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円高誘導、受注締め出し…まだまだある中国の報復カード
沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)沖の中国漁船衝突事件は24日、船長が釈放され、日中の経済関係の悪化も改善に向かう可能性が高い。ただ、今後、「経済圧力」は有効と判断した中国が、ことあるごとに「報復措置」を発動する懸念もある。日本経済の“中国依存度”が高まる中、“ハラスメント”の手段にはいくらでもある。
「中国が円買いを行って円高に誘導することが最も有効な報復措置だ」
衝突事件後、中国社会科学院の馮昭奎研究員はネット上でこう指摘した。実際に中国は今年に入ってから日本国債を買うため、せっせっと円を調達。これが円高の一因になったとされている。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「中国は日本の円高に対する拒否反応の強さを見透かして、為替相場を政治的なカードとして使おうとしている」と分析する。
反日気運の高まりは国内の観光業界にも影を落とす。中国国家観光局は中国の旅行業者に訪日旅行の募集や宣伝の自粛を要請したと報じられており、全日本空輸ではこれまでに2500人分の旅行がキャンセルになった。都内で24日に開幕したアジア最大級の旅行見本市「世界旅行博2010」では、中国国家観光局が直前になって出展を取りやめている。
中国人観光客の1人あたり支出額は「各国からの旅行者のなかでダントツ」(エコノミスト)。日本旅行業協会は「日中の関係悪化がこれ以上長引かないように祈っている」と話す。
中国進出を目指す企業への“嫌がらせ”も懸念される。中国は2001年の世界貿易機関(WTO)加盟以降、市場開放を進めてきたが、事業認可が出るまでに申請から何年もかかったケースもある。
中国国内の拠点開設を進めているメガバンク幹部は「現状では認可の遅れといった影響は出ていない」としながらも、「今後の動向は注視する必要がある」と警戒感を隠さない。
急拡大が続く発電所などのインフラ整備や環境関連の設備投資などの受注でも、日本企業が不利な扱いを受ける恐れもある。
中国人船長は釈放されたが、中国国内の反日感情の行方は予断を許さない。第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「前回中国で反日感情が高まった05年当時は世界的に景気が良かったが、現在は中国が世界経済を引っ張っている状況。こうしたなかで日中関係が悪化すると、日本経済へのダメージは大きくなる」と警告している。