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【敗北 尖閣事件】(上) 歪んだ「政治主導」 仙谷氏前面に (2/4ページ)
■「米の要請」口実に
政府筋は29日の勾(こう)留(りゅう)期限を待たず24日に処分保留の決定が下った背景として、23日午前(日本時間同日夜)ニューヨークで行われた日米外相会談を挙げる。
同筋によると、クリントン国務長官は尖閣諸島について「日米安保条約が明らかに適用される」と述べる一方で、尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件の早期解決を望む意向を伝えた。
中国側とのハイレベル協議を模索するなど事態打開を探っていた仙谷氏は、前原氏から連絡を受けた「米側の要請」(政府筋)をもっけの幸いとばかりに利用し、船長釈放の口実にした可能性があるというのだ。外務省幹部は「官邸の判断だろう。こういうことは政治判断だ」と吐き捨てた。
「首相と外相を批判の矢面に立たせないために、2人の不在時に仙谷さんが泥をかぶったのだろう」
民主党関係者はこう観測を述べる。だが、ことは泥をかぶるで済む問題ではない。これまで弁護士出身の仙谷氏は「司法、捜査と政治との関係について中国に理解を求めたい」と、司法権の独立に言及してきた。首相や外相が不在のなかで進んだ「仙谷氏主導」(政府筋)の釈放劇は、歪(ゆが)んだ政治主導といってもいい。
■中国が掘削の可能性
「日本は法治国家だ。そのことを簡単にゆるがせにできない。(日本が)超法規的措置をとれるのではないか、ということが前提にあるから(中国側は)よりエスカレートしていく」
玄葉光一郎国家戦略担当相も24日午前の記者会見で胸を張った。だが、那覇地検の釈放方針発表後に官邸を出る際、玄葉氏は記者団に無言を通した。
閣僚経験者は「地検が日中関係にわざわざ言及したのは、精いっぱいの抵抗ではないか」と解説してみせたが、中国が強く出るとひざを屈する弱い日本というイメージは世界に広まることになる。
仙谷氏らは船長の釈放で事態の沈静化を期待しているのだろうが、資源エネルギー庁幹部は24日の自民党外交部会で、東シナ海の天然ガス田「白樺」(中国名・春暁)で、中国が掘削作業を開始した可能性が高いとの認識を明らかにした。
今回の事件は中国が東シナ海での活動をますます活発化させるきっかけとなったかもしれない。