り返したという。信頼性が最優先されるネットワークの基幹中枢の技術が、オーディオ用LANケーブルに生きてくるというのはとても興味深い事実だ。
市販のカテゴリー6eのLANケーブルからNA1-Sシリーズに交換すると、声や弦楽器の音色が透明感を増し、しなやかでなめらかな方向に向かう。それとともに音場の見通しがいっそうクリアになり、特にスピーカー後方のステージの奥行きや、余韻が広がる音場空間のサイズがひとまわり大きく感じられた。
そうした変化は、CDからディスクレス再生に切り替えた瞬間に聴き取れる変化とよく似ている。LANケーブルのノイズ対策を吟味すると、ディスクレス再生のメリットがいっそう明瞭に浮かび上がってくるのである。