沖縄県・尖閣諸島の領有権を巡って台湾、中国、香港で抗議活動が相次いだ。過去に中国、今は台北の抗議活動の現場で私が取材してきた活動家たちは、親切で礼儀正しい人が多い。
抗議現場の緊張した雰囲気は、日本人にとって危険な状況へと急変する可能性をはらむ。そんな中で私の身の安全を気にかけてくれた北京の活動家もいた。先日、台湾を訪れた香港の活動家も資金難で苦しい事情を吐露するなど普通の会話が成り立った。
逆に怖いと感じるのは、現地メディアだ。6年前、北京の日本大使館前の抗議活動では、中国人カメラマンから「『帝国主義』と名札を付けて来い」と言われた。今回も普段はいたって友好的な台湾人記者たちが扇動的な記事を書いた。日本人記者が外交部の会見で「どなった」「中台は統一してしまえと言った」と事実をねじ曲げたのだ。
記者が世論や雰囲気に流されてしまえば、記事を読んだ読者はさらにその感情を増幅させてしまうだろう。危険なことだ。冷静な報道の重要性を改めて感じている。【大谷麻由美】
毎日新聞 2010年9月22日 12時18分(最終更新 9月22日 12時49分)