金言

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金言:「軟土深掘」に惑うな=西川恵

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 テーマは違うが、日本と米国は共に、中国との間で差し迫った懸案を抱えている。日中の間は尖閣諸島沖衝突事件、米中の間は人民元の対ドルレート問題である。

 尖閣諸島沖衝突事件では、中国は強硬姿勢一点張りだ。訪米中の温家宝首相は21日、中国首脳としては初めて事件に言及し、「日本が独断専行するなら新たな行動をとる」と強く警告した。

 一方、人民元に対する対ドルレート問題では、21日の上海外国為替市場で1ドル=6・7元を突破して元が上昇。元を切り上げた05年7月以来の最高値を更新した。米国の元切り上げ要求に応じるように、中国当局は元相場を元高方向に誘導し続けている。

 一方には強く当たり、他方には柔軟に臨む。このような中国の交渉術を台湾では「軟土深掘」と呼ぶのだと、08年7月までの約3年間、交流協会台北事務所代表だった池田維氏の近著「日本・台湾・中国 築けるか新たな構図」(産経新聞出版)で知った。

 相手が軟らかい土の時はどこまでも掘り崩し、土が硬い時は方向転換を図る。「常に中国の巨大な圧力の下で、中国と付き合っていかねばならない台湾の人らしい感想だ」と池田氏は語る。いわゆるダブルスタンダード(二重基準)。池田氏自身、台湾在勤中これを経験した。

 07年12月の天皇誕生日祝賀レセプション。この時、台湾側を代表して初めて外交部長(外相)が出席し、祝辞を述べた。中国は元々、天皇誕生日の催しを行うこと自体に反発していたが、外交部長が出席したことに強い調子で日本政府に抗議した。

 しかし台北で各国代表(台湾の非承認国、承認国問わず)が年1回、自国の祝祭日を祝うレセプションを開くことは慣例になっている。米国のナショナルデーのレセプションには通常、外交部長(場合によっては外交部次長や副首相の行政院副院長)が出席し、祝意を述べている。英、仏、独など主要国も同様だ。「こうした国に中国が抗議したということを聞いたためしがない」と池田氏は言う。

 話を戻すなら、日本に強く当たり、米国には柔軟に対応する中国の外交姿勢は、テーマは別ながら緊密に連動している。日本と米国の2方面で対立を深めることの外交的負担を避け、尖閣諸島問題で日米の連携を防ぐ狙いだ。温首相は22日、米政府による台湾への武器売却決定(今年1月)後、中断していた米中軍事交流の再開を求めたが、これも柔軟対応の一環だろう。

 「軟土深掘」。これに振り回されることなく日米同盟を固めたい。(専門編集委員)

毎日新聞 2010年9月24日 東京朝刊

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