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きょうの社説 2010年9月25日
◎中国人船長釈放 外交的敗北のあしき前例
中国の圧力に屈した。世界の誰もがそう思うだろう。尖閣諸島沖で、海上保安庁の巡視
船に中国漁船が体当たりをした事件で、那覇地検は中国人船長を処分保留のまま釈放する理由について、「わが国国民への影響や、今後の日中関係を考慮した」と説明し、船長の行為について「とっさにとった行為で、計画性は認められない」と述べた。なぜ那覇地検が外交問題を「配慮」する必要があるのか。日本の領海内で違法操業し、 故意に巡視船に衝突した事実は明白なのに、「計画性がない」ことが釈放の理由になるのか。地検は、法に基づいて厳正に対処した結果、処分保留の結論を出したと胸を張って言えるのか、はなはだ疑問である。 中国に対する菅政権の及び腰が、那覇地検の過剰な配慮につながったとすれば、残念と いうほかない。外交問題で圧力をかけ続ければ日本は譲歩するという、あしき前例をつくった。菅政権の外交的敗北と見なさざるを得ない。 さらに言えば、検察内部は大阪地検特捜部検事の逮捕で大混乱の最中にあった。那覇地 検が上級庁の判断を仰ぎたくとも、腰を据えて協議できない事情が、微妙に影響した可能性も否定できない。 中国政府が日本の法制度を無視し、横車を押し通そうとした理由は、尖閣諸島の領有権 と周辺の海洋権益がかかっているからだ。日本固有の領土である尖閣諸島の領有権を中国は認めていないからこそ、日本の国内法の適用に反発し、船長の拘留を声高に非難してきた。中国にすれば、船長の釈放は外交的勝利であり、領有権の主張を補強する口実を得たと言っていい。 仙谷由人官房長官は会見で、今回の釈放があくまで那覇地検の独自の判断であって、政 府としてはそれを了とするだけだと述べた。三権分立を理由に、これ幸いと、口だししないつもりだったのだろう。だが、中国が露骨に国益を主張する外交をしているのに、政府は「冷静に」と言うだけで、反論らしい反論もせず、打たれっぱなしのままである。軒先に侵入を許せば、次は母屋に土足で踏み込んでくる。そのとき、民主党政権はどう対処するつもりなのだろう。
◎「潜在看護師」調査 職場復帰さらに後押しを
石川県が実施した初の「潜在看護師」実態調査によると、看護師資格がありながら就業
していない回答者の約7割が再就職を希望しており、職場復帰への関心の高さがうかがえた。県はナースバンクへの登録や病院での研修制度などを通して、再就業を後押ししているが、今後の働きかけ次第ではより多くの復帰につながる可能性がある。今回の調査結果を生かして、一層の人材の掘り起こしと再就業支援策を強化してほしい。看護師確保対策には、即戦力となる潜在看護師の活用とともに離職防止が欠かせない。 県のアンケートでは、就業3年未満の看護師の約85%が技術や知識不足を理由に「辞めたいと思ったことがある」と回答しており、結婚や出産、育児で退職するケースも少なくない。 離職率が高まれば看護師不足につながり、せっかく復職しても再び職場を離れるような ことがあれば元も子もない。行政と医療機関は、現役と復帰した看護師がともに働きやすい環境づくりを進めて人材確保につなげてもらいたい。 県の実態調査によると県内の看護師養成施設9カ所の卒業者のうち、「潜在看護師」は 311人いたことが分かり、218人が再就職を希望した。これらの希望者に働きかけて今年1月から8月末までに16人が現場復帰した。全国で約50万人いるとされる潜在看護師については県内の実数が把握されていなかったが、調査を通じて即戦力となり得る人材の掘り起こしにつながった。今回の調査を足掛かりにして、今後も潜在看護師の実態を把握し、職場復帰を促す対策が求められる。 現場での看護師の不足感が広まっている背景に、医療水準の高度化による需要増がある 。職場復帰を目指す潜在看護師にとっては、高度な専門性が要求される医療現場を離れていた不安が再就業への壁になっているという。県では復帰前に医療機関で基礎知識や技術を再確認する研修制度を実施しているが、参加者の声を聞きながら、休職中の不安を解消し、さらに再就業を後押しする研修システムとなるよう工夫を重ねてほしい。
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