ニューヨークで行われた菅直人首相とオバマ米大統領の会談は、対中関係が主要議題の一つとなり、日米両国が中国の動向を注視し、緊密に連携していくことで一致した。
会談は、沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件とその余波が、日中両国の緊張を高めた時期と重なった。そうした状況下で両首脳が日米同盟の重要性を確認したことは、日米両国の強いきずなをアピールし、中国をけん制するものとなった。一方で日本は、日米同盟の深化に向け、足元に横たわる米軍普天間飛行場の移設問題に、より真剣に取り組むことを求められることになった。
首脳会談に先立つ外相会談で、クリントン米国務長官は前原誠司外相に尖閣諸島が日米安保条約の適用対象になると表明した。首脳会談に同席した福山哲郎官房副長官によると尖閣諸島沖事件について両首脳は「一定の意見交換をし」、日米安保が適用されるとの米側の認識は「所与のもの」だったという。さらにゲーツ国防長官は記者会見で「我々は同盟国の責任を果たす」と述べた。
日本政府も尖閣諸島への安保適用は「当然の前提」(仙谷由人官房長官)との立場である。米側の一連の原則的な対応を歓迎したい。
中国は近年、軍事力、特に海軍力の増強に力を入れている。今年4月の海軍艦艇の沖ノ鳥島海域への進出をはじめとする日本近海での活動や、南シナ海での行動を活発化させている。空母保有の動きもある。政府は、今年の防衛白書で中国の軍拡を主要テーマに取り上げ、中国に対する「懸念事項」として、これまでの「国防政策の不透明性」と並んで「軍事力の動向」を新たに加えた。
首脳会談では、「西太平洋の海洋問題が話し合われ」(米ホワイトハウス)たほか、オバマ大統領はアジア太平洋地域、世界の平和と安定のために日米関係を強化していく考えを表明し、菅首相は「安保、経済、文化・人材の交流強化」を強調した。こうした重層的な同盟深化は、軍の行動を含めた中国の一連の姿勢に対するけん制となるのは間違いない。
一方、会談では普天間問題について、菅首相が5月末の日米合意の履行と沖縄の負担軽減への努力を表明したのに対し、オバマ大統領は深い言及を避けた。突っ込んだ議論にならなかったのは、11月末の沖縄知事選を見据えての配慮なのだろう。
しかし、知事選結果がどうであろうと、普天間問題の解決が容易でないのは明らかだ。日米両政府には、普天間問題に正面から取り組むと同時に、この課題が日米同盟全体を揺るがすような事態にしないための思慮深い対応を求める。
毎日新聞 2010年9月25日 2時30分