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きょうの社説 2010年9月24日
◎北陸の中国人誘客 チャイナリスク常に意識を
尖閣諸島沖での中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件を契機に、中国側が一方的に日
本への団体観光旅行を取りやめたり、石川県が中国内で予定していた文化交流などが中止になる事態が相次いでいる。2005年の反日デモのときのように、日中関係がぎくしゃくすると、必ず繰り返される光景であり、「チャイナリスク」を意識せずに中国と向き合うと痛い目に遭う。中国は日本や西欧諸国のような民主主義国家とは、全く違う共産党一党独裁の国である 。民主党政権の誕生で、日中関係は「蜜月期」を迎えたとの見方もあったが、今回の事件は、そんな甘い幻想を吹き飛ばした。草の根交流であろうと、商取引であろうと中国と接するときは、私たちの常識が通用しない「異形の国」であることを忘れないようにしたい。過剰な期待を持たず、リスク管理をしっかりしておくことも重要である。 日本政府観光局の調査では、中国人旅行者は、米国人の4倍に当たる1人平均11万6 千円の買い物をするという。7月に中国人個人向け観光ビザの発給要件が緩和されたことから北陸の観光地や消費低迷に苦しむ商業施設などでも「中国特需」への期待が高かった。 しかし、衝突事故を理由に、7500人もの従業員を率いて日本への旅行を計画してい た中国メーカーは、来日を取りやめ、予約を受けていたホテルは大きな痛手を受けた。石川県でも10月1日から始まる国慶節に合わせて180人が来日する予定だが、本当に来るのかどうか誰にも分からない。 石川県が参加を予定していた中国・上海で開催予定の「日中文化観光交流ウイーク」は 既に中止が決まり、高岡市が10月下旬に予定している錦州市との友好都市提携25周年を記念した同市訪問団の来日は、先方からの連絡がないため日程が組めない状況という。 いかに地方レベルで交流を積み重ねても、中国政府の思惑で、末端まですべて一夜のう ちにひっくり返るのだから、本気で交流する意味があるのかすら疑わしく思えてくる。中国との付き合いは決して前のめりにならず、適度な間合いを保っていく必要がある。
◎自民党「影の内閣」 デフレ脱却の政策競え
自民党の「影の内閣」が発足し、最大野党として菅内閣と政策で対峙する体制が整った
。本格論戦の舞台となる10月召集の臨時国会では、とりわけ日本経済の宿痾(しゅくあ)ともいえるデフレの克服策を政府・与党と競い、その道筋を示してほしい。自民党の新執行部の発足に当たり気になったのは、消費税率10%引き上げの自民党公 約に菅首相が「抱きついた」ことに関し、石原伸晃幹事長が「日本の財政には漫然と構えている余裕はないという認識があるなら、抱きつかれてもいい」と述べ、消費税増税による財政再建で菅内閣と連携可能な考えを示したことである。 しかし、消費税増税が国民の支持を得られなかったことは、先の参院選結果で明らかで ある。それにもかかわらず、今度は自民党側から菅首相の増税路線にくみするというのは、野党としての存在意義をみずから否定するものともいえ、何のための「影の内閣」かということになろう。 現在の喫緊の課題は急激な円高に歯止めをかけることであるが、円高の一因として、日 本国内の物価下落が続き、米国との実質金利差が拡大していることが挙げられる。そうであれば、デフレからの脱却が重要な鍵となる。 そのためには日銀の一層の金融緩和が必要として、長期国債の買い取り額を日銀券の発 行残高以下とする日銀の内部ルールの変更を求める声が与党内にある。日銀は反対しているが、従来のルールに縛られない政策も検討されてよいだろう。脱デフレによる成長で雇用も拡大する。そうした具体的な政策づくりでこそ与野党の連携が必要なのではないか。 共同通信社の世論調査では、自民党新執行部に「期待する」と答えた人は56%を超え る。しかし、党支持率は低下し、22%にとどまる。「影の内閣」は、自民党が官僚の助けを受けずに政策を立案できる「実力」を養う役割を担っている。自民党が責任と能力のある野党として成長することが支持率回復と政権復帰の正道であり、日本の政党政治の発展に不可欠なことを再認識してほしい。
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