「日本旅行取りやめろ」 尖閣めぐり紛争拡大(下)
中国政府の圧力は、民間交流にも影響を与え始めた。読売新聞によると、山梨県で来月宿泊予定の中国人団体旅行客4800人の予約がキャンセルされたという。
中国企業の宝健日用品有限公司は17日、日本政府に抗議するためとして、社員1万人の日本旅行計画を急きょ中止した。同社の旅行団は、日本政府が前原誠司外相(当時は国土交通相)を立て、ライバル韓国を抑えて獲得した過去最大規模の訪日客受け入れプロジェクトだった。観光地富士山周辺のレジャー施設を抱える山梨県は、主要ホテルの宿泊客の40%以上を中国人観光客に依存している。岡山と上海を結ぶ航空便では、中国人客の予約の大量キャンセルが出た。17日の同便をキャンセルした中国人客は234人に上った。
中国政府の全面的な圧力について、菅直人首相は22日、「この問題は冷静に対応していく。それぞれの立場で、そうした姿勢で対応してほしい」と述べた。しかし、代表的な極右政治家として知られる東京都の石原慎太郎知事は21日、「中国のやっていることは理不尽で、やくざがやっていることと同じ。こんな中国に行くつもりはない」と述べ、来月北京で開かれる都市問題に関する国際フォーラムに出席しない意向を示した。
今回の対立は、中国人船長の拘置期限が切れる今月29日を境に新たな局面に入る見通しだ。日本政府が中国人船長を起訴した場合、日中関係は小泉純一郎元首相の靖国神社参拝で最悪の局面を迎えた2005年の状態に逆戻りするとの懸念も聞かれる。日本政府は04年、尖閣諸島に中国人活動家が上陸した際、外交問題に配慮し、起訴を見送り、強制退去としている。
■尖閣諸島紛争
台湾と先島諸島の間にある面積7キロの無人島をめぐる日中間の紛争。明、清の文献によると、尖閣諸島は中国領だったが、1895年の日清戦争中に日本が占領した。日本が第二次世界大戦で敗れた後、尖閣諸島は沖縄とともに米軍の管理下に置かれたが、1972年に日本に返還され、現在も日本が実効支配している。
東京=鮮于鉦(ソンウ・ジョン)特派員